【特集】朝鮮学校の合同教育
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近年、各地のウリハッキョ(私たちの学校の意。朝鮮学校を指す)では、日常的に合同生活を送る取り組みがなされている。その形式は多様で、授業やスポーツ大会への出場にはじまり、近年は一定期間学校生活を共にしたり、修学旅行など課外活動の場も共にする。本特集では、民族教育の可能性を模索するさまざまな「合同」の取り組みから、「ウリハッキョの今」を探る。
※「合同」~本特集における「合同」の対象は、ウリハッキョ同士の取り組みに限ります。
ルポ・合同教育の現場へ
近年、朝鮮学校では「合同」という言葉が日常的に聞かれるようになった。少人数化が進むなか、学区を越えて手を取り合う教育や活動の試みが各地で根づいている。かつての学校間交流とは異なり、2000年代以降の合同の取り組みは、子どもたちにとって集団生活を通じた経験を培える非日常であり「日常」となった。そんな各地の合同の現場に密着した。
画面の向こうにトンムがいる 01 遠隔合同授業 長野×静岡
多様な視点で学び広がる

遠隔合同授業のようす。長野初中の中級部3年はリモートで同学年の静岡初中生徒とともに国語の授業を受けている(9月25日)
雄大な日本アルプスと田畑に囲まれた長野朝鮮初中級学校(松本市)。筆者は9月25日に足を運んだ・・・
フットワークの軽い学校に
「長野初中と一緒に多様な活動をしていきたい」―静岡初中の李英寿校長(49)から長野初中の河舜昊校長(57)への提案が始まりだった・・・
共にすくすくと
10月7日、長野初中を再び訪れた。この日から2度目の合同生活がスタート。午前中は同校の恒例行事・脱穀作業があった・・・
学びの場、交流の場、手作りで重ね 02 合同授業 東京第2×東京第6
合同授業と合同部活動、
交流会も

初級部2年生の音楽の授業
9月29日午前10時前、東京都江東区枝川の東京朝鮮第2初級学校に東京朝鮮第6初級学校(大田区)の児童、教員を乗せたスクールバスが到着した。
毎年恒例となっている両校の合同授業と合同クラブ活動。この日は低学年クラス(1~3年)を対象に行われた・・・
これからも一緒に
2日後の10月1日に行われた高学年(4~6年)の合同授業にも密着した。
この日は両校合わせて33人の児童が参加した(第2:12人、第6:21人)・・・
“ハンマウム”が育む絆 03 合同部活動 中四国ピンナラ・舞踊部
離れていても、一つの呼吸で

学生中央芸術コンクールに向けて約1ヵ月ぶりの合同練習に臨む生徒たち
9月下旬の某日、JR広島駅に降り立った。中四国ブロックの中級部生らが合同で行う部活動の現場を訪ねるためだ・・・
ピンナラだから 心から楽しめる

雨が降りしきる中で行われた練習
同日午前11時、教室の一角で中級部サッカー部「ピンナラ」のミーティングが行われていた。広島、岡山、四国、そして今年から九州学区も加わり、計29人で活動している合同チーム。この日は九州を除く各校の1、2年生たちが、新チームの目標について話し合っていた・・・
共に学ぶ、共に育つ 写真で見る合同のかたち
学校の枠を越えて、共に学び、共に過ごす子どもたち。そんな「合同」の場では、普段は見せない表情や成長の瞬間が広がる。各地の「合同」の取り組みを写真で紹介する。
まとめ:韓賢珠、金盛國 写真:韓賢珠(京都滋賀合同修学旅行)、学校提供
京都&滋賀 合同修学旅行

名古屋港水族館で。館内を巡る児童たちの顔には笑いが絶えない。
京都朝鮮初級学校、京都朝鮮第2初級学校、滋賀朝鮮初級学校の3校は、3年前から合同で6年生の修学旅行を実施している・・・
東京第2&東京第3&東京第6&東京第9
少年団合同入団式

新入団生へネクタイを結んであげる初級部6年生たち
2014年から都内の単設初級学校に通う高学年の児童たちが合同で少年団入団式を行っている(25年度は東京第9が不参加)・・・
栃木&四国・埼玉・西東京第1 合同生活

3度目となる合同生活(栃木×四国、2024年)
栃木朝鮮初中級学校では近年、関東や中四国地域の朝鮮学校との合同の取り組みを積極的に行っている・・・
名古屋&東春&岐阜&四日市
幼稚班交流会

2024年に行われた交流会での1枚。
東海地域では、朝鮮幼稚園に通う園児たちが一堂に会し、合同で運動会や保育などを行う交流会を長年にわたり行っている・・・
「合同」の経験と提言
ひっ迫する現状を前に実践を始めた教育現場と、民族教育の分野で新たな取り組みを提案する在日本朝鮮青年商工会。それぞれの現場で奮闘する関係者たちに、これまで培った経験について聞くとともに、今後に向けた提言を行ってもらった。
心に残る
「特別な記憶」
朝鮮学校ネットワークで
金日中さん(茨城朝鮮初中高級学校・校長)
2022年、茨城で県民族教育対策委員会が発足した。行事に左右されず民族教育の現状を継続的に議論するための初の組織。教育内容や財政、学生募集などをテーマにALL同胞で協議する基盤が築かれた・・・
魅力活かした
ビジョンの提示を
宋明男さん(元中央青商会副会長)
中央青商会は2022年以降、新時代・民族教育対策協議会を立ち上げ、同胞に選ばれるウリハッキョ(朝鮮学校)の実現に向けて議論を重ねてきた・・・
寄稿・少人数学級が拓く 未来の教育
金勇大 ●朝鮮大学校教育学部教授

長野朝鮮初中級学校の初級部3年クラスでともに学ぶ静岡朝鮮初中級学校の3年生児童
「個別最適な学び」と「協働的な学び」
皆さんは、お子さんの学校生活を思い浮かべるとき、どんな場面をイメージされるでしょうか。黒板に向かって先生の話を一斉に聞く授業、同じ教科書を開いて同じページを学ぶクラスのようす。多くの保護者にとって、学校とはそうした「みんなで同じことを、同じスピードで学ぶ場所」として記憶に残っているのではないかと思います・・・
知識の「所有」から「活用」へ
かつては「どれだけ知識を持っているか」が評価の中心でした。テストで多く正解できる子ども、百科事典のように知識を暗記している人が「優秀」とされたのです。しかし今、私たちの生活を見てみるとどうでしょう。スマートフォンを手にすれば、数秒で膨大な情報にアクセスできます。必要な知識は検索すれば入手でき、AIが整理もしてくれ、また共有も瞬時に行うことが可能となりました・・・
従来の教育と新しい学び
従来の学校教育は「できないところを探し、矯正する」ことに重きを置いてきました。算数の計算で間違えたら繰り返し練習し、漢字を間違えたら赤字で直して再度覚える。苦手を克服することに重点が置かれてきたのです・・・
少人数学級だからできること
ここで注目したいのが「少人数学級」の意義です。大人数のクラスでは、どうしても効率を優先して〝一斉授業〟に頼らざるを得ません・・・
学びの原点を再発見する
教育の役割は、「できない部分を直す」場から「子どもの可能性を広げる」場へと移り変わろうとしています・・・
記事全文は本誌2025年11月号をご覧ください。
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