vol.46 イエスに倣って生きる
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壊された自分をもう一度、取り戻す。そのためには中央情報部(KCIA)の連中に、『李哲を刑務所に入れたのは間違いだった。刑務所でもっと大きな人間になって出てきた。これは失敗だった』と言わせなければと決めたんです」
李哲さん。1975年、留学中の韓国で、「北のスパイ」にでっち上げられ確定死刑囚になった人物である。その後無期懲役に減刑、民主化翌年の88年に釈放された。獄中生活は13年に及んだ。
翌年日本に戻り、2015年には再審で雪冤を果たし、2019年には文在寅大統領から直接の謝罪を受けた。今年6月、その半生を『長東日誌 在日韓国人政治犯・李哲の獄中記』にしたためた。自由と平等を希求するすべての者たちに差し出された「バトン」である。
1948年、在日二世として熊本県球磨郡の民団系人士の家に生まれた…。(続きは月刊イオ2021年10月号に掲載)
写真:中山和弘
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。