保健室、発達支援から考える こっぽんおり連続講座
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構造的な差別、見つめる
京都中高の特別支援科
朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋「こっぽんおり」の連続講座第2回「構造的な差別を乗り越えよう〜朝鮮学校の保健・発達支援活動から学ぶ」が7月24日にオンラインで行われた。
「朝鮮学校における保健活動から見える構造的差別について」と題して講演した呉永鎬・鳥取大学准教授は、国連「子どもの権利条約」で差別禁止が謳われているものの、現状は各種学校である朝鮮学校に学校保健安全法が適用されないので、健診の実施、保健室の設置・管理・運営、それらを担う専門家の雇用等はすべて独力で賄わなければならないとのべた。また、朝鮮学校では、1970年から健康診断が始まったものの、無償のボランティアで行われることが多いと指摘。在日本朝鮮人医学協会が取り組んだ結果、95年に在日朝鮮学校中央保健委員会が発足、2001年には朝鮮学校保健規定が制定され、改善が促されてきたと概観した。また、05年から本格化した京都の朝鮮学校における保健室設置については、「長きにわたり継続するヘイトクライムの影響が、学校における保健福祉の必要性を再認識させ、保健室開設の動きへと展開され、試験運転を経て、16年4月に正式に開室された」と振り返った。
呉准教授は、「外国人学校の多くは各種学校以上にランクアップできない。独自の教育の実施と教育の安定がトレードオフになっているのが問題だ」としながら、「1条校と同様に普通教育を行っていながら、各種学校としての制度保障しかなされないという実態と、法的地位との間に存在する乖離を解消すること、外国人学校の法的地位問題が現実に即した形で改善されていかない限り、防犯ブザーやマスク不配布など、同様の差別や人権侵害は繰り返される」と問題提起した。
続いて、京都朝鮮中高級学校教員の朴欣玟さんが、19年に同校高級部に設置された特別支援科について語った。同科は「障害を持つ生徒の自立、社会参加、就労を実現」を目標に定め、基礎学習は、普通科と同じものを利用し、読み書き計算を中心にして、本人の興味や関心に沿って進められた。2、3年時には、専門学校のオープンキャンパスや就労移行支援事業所に足を運び、働くことへの具体的なイメージや、適性をつかんでいったという。
朴さんは、「先回りせずに待ち、本人が自分で考えて動くことを最大限尊重した。たくさんの教員が少しずつ関わるように気をつけた。結果、3年間を通じて自尊感情が高まり、障害があることで選択肢が狭められるのではなく、自分の意志を判断して、しっかり伝えられるようになった」と語った。今後の課題については、障害の特性にあったカリキュラム、学校全体で支援する仕組みづくりを挙げた。
京都朝鮮初級学校保健室で、今年4月から養護教諭として勤めだした曺元実さん(常勤講師、看護師)は、保健室の業務内容(保健教育、対人管理、対物管理、保健室運営)を説明した後、歯磨き指導をした後に水道で見本を見せたり、石鹸で手洗いした場合とそうでない場合を、食パンで実験して掲示し、手洗いの重要性を伝えたという(下写真参照)。
「子どもたちは、外遊びがよくできていて、報告し助けを求める能力がある。心がけていることは、『がんばれ』とは言わないこと。保健室はがんばるために休む場所。小さい目標としては、1年生の卒業を見届けたい。保健室があたり前にあるようにしたい。たくさんの人と思いが詰まった保健室を、私が大切に守っていきたい」(曺さん)
△茨城
通知後の補助金削減、おかしい
5団体、12回目の要請
茨城朝鮮初中高級学校(水戸市)を支援する5団体が7月28日、茨城県庁を訪れ、16年に停止された同校への補助金の支給再開を求めた(写真右)。停止後、12回目になる要請活動には、朝鮮学校の子どもたちの人権を守る会・茨城、カチカジャ!いばらき、茨城県平和擁護県民会議、日朝連帯いばらき女性の会、同校オモニ会などのメンバー20人が参加。大井川和彦県知事との直接面談と朝鮮学校訪問も要請した。5団体は20年11月補助金停止に関する質問書を県に提出、21年2月に回答がなされたが、納得できるものではなかった。
席上、高石典・茨城初中高校長は、県が2016年3月29日に文部科学大臣が自治体首長に出した通知を理由に補助金を止めたことや、補助金支給による公益性と教育振興上の効果を確認できないと回答したことについて、再考を求めた。高校長は、「3・29通知は、補助金を中止せよという趣旨ではない。また朝鮮学校は相互理解に貢献し、地域社会に貢献する人材を育てていることから教育振興上の効果は実証されている。生徒と保護者は心を痛めている」と訴えた。【茨城初中高】
各地から抗議声明
広島無償化裁判上告棄却
7月27日付で下された最高裁による広島無償化裁判の上告棄却決定を受けて、各地の朝鮮学校支援団体から抗議声明が相次いで発表されている。
朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会(東京)の声明(27日付)は、「無償化裁判における不当判決の多くは、朝鮮総聯の朝鮮学校への『不当な支配』を適用除外の理由としているが、これは国や一部報道機関によって意図的に作られたものである」と指摘。「朝鮮学校に対して『不当な支配』をしているのは日本政府である」としながら、原告の朝鮮学校側勝訴の判決を下した大阪地裁と他の地裁・高裁の判断が大きく異なる中で最高裁がなすべきは、「上告棄却、上告不受理決定通知ではなく、真摯な審理を通じて原告の主張に耳を傾けることだった」と指摘した。さらに声明は、「『多文化共生』を口にしながら、朝鮮につながるものは差別する日本政府には歴史認識も人権意識も欠落している」と断じた。
「北海道朝鮮学校を支える会」も30日付で声明を発表。今回の最高裁による上告棄却について、「すべての子どもに教育を保障する制度の本旨に反する日本政府の意図的な差別行政を追認した政治判断」だと批判した。また、朝鮮学校側の訴えを退けた一連の判決は「政権による国家的差別を合法化する不当判決」だとする一方で、大阪地裁の判決については「唯一、闇の中に輝く良心の光」だと評価した。そのうえで声明は、「他国での民族や民主主義に係る人権弾圧を憂えながら、足元の日本での人権弾圧に鈍感であってはならない」としながら、「多様性を尊重する五輪開催中の上告棄却決定は国際社会へのふてぶてしい居直り」だと指摘した。
「千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク(千葉ハッキョの会)」と「日朝友好千葉県の会」も連名で発表した声明(27日付)で、「在日朝鮮人にも納税の義務は等しく負わせておきながら、補助金の凍結・減額を行い、高校無償化から朝鮮高級学校を外し、幼保の無償化から朝鮮幼稚園を外し、さらにはCOVID-19に係る支援からも朝鮮大学校を排除している」と、日本政府の朝鮮学校に対する差別政策を批判。両会として今後も引き続き朝鮮学校への補助金支給・高校無償化、幼保無償化適用などの課題に取り組んでいく決意を表明した。