【イオニュースPICK UP】李健太選手、日本Sライト級王者に! 白熱した打ち合いを制す
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ボクシングの日本スーパーライト級タイトルマッチ10回戦が4月9日、東京・後楽園ホールで行われ、同級1位の李健太選手(28、帝拳ジム所属、大阪朝鮮中高級学校出身)が王者・藤田炎村選手(29、三迫ジム所属)に挑み、3-0の判定(すべて97-93)で勝利。初の日本チャンピオンに輝いた。
この日のメインイベントとしてリングに登場した李選手のプロ戦績は、7戦6勝(2KO)1分、一方の藤田選手は13戦12勝(10KO)1敗。「2024年チャンピオンカーニバル随一のカード」との前評判通り、180cmという長身のサウスポー(左構え)で相手との距離を取りながら戦うアウトボクシングに定評がある李選手と、高い攻撃力を持つ藤田選手の攻防に1752人が入ったホールは熱気で包まれた。
李選手は、ゴングが鳴ると右のジャブで距離を測りながら、右左のコンビネーションパンチで的確な攻撃を加える。突進し強烈なパンチを打ち込む藤田選手に対して、李選手はフットワークでいなす。
3R目、偶然のバッティングにより右目の上をカットしてしまった李選手だったが、それをものともせず、ボディブローを2回決めるなど果敢に攻め立てると、会場は「ゴンテ」コールで揺れる。右左、そして上下と多彩なパンチを繰り出し、ガードのすき間を通すテクニックの高さを見せた李選手。5R終了時の採点ではジャッジ3者とも49-46で李選手を支持した。
李選手は、距離をつめた接近戦での強さも見せつける。藤田選手の強打に苦しめられつつも、身をかがめたり体を後ろに反らしてするりとパンチをかわし、鋭いジャブや左ストレート、重いボディブローを打ち込んだ。9R目の残り24秒ごろには、ついに藤田選手の足元が崩れた。白熱の10Rを終え、打ち合いを制したのは、李選手だった。
チャンピオンベルトを手にした李選手は、「めちゃくちゃうれしい」と破顔一笑。それでも「試合内容は満足できず、課題がたくさんある。この先頑張っていきたい」と前を見据えながら、「東京のみならず、九州や大阪からも応援に駆け付けてくれて、声援がすごく力になった」と感謝の意を表した。
李選手は大阪朝高時代に高校ボクシング6冠を達成し、日本記録の62連勝をマークしている。アマチュア時代に102勝10敗と実績を重ね、2019年にプロデビュー。8戦目で初のタイトルに挑戦した。
「うれしさ半分、ほっとしたのが半分」と話すのは、大阪から駆け付けた李選手の父・李康正さん(70)。「学生時代からほとんど負けておらず、勝つのが当たり前のように周囲から思われていた。ものすごいプレッシャーの中で戦っていたと思う」とし、それでも勝ち切った李選手を称えた。
母の金喜女さん(65)は、「もうね…勝ってくれたから、それだけで『ありがとう』と言いたい」と感極まったようす。「本人は納得のいかない試合だったかもしれないが、素直にほめてあげたい。全国のみなさん、同胞たちが応援してくれて、本当にありがたかった」と謝意をのべながら、「コロナ禍の2019年にプロデビューをして、試合もできずにつらい思いをしてきたと思う。これから夢に向かって頑張ってほしい」とエールを送った。
李選手は、「タイトル防衛はもちろん、この先さらに強くなって、後楽園ホールへまた戻ってくる」と意気込む。長く苦しい時期を乗り越え、さらなる飛躍へとスタートを切った。
(文:康哲誠、写真:李鳳仁)