【イオニュースPICK UP】こどもたちの最善の利益の尊重を 朝鮮学校への補助金再開を求める都民集会
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「~18723筆の都民の声は止まらない~朝鮮学校補助金の復活を求める都民集会」が5月30日、北とぴあ(北区)のペガサスホールで行われ、都議会勉強会実行委員会と都内の朝鮮学校支援団体のメンバーたち、朝鮮学校関係者、在日同胞、日本市民、都議会議員、区議会議員、市議会議員など200人以上が参加した。
都議会勉強会実行委員会ではこれまで東京都こども基本条例がどのような条例なのかを知り、都が朝鮮学校に対する補助金支給を停止した経緯などを知るための都議会勉強会、地域連続学習会を2022年から始め、昨年11月には朝鮮学校のこどもたちへの補助金支給再開を強く求めるため、「ぼくたちをなかまはずれにしないで」都民署名を開始。今年の2月20日には都庁前でアピールを行い、署名17640筆を東京都生活文化スポーツ局私学部私学共生課に提出した。3月25日には追加の署名781筆を提出。これまで合計18000筆以上、集めるなど朝鮮学校に対する補助金復活を求める声を都に届けてきた。
集会の第1部では開会の挨拶の後、都議会勉強会実行委員会事務局の猪俣京子さんが都民署名と3月都議会傍聴報告を行った。次に在日本朝鮮人人権協会の宋恵淑さんが「朝鮮学校のこどもたちの『最善の利益』の尊重を」というタイトルで基調講演を行った。
宋さんは日本政府が1994年に国連子どもの権利条約を批准し、締約国になって今年で30年が経つにもかかわらず、政府が朝鮮学校を高校無償化、幼保無償化の対象から除外し、地方自治体が補助金の支給を停止するなどの差別を行い、子どもたちの最善の利益を確保する政策を取っていないと批判しながら「日本社会で起こるヘイトスピーチやヘイトクライム、朝鮮学校に対する差別的言動など朝鮮学校のこどもたちが危険にさらされている状況を日本政府や東京都が作り出している」と警鐘を鳴らした。また「日本政府のこのような態度や姿勢、差別の現状は子どもの権利条約の4つの原則にも反している」とのべた。
宋さんは続けて次のように語った。「差別は自分たちの尊厳を傷つける行為だとして、当事者である朝鮮高校の生徒たちや朝鮮大学校の学生たちが文部科学省前の金曜行動を通じて『私たちの尊厳と学習権を認めよ』と何度も訴えてきた。しかしその叫びは真摯に受けとめられず、政府や都による差別が続いている。朝高生や朝大生たちが幼いこどもたちのためにプラカードを持ちながら幼保無償化の適用を求めて声を上げ続けているが、この声も届くことなく、日本政府は『子どもの最善の利益』を第一に考えた政策を行わなかった。2013年には国連の社会権規約委員会の場で『なぜ朝鮮学校の子どもたちを高校無償化の対象にしないのか』と委員から問われた日本政府代表は『北朝鮮との間の拉致問題に進展がないので、高校無償化の対象とするには国民の理解が得られない』と回答した。これは子どもの最善の利益を一切考えていない発言だ。日本政府は子どもとは全く関係のない理不尽な政治問題を持ち出し、子どもに対して差別を行っていると国際社会に向けて宣言した」。
宋さんは最後に「この問題は政治的、外交的な問題ではなく、子どもの人権の問題であり、子どもの最善の利益を国が、都がどのように保障するかという問題だ。私たちには多くの仲間がいる。朝鮮学校に訪ねてくる日本のみなさんが朝鮮学校の子どもたちの仲間だということを子どもたち自身も知っている。みんなで連帯して仲間はずれを許さない日本社会を作っていき、まずは都の補助金復活を実現させるためにこれからも連帯して闘っていこう」と参加者に呼びかけた。
この日は元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児さんなどから寄せられたビデオメッセージが紹介され、元文部科学省事務次官の前川喜平さん、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんなどから寄せられた手紙が代読された。
第2部では東京朝鮮中高級学校の校長とオモニ会会長、朝鮮大学校の学生、朝鮮学校支援団体メンバー、政党所属の都議会議員、区議会議員などがそれぞれアピールを行った。
まず発言した東京朝鮮中高級学校の尹太吉校長は都議会勉強会実行委員会をはじめとする朝鮮学校支援団体のメンバーたちが朝鮮学校の補助金復活などのために行ってきた1万8000筆の署名集めや赤羽駅での街宣活動などを通じて朝鮮学校の児童・生徒、教職員、保護者たちが大きな力をもらっていると謝意を表した。そのうえで朝鮮学校に対する東京都の補助金が2010年から打ち切られている現状、また2010年に高校無償化制度から朝鮮学校が除外され、地方自治体でもそれに続いて補助金を凍結する動きが増えていき、今もその状況が続いていることにも言及した。尹校長は「すべての子どもの権利を守り、最善の利益を保障するということがこども基本条例の理念だが、私は日本政府と東京都が『朝鮮学校の子どもたちはすべての子どもたちという枠に入らない』『朝鮮学校の子どもは差別しても構わない』という考え方を持っていると感じた。いま、悪い流れを断ち切り、朝鮮学校に対する差別を撤廃して真のこども基本条例に即した施策をするようにともに手を携えて頑張っていこう」と呼びかけた。
続けて発言した同校オモニ会会長の朴淳芽さんは、まず自身と自身の父の生い立ちなどについて触れた。朴さんは自分が朝鮮学校に通うことになったのは、高校まで日本学校に通っていた在日朝鮮人2世の父が朝鮮大学校に入って仲間を作り、自身のアイデンティティを確立したことを聞いたからだと語った。そのうえで朴さんは「在日朝鮮人としての自己肯定感を高められて、民族のアイデンティティを持てたのはウリハッキョのおかげだと思っているから、自分の親がしてくれたのと同じように私も子どもたちをウリハッキョに通わせている。子どもたちは朝鮮学校に笑顔で登校している。私はその笑顔を守りたい一心で学校を守る活動、オモニ会活動に積極的に参加している。これから卒業を迎える子どもたちが朝鮮学校に通ってよかったと心から思えるような社会にしたいと私たちは思っている」と言葉に力をこめた。
次に学生を代表して発言した朝鮮大学校文学歴史学部2年生の呉香理さんは、国籍は朝鮮籍だが生まれも育ちも日本である自身の存在を「あべこべ」と言い表した。呉さんは「あべこべな自分を受け入れられたのは、ルーツや言葉と文化、朝鮮人として胸を張って生きていくとはどういうことなのかについて教えてくれた朝鮮学校、そして民族教育があったからだ」としながら「朝鮮学校での民族教育とは朝鮮学校の子どもたちにとって本来のアイデンティティを育むこと。しかし朝鮮学校の民族教育の権利が保障されていない現状は不当であり、日本政府、また東京都は朝鮮学校への補助金を一刻も早く復活させなければならない。朝鮮学校の子どもたちのためにはもっと大きな力が必要。より大きな朝日の連帯の力で、日本の都や国の公権力と闘おう」と、都民に呼びかけた。
この日は都議会議員からもアピールがあった。大松あきら議員(公明党)は「公明党は外国人学校に対する補助金を差別なく、公平に支出するべきだということを予算要望の場で主張している。私たち議員は補助金を復活させるために改めて党派を超えた議員の連盟をつくっていこうと取り組んでいる。今年の第1回定例会でも各会派をまわり、朝鮮学校への補助金再開に賛同している議員が多くいるという手ごたえを感じている。第2回定例会でさらにこの問題を一歩前進させていきたい。これからも朝鮮学校の関係者の方々のために議員として頑張っていく」と語った。
また福手ゆうこ議員(日本共産党)は「この間、日本共産党都議団では朝鮮学校に対する補助金復活を求めるために東京都議会定例会での代表質問や予算特別委員会で朝鮮学校に対する差別の問題を取り上げてきた」としながら、次のようにのべた。「直近では2月の予算特別委員会の質疑応答の場で質問を行った。東京都こども基本条例は子どもの最善の利益を保障することや子どもの学ぶ権利を尊重し、教育環境を整えることなど、国籍問わずすべての子どもが対象となっている。質疑では東京都が朝鮮学校だけを補助金支給から除外しているのは条例に反する行為であり、補助金復活を求めると東京都に言った。その後の文書質問でも東京都は日常の中で差別と偏見に苦しむ子どもたちの切実な思い、願いが書かれた声を直接受け取り、補助金再開を求める都民の声が反映された18000筆以上の署名を受け取っている。それでも東京都は補助金支給停止を正当化する答弁を繰り返し、こどもたちの当然の権利や都民の願いを退けている。子どもに対するあらゆる差別を絶対に許さず、子どもの権利を保障する責任ある東京都政において、例外を作ることはすべての都民に関わる重大な問題だ」。
その他にも朝鮮学校支援団体のメンバーや在日本朝鮮留学生同盟東京地方本部の専従活動家なども発言した。2部の終盤では上村和子さん(都議会勉強会実行委員会事務局、国立市議会議員)による集会宣言と「いろそら!合唱団」、「合唱団あすかぜ」、「在日朝鮮女性合唱団」有志たちによる合唱が披露され、長谷川和男さん(都議会勉強会実行委員会事務局)が閉会の挨拶をのべた。
都議会勉強会実行委員会では今後、「ハガキ大作戦」という名目で、小池百合子東京都知事宛てのメッセージが書かれたハガキを東京都庁に大量に郵送するなど引き続き朝鮮学校への補助金支給再開などを求める運動を行っていく。