vol.7 小さな心にも
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筆者●金美蘭先生(26、和歌山朝鮮初中級学校 教員)
ある日の授業中、ひらがなかるたを楽しんでいた1年生。負けん気の強い子どもたちは一つでも多くのかるたを取ろうと必死で、4人の手が重なると「わたしの! ぼくの!」とかるたが破れそうになるほど引っ張り合い、睨み合う(笑)。
かるた遊びの時間は、1年生の色んな表情や感情を見ることができる。みんなそれぞれお目当てのかるたがあるそうで、それを取った時には大喜びし、先に取られると悔しがり、ルールを守らない子には少し怒る。そんな中、低い姿勢で構えていた女の子が、お題を読み上げると同時にスライディング!!顔を床にぶつけてしまった。
「大丈夫?」と何度も声をかけたが泣き止まない。むしろもっと泣いてしまった。そりゃそうだ。「大丈夫?」と言われると内心(大丈夫じゃないから泣いてるんだよ!)と、さらに泣きたくなるのは大人も一緒。どうしようかと考えていたその時だった。
男の子が自分のタオルを持ってきて、「これで拭いてあげたら?」と私に言うのだった。その言葉の通りに涙をタオルで拭ってあげると、魔法をかけたかのように一瞬にして女の子は泣き止んだのだ!
その時わかった。言葉なんていらなかったんだ。大切なのは、かれの行動から垣間見える「優しさ」や「思いやり」の心だったんだと。かれの「優しさ」と「思いやり」が女の子の痛みや涙を消した。その行動に思わず目に涙が溜まってしまったが、ぐっと堪え「なんて優しいの。ありがとう」とお礼を言った。少し照れくさそうにしている男の子の姿は、とても愛おしかった。
子どもたちの小さな小さな心にもいつしか家庭やウリハッキョで育んだ「思いやり」が芽生えている。この温かい心を大切にしていきたい。もっともっと育ててあげたいと強く思った。
また一つ子どもたちに助けられ、そして大切なものを学んだ。