李香代さんが勝訴 添田市議の投稿は違法
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弁護団、支援者の祝福を受ける李香代さん(2025年10月24日、大阪市)
55万円の損害賠償と投稿削除求める
大阪市泉南市の添田詩織市議会議員にX上で在日コリアンの民族的出自を攻撃された李香代さん(59)が、550万円の損害賠償と投稿の削除を求めた裁判(山本拓裁判長)の判決が10月24日に大阪地裁で下された。判決は添田議員の一連の投稿が李さんのプライバシー権、肖像権、人格権を侵害する違法行為だと断定。添田市議に55万円の損害賠償の支払いと投稿の削除を求めた。
添田議員は、かねてから李さんが取締役を務めるイベント会社「トライハードジャパン」と泉南市が業務委託契約を結んだことを問題視してきた。同社から提訴されると、その腹いせに提訴翌日の24年2月2日から李さんへの攻撃をX上で始め、大阪府庁前の火曜日行動で朝鮮学校の子どもたちの権利保障を求める李さんの写真を載せ、「スパイ事件で死刑判決を受けた」と冤罪被害者である李さんの従兄の情報を悪用する投稿を続けた。
判決は「本件親族が、北朝鮮のスパイとして非合法活動を行って死刑判決を受けた者であり、その親族であって朝鮮学校とも関係している原告も、北朝鮮による何らかの非合法活動に関与しているのではないかとの印象を抱かせるといえるから、原告の社会的評価を低下させる」として添田議員の投稿を「原告の名誉を毀損する違法なもの」と認定した。

今回の判決は、公人である添田議員が「犬笛型ヘイト」を通じて民族的マイノリティへの偏見を煽り、平穏に暮らす権利を侵害したことへの判断が注目されていたが、この点も裁判所は違法性を認めた。
「投稿は…北朝鮮による非合法活動に関係を有する者であることを示唆しつつ原告を特定する内容であり、一定の政治的思想等を有する者による原告個人に対する攻撃を誘発する危険を含むものといえることをも考慮すれば、これにより原告が被った精神的苦痛は小さくない」として、添田議員の投稿が市民社会に向けて「差別を煽った」ことに警鐘を鳴らしている。
弁護団によると、「犬笛型ヘイト(※)」に関して違法性を認めた判決は初めてとのこと。一方、判決は添田議員が国連・人種差別撤廃条約などが禁止する人種差別的な意識をもって李さんを攻撃した点については原告の主張を認めなかった。
※犬にしか聞こえない周波数で鳴る笛と同じように、その意味が分かる人にだけ分かるように、工夫されたメッセージ。多くの場合は人種差別的なメッセージのこと。

支援する会の大村和子さん(中央)と李信恵さん(右)も判決を見守った
弁護団(田中俊弁護団長)は、判決後の記者会見で「この裁判は2016年のヘイトスピーチ解消法制定後、依然として政治家によるSNSによる人権侵害がはびこる現実のなかで、政治家のSNS利用による人権侵害行為や人種差別に警鐘を鳴らし、歯止めをかける意義があった。判決は政治家のSNS利用の在り方に一石を投じる重要な意味を持つ」と指摘した。
勝訴判決を受け李香代さんは、「声をあげることが大切だと思ってきた。在日朝鮮人への差別は戦後80年、植民地のころから100年以上にわたり日常茶飯事で行われてきた。それを私は親、祖父の近くでずっと見てきたし、体験してきた。政治家には良心を問いつづけたい」と語り、大阪府に対して罰則付きのヘイト禁止条例の制定を求めていくとの決心を伝えた。
裁判所と記者会見には、李さんとオモニ会活動をともにした同胞たちや日本人支援者ら約50人が集まり、李さんを見守った。(文・写真 : 張慧純)







