vol.48 立ち返るべき「故郷」― 4年間の連載を終えて
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ゆったりとした時間の流れに身を浸し、その人の生き方を教えてもらう。対話を通して記憶を発掘し、時に議論して互いが積み上げてきた価値観を揺らし合う。
そうして相手の譲れぬ一線、「思想」に触れた時のゾクリとくる喜びは何ものにも代え難い。出会えれば言葉は溢れ出してくる。文章は書くのではなく、出会いによって書かせてもらうものだ。ネタ取りや情報収集ではない、目の前にいる人の思想に到達する営為、それを「取材」というのだろう。
だから書くことは私にとって、「先生」が増えていくことを意味するが、そんな人たちは得てして、先に逝ってしまう。ものを書き始めてこの四半世紀の間に、数々の訃報に接してきた。
書き切れなかった彼彼女らとの出会いの細部を書き遺したい、そんな思いを抱き続けてきた…。(続きは月刊イオ2021年12月号に掲載)
写真:中山和弘
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。