vol.11 朝中ロ首脳が集った抗日戦争勝利80年記念式典
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中国・北京で行われた中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会には、金正恩総書記など世界各国の首脳らが出席した。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
Q1 式典の意義は?
9月3日に北京で開催された「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」(以下「9.3式典」)は、日本の侵略戦争と植民地支配に抗した中国人民の闘いの犠牲者を悼み、功労者を称え、二度と侵略を許さないという決意を共有する場でした。習近平主席の脇を固めたのは、日本帝国主義と闘ったロシアや旧ソ連諸国、朝鮮、韓国、東南アジア諸国を含む、ユーラシア、アフリカ、中南米26ヵ国の指導者たちでした。全中国、全世界から来た6万人の参列者の一人であった石田隆至さん(研究職)は、「平和と独立の回復を祝い、それを守り抜くことを誓い合う」式典であったと報告しています(9月22日付「人民日報」)。この式典は、歴史の記憶にとどまらず、今なお覇権的な西側先進国主導の国際秩序に抵抗し、自立と主権を守ろうとするグローバル・サウス諸国の連帯を示す、脱植民地主義・反帝国主義の現在的意義を発信する場でもあったといえます。
Q2 6年ぶりの朝中首脳会談。両国の関係の現在地は?
金正恩総書記が9.3式典への出席を発表したのは直前の8月28日でした。ニュースは世界を駆け巡りました。式典当日、レッドカーペット上で各国要人を出迎えた習近平主席は、6年ぶりに会う金総書記が現れたとき、ぐっと一歩前に踏み出して両手で握手を交わしました。朝鮮は近年ロシアと関係を深め、昨年包括戦略パートナーシップ条約を結び、クルスク防衛戦に派兵しています。9.3式典での習主席、金総書記、プーチン大統領のそろい踏みで、中国と朝鮮も重要なパートナー同士であることを印象づけました。翌4日の朝中首脳会談でも「国際情勢がいかに変化しようとも」関係を維持・発展させることを確認しました。9月末には朝鮮の崔善姫外相が北京で王毅外交部長、李強国務院総理と会談しました。これらの動きから、2025年の中朝関係は、古くからの友好関係を保ちながら、習主席が「かつてない世界的試練」と呼ぶ西側諸国の脅威を踏まえた、緊密な協力関係へと進化していると言えます。
Q3 今後の世界情勢の展望は?
9.3式典について西側メディアは「軍事パレード」にばかり注目しましたが、直前に天津で開かれた上海協力機構(SCO)サミットと連動していたことに注目しませんでした。SCOはBRICSと歩調を合わせ、西側とは異なる多極的な経済システムの形成を目指す中国およびグローバル・サウス諸国中心の枠組みです。インドと中国が関係改善に踏み出したことも画期的でした。プーチン大統領ら多くの首脳はSCOから9.3式典へと連続して参加しました。米国の関税や制裁は、むしろグローバル・サウス諸国の結束を強め、貿易での脱ドル化など経済の「脱植民地化」を後押ししています。BRICS+諸国はすでに世界GDP(購買力平価ベース)で44%、人口の56%を占め、「グローバル・マジョリティ」とも呼ばれるようになっています。9.3式典における金正恩総書記の登場とその後の朝中関係の加速は、安全保障だけでなく、このような経済の新体制にも朝鮮が加わる可能性を示唆しており、今後の朝中ロの協力の広がりが期待されます。