【特集】迷える30・40代 ミレ二アルズのリアル
広告
SNSが普及し、簡単に自他を比較できるようになった今の時代、社会生活にも慣れ、ライフステージの変化も経験する30・40代は、「クライシス」(危機的状況や転換期)に陥りやすいという。本特集では、このミレニアルズにスポットを当て、誰にも起こりうる現象を伝えながらも、同胞社会や人との関わりの中で人生を模索し葛藤を乗り越えようとする等身大のかれ・かのじょたちの姿を取り上げます。
※ミレニアルズ:1981年〜1990年代半ばごろまでに生まれた世代を指す。 Millennium(千年紀)を迎える2000年以降に成人や社会人になったことに由来する。心理学者のJean Twengeが定義した、米国で生まれた世代呼称。
ライフ・クライシスとの向き合い方 揺れる30~40代
筆者:尹成秀 ●臨床心理士・公認心理師
ミレニアルズと呼ばれる世代は、今まさに30代~40代を迎えている。働き盛りともいえ、これまでの努力や積み重ねが実りつつある時期でもある。しかし、その一方で、「自分はこのままでいいのだろうか」「この先大丈夫だろうか」と漠然と不安や悩みを抱えることも少なくない。生涯発達の視点から、今日の30代~40代の悩みは、クォーターライフ・クライシス(Quarter-life Crisis)とミッドライフ・クライシス(Midlife Crisis)といった、2つのライフ・クライシスから理解することができる・・・
日々を生きる ミレニアル世代 ルポ・手探りでも
仕事、結婚、出産、育児、介護、アイデンティティ――。ミレニアル世代はどのような悩みや不安を抱えていて、それをどのように乗り越えようとしているのか。手探りで日々を生きる30代前半から40代半ばまでの5人の同胞たちを取材した。
まとめ:編集部
〝今を全力で楽しむ〟

昨年、開催した長野オリニサークルMOA&ユチウォン合同企画「夏祭り」(写真は本人提供)
〝「10年後、どうなりたいか?」 心理学を学びながら講師に聞かれた一言。朝鮮学校の教師を7年務め、嫁いだ先は長野県大町市という大自然の中にある焼肉屋だった。同胞とのつながりはほぼ皆無。ど田舎の環境はとても寂しく辛かった…〟このFacebook投稿の主は李恵景さん(37、保育士・心理カウンセラー)。・・・
研究の道で成した自己実現

フィールドワークを実施する学生に調査事項を解説する金さん(本人提供)
30代半ばで研究者の道をまっすぐに歩む人もいる。金理花さん(35、在日朝鮮人音楽史研究)だ。2021年に博士の学位取得後、現在は関東圏の複数の大学で非常勤講師をしながら、大学着任に向け就活の日々を送っている・・・
学びを深める準備期間

海外でボランティア活動をするKさん(写真は本人提供)
関西在住のKさん(30代前半女性)はフリーランスで2年ほど前からファミリービジネスのSNS運営やデザイン、ブランドマーケティング、海外事業などを担当している。
朝鮮大学校を卒業後、民族団体で働いたのちスイスに留学した。今では生活の半分を仕事に、もう半分を学びや海外でのボランティアに費やしている・・・
母の手術をきっかけに…
「今日の夕飯は冷蔵庫の余りもので作ろうかな」。40代女性のAさん(未婚、東日本在住)がつぶやいた。Aさんはあることがきっかけで、同居する両親と妹、4人分の夕飯作りを毎日担当している。
今年初めにAさんの母が心臓疾患で倒れた。カテーテル手術を受け、ペースメーカーを入れることとなった・・・
〝求められるのはいいこと〟

マラソンが趣味の朴さん(写真は本人提供)
北海道在住の朴湧一さん(44)は、これまで展開していた事業を売却し、今年1月から地元の先輩が営む会社で働いている。
朝鮮大学校美術科卒業後、朝鮮学校教員として北海道に赴任した朴さん。27歳の年に結婚し、長女が生まれたのをきっかけに教員を辞め、親族の仕事を手伝うことになった。
広がる世界へ、一歩踏み出す
夢のため、自己実現のため…新たなステージで可能性を広げる同胞たちがいる。さまざまな葛藤や壁を乗り越えた経験談、世界へ飛び出した先に見えたものなどについて聞いた。
ひとり旅と先輩たちの言葉が
きっかけに
盧成道さん(38)
株式会社peace of health代表
盧さんは27歳の頃に「ピース鍼灸接骨院」(大阪府三島郡)をオープン。地域で着実に信頼を得て実績を積み、今では予約が1ヵ月待ちになるほどの人気店だ。昨年1月には大阪市内でセルフエステができる鍼灸整体サロン「peaceエステバコ」も始めた。
大阪朝鮮高級学校(当時)ではバスケ部に所属していた・・・
心のケア、国境を越えて
李潤和さん(34)
臨床心理士、公認心理師
「国境なき医師団」のプロジェクトに参加して、今年3月から南太平洋の島国・パプアニューギニアで活動している臨床心理士、公認心理師の李潤和さん(34)。
「国境なき医師団」は、世界74の国と地域で活動する、民間で非営利の医療・人道援助団体だ。紛争や自然災害、貧困などにより危機に瀕した人々に独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けている(公式サイトより)・・・
人生の先輩が話す 私が30代だった頃
仕事や結婚、新たなキャリアプランなどライフステージの変化が多いといわれる30代。
培われる力がある一方で、これまでにない悩みや葛藤に直面するこの時期を、2人の同胞に振り返ってもらった。
迷ったときこそ困難な道に 李誠守さん(49)

前例中央右が李さん
東京朝鮮中高級学校で過ごした高級部時代、雑誌「セセデ」で看護師になった卒業生の姿を目にし、自分も人のためになる仕事をしたいと看護師の道へ進んだ。都内の病院で4年間勤務した後、26歳で結婚。夫の仕事の関係で、その後、仙台に移り住み、1年間看護師として働いたが、妊娠を機に退職、28歳で長女を出産した・・・
青商会の縁、一生の財産に 許清文さん(54)

写真左が許さん
岡山に生まれた。幼少期からは関東地方で過ごし、茨城朝鮮高級学校卒業後は金剛保険株式会社の群馬支社に4年間勤めた。その後、岡山に戻り、親族が経営していた遊技業の仕事を経て、遊技機の売買をする「有限会社アール」を30歳で立ち上げた。
起業と同時に、在日本朝鮮岡山県青年商工会の活動に顔を出すようになった・・・
私のセレクト 迷える人たちへ贈る! 映画&本&ドラマ
悩んだ時、立ち止まった時に新たな視点や気づき、勇気をくれる映画、ドラマ、本を集めました。選者は社会学者の梁聡子さんと、本特集に登場いただいた方々です。
まとめ:編集部
映画
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
監督:スティーヴン・スピルバーグ/脚本:リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー/2017年/アメリカ/116分
30代から40代の女性の多くは、何らかの「長」やグループのリーダーを務めることが増えてきます。そうした中で、未だに男性中心の社会構造の中に身を置くことになりますが、そこで直面するのが「忖度」や「ボーイズクラブ(男性中心の閉鎖的な人間関係)」の弊害です・・・
本
『気づく 立ちあがる 育てる
日本の性教育史におけるクィアペダゴジー』
著:堀川修平/エイデル研究所/2022年/2420円(税込)
どのような性別やセクシュアリティを持って生きていても、この社会にはいまだ厳然とした性差別があり、簡単には変わらない現実に、時には苛立ちを覚えることもあるでしょう。しかし、そんな社会の中でも、性差別を克服しようと模索し、実践してきた人々の歴史があります・・・
ドラマ
『西園寺さんは家事をしない』
脚本:宮本武史、山下すばる/TBS/2024年
原作は漫画ですが、今回はドラマ作品を紹介します。
主人公・西園寺一妃は38歳。これまでいくつかの転職を経て、現在は人気の家事アプリを手がける職場で、主力社員として活躍しています・・・
『ドキュメント72時間』
NHK総合/2013年~
ファミレス、空港、居酒屋…。毎回、ひとつの現場にカメラを据え、そこで起きるさまざまな人間模様を72時間にわたって定点観測するドキュメンタリー番組・・・
記事全文は本誌2025年8月号をご覧ください。
定期購読はこちらから。
Amazonでは一冊からご注文いただけます。