【イオニュースPICK UP】難民・移民の存在を“見て、知って、感じて”/第5回難民・移民フェス
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日本でともに暮らしている難民と移民を知り、関わり、そして応援するためのチャリティフェス―「難民・移民フェス」(主催=同実行委員会)の第5回が7月20日、平成つつじ公園(東京・練馬区)で開催され、約2500人が参加した。
今回掲げられたテーマは「まるいもの」。実行委員会の金井真紀さん(文筆家・イラストレーター)は、ステージに立ち「フェスをどのように続けていくかを話し合った際に、今回一つテーマを設けてみようと決めた。最後はまるくなってみんなで踊りたい」と呼びかけた。
売店やワークショップ、そのほか休憩所や医療相談所まで完備された。一度口に入れたとたんローズウォーターの香りが広がるペルシャのスイーツ・ハルワや、皮で包んだ具を焼いたチリの食べ物・エンパナーダ、ミャンマースパイス(ふりかけ)、アフリカ布のハンドメイド…。まるい形のものからその他の料理や物品までがずらりと並んだ。
会場には、幼子からお年寄りまで、ルーツも性別もさまざまな人びとが集った。真っすぐ歩くのが難しいほどの来場者でにぎわい、言葉を交わし、文化に触れ、交流を深めた。会場中央に位置したステージでは、さまざまな国や民族の音楽が披露され、会場全体を盛り上げていた。
またこの日、長年難民・移民に寄り添ってきた児玉晃一弁護士とガーナにルーツのある日本生まれ日本育ちの大学生がトークを行った。ステージを取り囲んで多くの参加者が傾聴した。
登壇した大学生は現在、在留資格を持つが「仮放免」の状態で長年暮らしてきた。「仮放免」では入管の許可なしに都道府県をまたぐ移動ができず、子どもの頃に電車に乗りながら寝過ごしてしまった際には、「捕まるのではないか」「誰かに見られているのではないか」という恐怖が常につきまとったという。大学生は「この社会でみんなと一緒に真の『共生』をしたい」と切願した。
児玉弁護士は「(6月10日に改正入管法が施行され)『収容に代わる監理措置』によって民間人による監視が強化された。監理措置は一見、いいように思えるがいつでもそれを取り消して収容や強制送還が可能である」とし、その問題点について追及。「一人ひとりがこの機会を通じてまずは知ってもらって、それぞれが情報を発信し、誰か一人にでも影響を及ぼすことができれば現状を変えられるのではないか」と訴えた。
アフリカのダンス、クルドのダンスと演奏が続き、フィナーレに近づくにつれ、会場のボルテージも上がっていく。しかし、雷雨が近隣地域を襲い、カチンのダンス、大トリだった川崎のハルモニたちによるアリランとトラジ音頭を残してフェスはお開きとなった。
残念がる参加者たちもそれぞれがフェスの意義を実感していた。一緒に参加した大学院生の大室恵美さんと唐井梓さん、2回目の参加となった留学生の鄭多賢さんは、参加者の多さからフェスの広がりを実感したと口々に語った。
大室さんは、パレスチナ連帯アクションのInstagramを通してフェスを知ったことで、若い世代における市民運動の広がりを感じると話す。大学院で「植民地朝鮮における女性の身体」を研究テーマとしている大村さんは、特に移民について関心が大きかったが「『難民』という言葉だけではなく、イラン、トルコなどさまざまなルーツが反映されたお店を通してそれぞれの国や地域、民族の人に対する理解がさらに深まった」とはにかんだ。
唐井さんも、「これまで続けてきた市民運動の延長線上にフェスがあるように感じる」と話す。「日本軍性奴隷制度に関するドキュメンタリーを見て『闘争は踊りながらするもの』という言葉が強く印象に残っているが、今日は踊ることに対して抵抗がない人が多かった。来年もまた参加したい」と意義を語った。
鄭さんは、「今回改悪された入管法が施行されたが、一方で日本で家庭を築き、楽しく過ごしている難民・移民の人たちがいる。フェスも楽しみつつ、その存在を見つめてほしい」と言葉に力を込めた。
「フェスの魅力は『ごちゃごちゃ感』」だとほほえむ実行委員会の金井さんも「こんなに遊んでいていいのかという気持ちは常にある」と吐露する。「フェスは当事者が抱える恐怖心の根本的な解決策にはならないかもしれない。それでもフェスを訪れた人びとには難民・移民の人たちについて何かを感じ取ってほしい」と訴えた。(文・写真:康哲誠)