vol.13 高市首相の「台湾有事発言」と日中関係
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Q1 高市発言の何が問題なのか
中国は、内政問題で核心利益と位置付ける台湾問題に日本の現職首相が軍事介入の可能性を初めて暗示したことに強く反発している。中国は「最大限に平和統一を求める」と表明しているが、2005年に採択された「反国家分裂法」には、台湾の公然たる分離独立、外部勢力の干渉など三つの前提条件の下では「非平和的手段を放棄しない」と規定している。そのようなケースで、高市発言は人民解放軍の出動に対抗することを意味し、台湾の分離独立勢力に「誤ったシグナル」を送ったと中国側は見ている。
日本は近年、なし崩し的に台湾へのコミットを深め、加速させている。25年春、元統合幕僚長が台湾の政務顧問に就任し、7月には台湾「外交部長」が「私的身分」で、9月には蔡英文前「総統」も極秘に来日し、自民党要人らと会った。23年に訪台した麻生太郎自民党副総裁は「日台米、戦う覚悟を」と叫び、高市氏自身も25年4月に訪台し、中国を排除した「サプライチェーン作り」を呼び掛けた。今回の高市発言をきっかけに、中国は日本がさらに台湾問題に首を突っ込むことに危機感を募らせ、「全面反撃」を決定したのだろう。
Q2 「台湾有事」は本当に起こるのか
「台湾有事」は人民解放軍による一方的武力行使だと思われるが、その可能性は極めて低い。台湾のGDPはピーク時は中国の45%相当だったが、24年では4%台に過ぎず、中国は平和統一に自信を強めている。ただ、米国は内政の失敗を台湾海峡の緊張に転化したり、中国の追い上げを阻止する最後の手段として台湾独立を煽って戦争を挑発したりする、という二つの可能性は依然残ると中国は見ている。だから戦勝80周年の9月3日の軍事パレードで「装備済み」の最新兵器を展示し、「いかなる外部勢力が軍事介入しても中国に勝てない」ことを見せつけようとした。。
Q3 今後の日中関係および東アジア情勢の展望は
高市発言の撤回を求める中国に対し、日本側は「事実上の撤回」として言い逃れているが、完全撤回か、具体的な約束をするか、という出口が見つかるまで中国の対日外交戦は続くだろう。
高市首相は「日本はサンフランシスコ講和条約で台湾に関する全ての権利権限を放棄している。台湾の法的地位を認定する立場にはない」とも弁解しているが、この言い分は1972年の国交正常化交渉で周恩来首相(当時)に拒否された。日本側は「ポツダム宣言の順守」を共同声明に盛り込む譲歩案を提示し、合意した。ポツダム宣言は、台湾の中国返還を要求したカイロ宣言の実施を盛り込んでいる。高市氏の弁解は72年より前の立場に逆戻りしたことを意味し、中国の不信感を強めている。
おそらく、高市政権は旧来の「上から目線」で中国に対する「抑止力」を妄想しているのだろう。時代の変化を見ない「井の中の蛙」だ。国力で日本の4倍以上になった中国の核心利益への挑戦に対し、トランプ政権すら事態の鎮静化を日本側に求めている。
東アジア情勢の力学は根本的に転換しつつある。26年4月に予定されているトランプ訪中で、台湾や朝鮮半島問題がどう話し合われるか、関係諸国は固唾を飲んで見守っている。









