南の市民団体が訪日、朝鮮学校訪問、文科省への要請、「金曜行動」へ
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東京第1初中の生徒たちと記念撮影する訪問団
日本政府による朝鮮学校差別の解決に取り組む韓国の「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」「全国教職員労働組合(全教組)」「全北(全羅北道)キョレハナ」などのメンバーで構成された「朝鮮学校差別反対!高校無償化適用要求!金曜行動12次訪問団」(37人、以下、訪問団)が、6月6~9日にかけて来日し、都内各地の朝鮮学校を訪問。7日には参議院議員会館(東京・永田町)を訪れ、関係省庁に要請を行った後、「金曜行動」に参加した。
文・写真:全基一
“共に歩んでいきたい”
共に歩む存在
6日、成田空港に到着した訪問団は東京朝鮮第1初中級学校(東京都荒川区)を訪れた。運動場で待機していた同校の児童・生徒たちは、訪問団が到着すると、運動場で体操を披露。初級部児童たちは組体操を、中級部生徒たちは旗体操を踊り、訪問団を歓迎した。体操中、中級部生徒たちが全員で大きな「統一旗」をなびかせると、訪問団のメンバーらは、異国の地でのびのびと育つ朝鮮学校の子どもたちの姿にこらえきれず涙をこぼしていた。
訪問団は、校内を見て回った後、中級部生徒たちが準備した特別公演を観覧。生徒たちはカヤグム演奏や舞踊、合唱を披露した。公演後は、南の市民たちと生徒らが一つの円になり、互いに手をつなぎ、時には肩を組み、「우리의 소원은 통일(私たちの願いは統一)」「다시만납시다(また会いましょう)」などの曲を歌った。
朝鮮学校の子どもたちを描いたドキュメンタリー映画「ウリハッキョ」「60万回のトライ」を観て朝鮮学校の存在を知ったという、チェ・ムンソンさん(32、全教組)。京畿道で初級部教員を務めるチェさんは、「朝鮮学校の子どもたちとウリマル(朝鮮語)で交流しながら、私たちは同じ民族であり、これからも共に歩んでいく存在だと改めて実感した」と感想をのべた。

東京第1初中の生徒たちと記念撮影する訪問団
無償化差別撤廃を
訪問団は7日には、東京朝鮮第3初級学校、東京朝鮮中高級学校を訪れた後、参議院議員会館を訪れ、文科省、法務省、外務省の担当者らに要請を行い、朝鮮学校に対する差別を撤廃するよう求めた。
安倍首相と文部科学大臣宛の要請書では、日本政府と文科省に対し、▼日本の憲法、国際人権規約、国際児童権利条約に背く朝鮮学校への差別的措置を撤回すること、▼国連社会権規約委員会などの勧告に従い、一日もはやく朝鮮学校生徒たちに差別無く高校無償化を適用し、教育補助金中止を促す通知を撤回すること、▼朝鮮学校の生徒たちの教育権を侵害する一切の行為を打ち切り、生徒たちを威嚇する「在特会」などの右翼団体に対して規制措置を取ること、▼過去の植民地支配に対する深い謝罪とともに在日同胞への差別政策を直ちに撤回し、朝・日関係の正常化を図ることを求めた。
全教組のチョン・キョンウォンさんは、「私たち代表団の話が、あなた方の心に通じないのは、あなた方が日本帝国主義の略奪の歴史について学んでいないからだ。歪曲された歴史しか知らない政府、担当者の誠意のない対応、態度に疑問、怒りを覚える」としながら、「日本学校と外国人学校に『高校無償化』が適用されるなかで、朝鮮学校だけが除外されている現状を見ても本当に差別が無いといえるのか」と質問した。この質問に文科省担当者は、「朝鮮学校は適用要件に満たなかったので無償化の対象外となった。決して差別ではない」と答えると、支援者からは「話にならない」「良心があるのか」と怒りの声が飛び交った。

中級部生徒たち全員でなびかせた「統一旗」
朝鮮学校、同胞の存在、南で広めたい
訪問団はその後、文科省前で行われた「金曜行動」に合流。雨が降りしきるなか、東京朝高生徒や朝鮮大学校学生、朝鮮学校のオモニら約130人とシュプレヒコールを叫んだ。
全教組のチョ・キョンソンさんは、「朝鮮学校の子どもたちは日本の差別政策に負けず、自らのアイデンティティを守るため毎日たたかっている。日本が朝鮮民族への差別を今もなお是正しないのは過去の植民地の歴史を反省していないからだ。日本政府は、朝鮮学校への差別政策、高校無償化からの排除政策を是正し、過去の歴史を反省、清算せよ」と訴えた。
「金曜行動」後、訪問団は日比谷野外音楽堂で行われた集会とサウンドデモ「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!」に参加。集会には東京朝高の民族管弦楽部も出演し、公演を披露した。サウンドデモで訪問団は、「朝鮮学校差別反対」と書かれたカードを掲げ、日本市民らとともに日比谷から東京駅までを行進した。

参議院議員会館で行われた要請のようす
全北キョレハナのイ・ミンジェさん(33)は、「朝鮮学校への補助金不支給など日本政府の露骨な差別を受け、厳しい経済状況の中でも子どもたちを朝鮮学校へ通わせる保護者たちに深く感嘆した。はじめて参加した『金曜行動』は、これまで自分は何をしていたんだと気づかせてくれたきっかけになった。韓国の友人たちに朝鮮学校、在日朝鮮人の素晴らしさを広めていきたい」と思いをのべた。
前述のチェさんは、「在日同胞社会の団結の源とはまさに、朝鮮学校で自国の言葉、歴史、文化を学ぶ子どもたちの存在ではないだろうか」と、3校の朝鮮学校訪問を終えた感想を話しながら「教育者として韓国の子どもたちに、日本で差別とたたかいながら暮らす同じ民族の在日朝鮮人という同胞がいるということを教えていきたい」と語った。
訪問団は、8日に西東京朝鮮第1初中級学校を訪問。9日には4・24教育闘争時に犠牲になった金太一少年をはじめ虐殺、暗殺された同胞や殉職した同胞たちが合葬されている「無名戦士の墓」(東京・青山墓地)を訪れ、同日、日本を発った。

「朝鮮学校差別反対」と書かれたカードを掲げて行進する訪問団

「金曜行動」で「声よ集まれ歌となれ」を歌う訪問団