vol.5 一世からつないだ魂のリズムで
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「ウトロ平和祈念館」(京都府宇治市)が4月30日に開館した。
レイシズムと歴史改竄が蔓延するこの日本社会において、その存在自体が一つの抵抗だ。大型連休中は、マダン劇公演や記録映画の上映会などの記念行事が催され、延べ約2000人が参加した。最終日のコンサートでは、闘争を牽引してきた「ウトロ農楽隊」が十数年ぶりに復活、闘いの結晶たるこの空間に魂を入れた。
農楽隊の中心は金順伊(1954年生)だ。メディア取材を終えて控室に向かう彼女と歩きながら、「再結成」の感想を訊くと、トートバッグに入れた写真をさすって私に示した。そこには鬼籍に入ったメンバー3人が写っていた。「この人たちが背中を押してくれた」。
ウトロは、2・1㌶の朝鮮だ。そこは長短のリズムと共にあった。慶事はもちろん、七輪を囲んでの焼肉で酒が入ると誰かがチャンゴを叩く。それは憩いであり日常からの解放だった。
伝統は土地問題を契機に「武器」となる。呼びかけの中心は京都朝鮮中高級学校で舞踊部にいた洪貞子(1955年生)だ…。(続きは月刊イオ2022年6月号に掲載)