【イオニュース PICK UP】日本政府の責任で調査を 長生炭鉱「刻む会」 遺骨収集後、初の行政交渉
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「刻む会」の井上洋子共同代表(左から2番目)が国会議員らとともに国による調査を求めた(提供=朝鮮新報)
文:張慧純
日本の朝鮮植民地支配期の1942年、山口県宇部市の長生炭鉱の水没事故で犠牲になった労働者の遺骨が発見された(8月25、26日)問題と関連し、「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会(刻む会)」の井上洋子共同代表らが9月9日、遺骨発掘後に初めて日本政府の関係者と面会し、一日も早いDNA鑑定と国による調査を求めた。
東京・永田町の国会内で行われた要請には、社会民主党、立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組の国会議員らが同席し、国側から厚生労働省、外務省、警察庁の担当者が出席。交渉は約2時間に及んだ。
井上代表は、「測量も行われ、現場への命綱も張られ、遺骨の位置も深度も明らかになった」と現地調査に関する厚労省の懸念に言及しつつ現地調査を求めたが、厚労省は「さまざまな専門家に知見を求めたが、安全性に懸念があるため関与できない」と従来の立場を崩さなかった。「刻む会」は、福岡資麿・厚生労働大臣あての要望書を提出。来年2月7日から始める遺体4体を収容するための「長生炭鉱遺骨収容プロジェクト2026」に必要な3561万円を補正予算として計上してほしいと訴えた。

「刻む会」の井上洋子共同代表が国に要望書を提出した(提供=朝鮮新報)
「朝鮮にも遺族が」-国会議員が言及
日本と韓国のダイバーたちが8月25、26日に行った第6次潜水調査で収容された骨は、宇部警察署から同27日、人骨であるとの連絡が入っていた。この日、警察庁はDNA鑑定について明言はしなかったものの、外務省は、韓国政府と連絡を取り合っていることは認めた。また、同席した有田芳生衆議院議員は、「韓国籍の被害者は明らかになっているが、現在の北朝鮮にあたる地域に住んでいた方の遺族が発見されたことをご存知か」と朝鮮新報8月27日付に紹介された朝鮮在住遺族について言及した。
有田議員は、「遺族の発見は重要だ。(朝鮮民主主義人民共和国の)清津には3万体以上の日本人の遺体が安置されていて、遺族の方が日本から何度も訪朝し働きかけていたが、外務省は2013年に積極的に取り上げ、その結果としてストックホルム会議という日朝交渉再開のきっかけとなった。遺骨が見つかったことは、日朝交渉においてもポイントになるので、外務省も共有してほしい」と伝えた。

多くの市民が「刻む会」の行政交渉を見守った(参議院議員会館、2025年9月9日)
長生炭鉱の水没事故では朝鮮半島出身者136人を含む183人が死亡。「刻む会」は2016年から韓国在住犠牲者と日本人犠牲者遺族を対象にしたDNA検体の採取を始め、現在、31体の検体を保有している。
またラサール石井参議院議員は、「警察はDNA鑑定が簡単なものではないという話だったが、どのようにしたらDNA鑑定ができるのかを聞きたかった。この問題の根っこには強制連行の問題がある。関東大震災の朝鮮人虐殺、在日の方の朝鮮高校無償化の問題もある。そこに風穴を開ける象徴として長生炭鉱の問題がある。今それが民間の『刻む会』の努力によってここまで進み、骨が出てきた。できるだけこれを風穴として、大きな植民地の問題や戦後補償の問題を追求したい」と語った。
井上代表は、長生炭鉱水没事故の犠牲者の遺骨が発見されたことで局面が変わったことを強調しつつ、この問題について政府が責任をもって進めるため、「内閣府に各省の調整の責任を取ってほしい」と訴えた。国会議員からは現地調査の予算化を実現するため、超党派で要望を続けていくことが言及された。