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李浩哲先生がご逝去されました

 その時、わたしは南相馬の自宅で荷造りをしていました。 今回は、イギリス、オーストリア、ベルギーの三カ国を三週間に渡って旅するという長丁場です。(ロンドンで『JR上野駅公園口』の英語版を出版するTilted AxisのDeborah Smithさんとトークイベントを行ない、ウィーン大学で「原発事故と文学」というテーマのシンポジウムに参加し、ブリュッセルに移動して、二十年前に発表した『ゴールドラッシュ』続編の『Diamond Pigeon』の取材を行います) 渡航前に書かなければならないエッセイがあったのですが、荷物が膨れ上がって取捨選択に手間取り、五時間経っても荷造りを終えることができないでいました。   リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」,「ねこのおうち」(河出書房新社)がある。

この夏、東北の霊場を巡りました

 今年の夏は、東北の霊場を巡りました。 場所の選定と案内は、東北大学文学部長の佐藤弘夫教授にお願いしました。佐藤さんは、神仏習合、霊場、国家と宗教、死生観などを軸にして、日本人の思想史や精神史を組み立てている宗教学者です。 佐藤さんに初めてお目にかかったのは六月二十二日、わたしの四十八歳の誕生日でした。いわき短期大学創立五十周年、東日本国際大学創立二十周年を祝う記念式典で、佐藤さんとわたしが基調講演を行ったのです。   リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」,「ねこのおうち」(河出書房新社)がある。

張芸謀監督の作品、『金陵十三釵』

全ての作品を観ている映画監督は、そう多くはありません。 テオ・アンゲロプロス、アンジェイ・ワイダ、イングマール・ベルイマン、溝口健二、黒澤明、小津安二郎、フェデリコ・フェリーニ、フランソワ・トリュフォー、マイケル・チミノ、アッバス・キアロスタミ、侯孝賢、デヴィッド・フィンチャー、M・ナイト・シャマラン、ティム・バートン、クリスティアン・ムンジウ、イ・チャンドン、キム・ギドク。 その中のひとりが、中国の張芸謀(チャン・イーモウ)です。   リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」,「ねこのおうち」(河出書房新社)がある。

オバマ大統領の広島訪問

アメリカ合衆国のオバマ大統領が、現職大統領として初めて広島を訪問しました。
 「広島スピーチ」は、リアルタイムではテレビの同時通訳を聞いて、その後、インターネットにアップされた英文と日本語訳を比較しながら読みました。
 まず、「私たち(We)」が追悼を捧げる対象として列挙した死者に「thousands of Koreans」を含んだことに注目しました。

私は、問い続けます

家族で福島県南相馬市に転居して一年二ヶ月が過ぎました。福島県の地方紙やテレビのローカルニュースではたびたび「風評被害」や「風化」の問題と対策が取り上げられています。 「風評被害」は、原発事故が記憶に留められていることによって引き起こされるもので、「風化」は原発事故や津波による被害の記憶が薄れることそのもので、 動因としては正反対なのですが、並べて論じられることが多いのです。 実際にインターネットに流布している言説は、「福島県産の食材を食べると、癌になる」とか「福島で奇形児の出産が増えている」とか「福島出身の女は嫁にもらうな」とか、福島と福島県人に対する差別感情に基づくデマ以外のなにものでもありません。   リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

立場を越え、一つの音楽を響かせる

二〇〇八年ニ月二十六日に、朝鮮民主主義人民共和国の平壌市内にある東平壌大劇場で、ニューヨーク・フィルハーモニック(NYフィル)がコンサートを開いた――、この歴史的な出来事は、その後の核やミサイルや拉致に関する膨大な「北朝鮮」報道に塗り潰され、今やごく一部の日本人にしか知られていません。 この公演を収録したDVD『NYフィル・イン・平壌』を是非、見てほしいのです。 一〇七分の本編は、朝鮮民主主義人民共和国の国歌「愛国歌」とアメリカ合衆国の国歌「星条旗」から始まり、ワーグナー「ローエングリン第三幕への前奏曲」、ドボルザーク「交響曲第九番 新世界より」、ガーシュウィン「パリのアメリカ人」、ビゼー「アルルの女 組曲第二番」、バーンスタイン「キャンディード 序曲」、管弦楽「アリラン」で終わります。 リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

大学生の文学作品の選考を務めて

在日韓国・朝鮮人の大学生の文章を読む機会がありました。 「コリアン学生challengeフォーラム」というイベントで、初めての試みとして文学作品を募集することになり、審査委員の仕事を依頼されたのでした。 対象となる文学作品は、小説、評論、エッセイ、詩の四ジャンルでした。 今までわたしが選考委員を務めたのは、「スピリッツミレニアム大賞」(漫画)と、「新潮ドキュメント賞」(ノンフィクション)のみで、自分が書いているジャンルについては、お断りしてきました。 リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

年金事務所に行ってきました(3)

昨年、わたしは自分が無年金者だということを知りました。正確に言うと、日本人ではないので「国民年金」の加入資格を有していないと思い込んでいて、その思い込みが間違いだということを、南相馬市役所に転入届を出す際に知らされたのです。 十一月六日に往復二時間をかけて福島県相馬市にある年金事務所を訪ね、何故、ただの一度も「国民年金被保険者資格取得届書」や「納付勧奨通知書」が届かなかったのかについての説明と救済措置を求めたのですが、二時間も待たされた挙句、「日本年金機構のホームページに投書してみたらどうか」と言われました。             リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

年金事務所に行ってきました(2)

前回につづいて、「国民年金」の話をします。 十一月六日、わたしは現在居住している福島県南相馬市から車で一時間ほど離れたところにある相馬市の年金事務所を訪ねました。 四十七年間生きて、ただの一度も「国民年金被保険者資格取得届書」や「納付勧奨通知書」が届いたことはなかったので、在日韓国・朝鮮人は制度外だと思い込んでいたのですが、今年四月に南相馬市役所で住所変更の手続きをした際、国民年金納付について訊ねられ、在日韓国・朝鮮人も加入資格を有しているということを知らされ驚いたのでした。             リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

年金事務所に行ってきました

 公的機関は鬼門です。  公的機関で働く職員には様々な立場の住民ひとりひとりに応対するための想像力が不可欠なはずなのに、マイノリティーに関する想像力が欠如しているのではないか、と思わざるを得ない職員が多いのです。  わたしは在日韓国人です。日本で生まれ育ちましたが、国籍は大韓民国です。  このことすら、なかなか理解してもらえないという現実があり、毎回言い争いになったり、長時間待たされたりするのです。             リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

痛ましい記憶を語る ということ

記憶について考えています。 それを考えるに至ったのは、日本軍「慰安婦」の被害者は「実は、高収入だった。家族の借金返済のために慰安婦業務に応募した。補償金欲しさに、日本兵の残虐さを誇張した創作をしている」という言説が、日本では主流になりつつあるからです。 そのような言説を流布する側は、慰安所の場所が二転三転する、現在の年齡と連行されたとする年齡の辻褄が合わない、性行為を強要されたとする一日あたりの兵士の数が多過ぎて現実的には不可能などと被害者の記憶の曖昧さを、意図的な虚偽によるものだと決め付けています。             リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

安倍談話を読んで思い出した 孫基禎さんの顔

二十年前の五月のことです。 わたしはNHKのドキュメンタリー番組で、当時八十三歳だった孫基禎さんとお逢いしました。 ソウルのオリンピックスタジアムでした。 誰もいない観客席で待っていると、コツコツと杖をつく音がして、わたしは振り返りました。 斜め後ろの入場口から姿を現した孫基禎さんは、ゆっくりではあるけれど確かな足取りで近づいてきました。 孫基禎さんは、日本男子マラソン史上唯一のオリンピックのゴールドメダリストです。一九三六年のベルリンオリンピックで二時間二十九分十九秒二のオリンピック新記録を出し、朝鮮人でありながら日本人選手として表彰台に立った人です。 そして、わたしの祖父もまた日の丸を胸につけて走った長距離ランナーで、ベルリンオリンピックの四年後に予定されていた(戦争の激化で中止となった)東京オリンピックへの出場が有力視されていたのです。           リュウ・ミリ●作家 1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。

高校無償化本2

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