「沈黙」せず、表現者の自由守りたい/ニコン「慰安婦」写真展中止事件裁判 安世鴻さんが勝訴
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2015年12月25日、「ニコン『慰安婦』写真展中止事件裁判」の判決言い渡しが行われ、原告である写真家・安世鴻さん(45)と弁護団、支援者らが東京地裁(霞ヶ関)を訪れた。提訴から3年となるこの日、裁判所は被告側の株式会社ニコンに不法行為があったとし、同社に対して110万円の賠償命令を下した。
提訴までの経緯
韓国出身の写真家・安世鴻さんが日本軍「慰安婦」被害者たちの写真を撮り始めたのは20年前。2002年からは中国に残された朝鮮人「慰安婦」の姿をカメラに収めて回った。5年ほど前から日本で暮らしている安さんは、日本社会の中で「慰安婦」の問題が歪められ真実が隠されていく現状を知り、被害者たちの声を広く伝えなければならないと展示活動を始めたという。
株式会社ニコンが運営する新宿ニコンサロンでの写真展開催が決まったのは2012年1月。写真家や評論家たちからなる5人の選考委員が安さんの作品を審査し、全員一致で決定された。安さんとニコンは写真展開催に向けた実務的な協議を重ね、広報も進められていた。この頃には大阪でのアンコール写真展開催も決定される。
しかし、開催約1ヵ月前の5月22日、ニコンから安さんに突然の中止通告が。安さんが何度理由を尋ねても、はっきりとした返答を得られることはなかった。これを受けて安さんは東京地裁に、施設を使用させるようニコンに命じる仮処分を申し立てる。仮処分決定により写真展は開かれたが、ニコンの非協力的な体制により、会場の周辺には多くの右翼が押しかけるなど異常な雰囲気の中での開催となった。また、大阪ニコンサロンでのアンコール写真展はついに実現されなかった。
このような表現の自由侵害の理由を明らかにし謝罪を求めるため、2012年12月25日、安さんは大企業であるニコンを相手取って訴訟を起こしたのだ。