【イオニュース PICK UP】朝鮮高校除外に終止符を 高校無償化制度拡充を前に緊急集会
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朝鮮高級学校無償化実現のための緊急集会のようす
朝高無償化は「最優先課題」
2010年の「高校無償化」制度実施から15年。各種学校となっている外国人学校やインターナショナルスクールも対象となるなかで、朝鮮高校だけが除外されたままだ。政府内では、来年度から私立高校生向けの支給上限額を45万7000円に引き上げ、所得制限もなくす制度拡充が議論されていることが報じられている一方で、朝鮮高校については一切言及がない。
朝鮮学校の高校無償化をめぐる差別が公然と行われている中で、朝鮮学校の教職員や教育会、関係団体代表者らは、ほかの高校との格差がこれ以上広がることは絶対に許さないという強い思いから、日本政府に対し朝鮮学校の生徒たちに対する人権侵害を止め、高校無償化制度の速やかな適用を訴えようと、集会の準備を進めてきた。
冒頭、高校無償化制度除外から15年を振り返る映像が流れたのち、来賓あいさつが行われた。

徳永エリ参議院議員(立憲民主党)
立憲民主党の徳永エリ参議院議員、社民党のラサール石井参議院議員、日本と朝鮮を結ぶ全国ネットワークの藤本康成共同代表(「フォーラム平和・人権・環境」顧問)、朝鮮学校無償化を求める連絡会・大阪事務局の大村和子さん、大阪無償化弁護団団長の丹羽雅雄弁護士(ビデオメッセージ)があいさつをした。
徳永エリ議員は、自身が呼びかけ人に名を連ね、今年4月に設立した「朝鮮学校への公的助成の実現を目指す国会議員の会」について言及。25人の国会議員がメンバーとなり、これまで行ってきた東京中高や朝鮮大学校の視察、要請活動を報告した。徳永議員は「政治家が変わらなくては、法律や制度から差別をなくさなければ、日本社会から差別はなくならない。朝鮮学校の高校無償化からの除外はその最たるものだ」とのべた。
つづいて、教職同中央の尹太吉委員長(東京中高校長)が報告を行った。

教職同中央の尹太吉委員長(東京中高校長)
尹委員長は、大阪、愛知、広島、福岡、東京の5ヵ所で朝鮮学園、または生徒自身が原告となり、8年以上に及ぶ裁判闘争を繰り広げたが、地裁から最高裁まで15回の裁判のうち大阪地裁の勝訴判決を除いた判決で14回もの不当判決が出て敗訴し、司法の公正性を強く疑う結果になったと振り返る。
一方で、学校の生徒、保護者たちは自分たちの当たり前の権利を守り、学校を守るために諦めずに幅広い闘争を繰り広げ、支持者も拡大してきたと強調。東京の金曜行動や大阪の火曜日行動など各地の街頭活動は600回を超え、民族教育権を守るための運動は高まりを見せていると話した。
また、日本当局の民族教育に対する差別は祖国解放直後から今日まで解決されずに残っている植民地過去清算問題であると指摘。高校無償化を実現することは、私たち在日朝鮮人にとって最優先の課題であると訴えた。
“私たちは一人ではない”

神奈川朝鮮中高級学校オモニ会の金幸淳会長(写真左)
この日、保護者と生徒代表らも登壇し、切実な思いを訴えた。
神奈川朝鮮中高級学校オモニ会の金幸淳会長は、「一番悲しさを感じている子どもたちが、それでも後輩に同じ思いをさせたくないと涙をこらえて訴える姿に胸が締め付けられる」と声を震わせた。
神奈川では2019年より毎月第1月曜に県庁前で声を上げている。金さんはこの「月曜行動」に今年初めて参加した。「オモニたちの思いは一つ。『子どもを守りたい、未来を守りたい』ということ。道行く人々にも関心を持ってもらうため、たとえ同じ言葉の繰り返しでも決して諦めず、ここに立ち続ける。すべての子どもたちに平等な権利を、差別なき高校無償化の適用を。ともに手を携え闘いましょう」(金さん)。
東京朝鮮中高級学校の金珉芯さん(高級部3年)は、街頭で無償化適用を求め、声を挙げるたびに暴言や無理解に直面し、「この状況は変わるのか」という不安もあったと吐露する。しかし、練馬での街頭宣伝でたくさんの日本市民が一緒に声を上げてくれ、「決して私たちは一人ではない」と希望を抱くことができたという。

集会には朝鮮学校の教職員や教育会関係者、日本の国会議員、支援団体メンバーら約230人が集まった
金さんは「私たちが求めているのは特別な優遇ではなく、他の高校生と同じように等しく学ぶ権利だ。後輩たちが差別のない社会で安心して学べるよう、私は最後まで諦めない」と決意を表明した。
集会では、内閣総理大臣および文部科学大臣あての要請書が読み上げられた。要請書は、「高校無償化から除外されている朝鮮学校生徒たちへの不合理な差別を改め、支援制度の対象とするための措置を速やかにとること」を訴えた。

参加者らがシュプレヒコールを叫んだ
最後に、朝鮮高校無償化を勝ち取る決意を込めて、参加者らがシュプレヒコールを叫んだ。
大阪要請団が文科省要請

要請のようす
同日、集会に先立って大阪朝鮮学園、大阪朝鮮中高級学校オモニ会、・アボジ会、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪、在日本朝鮮人大阪人権協会からなる大阪要請団が参議院議員会館を訪れ、内閣府特命担当大臣と文部科学大臣あての要請文を提出。朝鮮学校への高校無償化適用と朝鮮幼稚園の「幼保無償化」対象認定などを求めた。

要請には10人の国会議員も同席した
要請には10人の国会議員も同席。文科省側からは4人の担当者が応対した。「ゼロ回答」を決め込む担当者に対し、要請団や国会議員から鋭い批判が続いた。
大阪朝鮮学園の林学理事は、こども基本法の「すべてのこどもについて、個人として尊重され、基本的人権が保障される」という理念に触れ、朝鮮学校の児童が「すべてはすべてじゃないの?」と疑問を呈していたエピソードを紹介。「保護者の重い負担でかろうじて学校を支えているのが現状。日本政府は考えを改めるべきだ」と強く訴えた。(文・写真:康哲誠)