vol.12(最終回)想いが行き交う教室
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筆者●呉明希先生(24、九州朝鮮初中高級学校)
毎週月曜の朝はきまって、休日の出来事やそこでの楽しい話をするのがルーティンになっている。
「昨日博物館に行ったんだ!」「私はハラボジ(祖父)、ハルモニ(祖母)のお家へ遊びに行ったよ!」などなど、子どもたちが楽しそうに話をしてくれるこの時間が大好きだ。
ある月曜日もまた、いつものように週末にあった出来事の話をしていた。ある児童が、遊園地に行って恐竜のジェットコースターに乗ったと話す。私が「いいね! ソンセンニム(先生)も一緒に行きたかったな~」と返すと、「ソンセンニムは家族じゃない」と、突き返された。
後日、日本語の授業で絵日記を書く機会があり、子どもたちはそれぞれ楽しかった思い出をテーマに絵を描いたり、作文を書いたりしていた。その児童は、前に話していた恐竜のジェットコースターがある遊園地を題材に絵日記を書いていた。
とても分かりやすく、丁寧に絵を描いていたので、「楽しそうだね」と話しかけると、「ソンセンニムが前に行きたかったって言っていたから頑張って描いたっちゃ」と自慢気に答えた。その後も絵の構造などを一つひとつ丁寧に話してくれた。
日常の何気ない会話を覚えていたことに驚きもあったが、それ以上に私のために絵を描き、説明してくれたことが何よりも嬉しく、またその子の優しさに胸が熱くなった。
たとえ小さなことでも、誰かを想って行動し、発言することは容易ではない。普段の自分はできているだろうか…と、はっとした。教師である私自身が子どもたちから、大切なことを気づかされる毎日なのだ。
子どもたちがくれるもの以上の何倍もの大きな愛で、九州ハッキョの子どもたちのため、日々精進していきたい。 (おわり)