補助金停止から10年。神奈川で新たな取り組み
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高校無償化制度からの排除、神奈川県による補助金支給停止など、神奈川県下の朝鮮学校への差別的処遇が長らく改善されていないことを受け、女性同盟神奈川県本部と県下の朝鮮学校オモニ会が新たな取り組みを始めた。神奈川県議会議員との面談、交流だ。
1月21日、そのスタートとして、両団体から計5人が神奈川県庁 新庁舎ロビーに集合。神奈川県議会議員の青木マキさん(神奈川ローカルネットワーク共同代表)を訪ねた。私は記録係として同席した。その日、交わされた対話をレポート形式で紹介したい。
同日、まず女盟神奈川県本部のコン・リョンスン国際部長が取り組みの趣旨を説明した。
「高校無償化除外から16年、補助金停止から10年が経った。補助金停止直後の2017年から毎月『月曜行動』を続けているが、声は届いていない。加えて近年は日本社会全体で外国人排除の風潮が強まっている。黒岩県知事に面会を申し入れても対面が実現したことはなく、いつも代理の職員に手紙を渡すだけ。進展のない状況のなか、今後どうしていけばいいか。
そこで昨年から考えていたのが、神奈川県議会議員一人ひとりに直接声を届けていくということ。いつも朝鮮学校を支援してくださる青木マキさんにお知り合いの議員を一人ずつ紹介していただきながら、私たちのこと、月曜行動のことを改めて知ってもらう。小さな取り組みで、遠い道のりかもしれないけれど、女盟+オモニ会というチームで行動を続けることで少しずつ声を届けられるように頑張りたい」

15時45分、青木マキさんの出迎えを受けて面談が始まった。コンさんが取り組みの趣旨を再度説明したあと、女盟神奈川県本部のペク・チュビ子女部長が発言。近年、神奈川朝鮮中高級学校の生徒たちが活躍したニュースや朝鮮学校支援について話したあと、自身の思いを述べた。
「補助金がないことが当たり前になっている現状で、保護者も子どもたちも差別に慣れてしまっている。月曜行動も続けているが、次の一手をどうしたらいいのかいつも考えている。
あるとき純粋な疑問から、朝鮮学校を支援してくださる議員さんにお聞きしたことがある。私たちは投票権がなく、何もご自身の力になれないのにどうして手伝ってくれるのか? なぜ私たちの子どもたちのために動いてくれるんだろう? その方は『正義感だよ』と仰っていた。ありがたかったと同時に、私たちなりにできる応援をしていきたいし、自分たちの活動においても点を面にしていくため、議員さんたちと一緒に考えながら動いていきたいと思った」
青木さんは「正義感」という言葉に反応しながら返答した。
「私の場合、正義感というよりは、それが普通だと思う。選挙権がある人のために働くわけではない。子どもは選挙権がないけれど、子どもたちのためにも働いているし。どんな子であっても健やかに、誰にも差別されず、傷つかずに生きていけるべき。みんなが同じ地域に暮らしているお隣の人として仲良く暮らしていけたら。神奈川県がそれを目指していないとすれば、その姿勢は間違っていると思うので声を上げていきたい。近年、『日本人ファースト』というような相容れない考えを持っている人もいるが、間違えていることを間違えたまま見過ごしておけない。まして議員というからには責任がある。
一方で、補助金がないことがデフォルトになっている問題について、どうしたらいいだろうと思案している。この前、全国市民政治ネットワークの勉強会で崔江以子さんのお話を聞いた。崔さんは議会のあらゆる人と知り合って仲良くなっていった。これが川崎市で条例を作るにあたって後押しになったという。参考になる話だと思う。こんなふうに皆さんの話を他の議員に聞いてもらったらいいと思う」
続いて、神奈川中高オモニ会のキム・ヘンスン会長が思いを述べた。
「私は高3、中3、年中の子どもがいる。自分も夫も朝鮮学校で働いていた。現在は中高のオモニ会会長として、初めて対外活動も体験した。月曜行動に行ったり、キムチ販売をする過程で、日本の方々と接する機会もできた。キムチ一つにしても、長年とってくれているので、私たちよりも私たちのことを知ってくれている日本の方がたくさんいる。自ら勉強もしているし、月曜行動でも、ものすごい声で応援してくださるし。中には日本全国の朝鮮学校を訪ねた方もいることを知り、すごさを実感した。
こんなに差別のある社会で、支援してくれる日本の方がなんでこんなにいるんだろう?と思う。月曜行動に参加しながら、県庁舎の窓を見て、ちゃんと声が届いているのか本当に分からなくて、やっている意味があるのかな、無駄だなと感じていたときもあったが、そうじゃないんだなと思えた。私は学校に通っている子どもたちの姿を見ることが大好き。子どもたちにとっても月曜行動が日常になってしまっていて、これからの子どもたちは『これがおかしいことなんだ』って感じられなくなるのでは?と考えると悲しい。私たちの声を届けられたらと思う」
差別が常態化していることにより、同胞たち自らが「差別のない社会」というものを感じられなくなっている問題について、コンさんも言及した。青木さんはこれについても自身の意見を話した。
「月曜行動を子どもたちにさせている状態を作っているのは私たち大人の責任。県庁職員も、あそこで声が聞こえてくることが当たり前になっている。『あ、声がするから月曜日か』みたいな。けれど屋内にいるからすべての声が耳に入ってくるわけではないし、県庁内の誰かがその内容についてきちんと説明してくれるわけでもない。どれくらい職員に伝わっているのだろう。けれどキムさんがお話したように、伝わっている人には伝わっていると思う」
次に、女盟中北支部の副委員長で、現役の保護者でもあるアン・ムナさんが発言した。
「私は23歳、20歳、そして小4の子どもがいる。長年、子どもたちを朝鮮学校に送ってきたが、だからといって学校に言いたいことがないわけではない。けれどその一番の要因を作っているのが学生数の減少。これによって合理的な運営ができていない。先生たち自身は寝ずに働いているが、どうしてみんなこんなに学校へ入れないのかなと考えすぎた時期もあった。あるとき、一番下の子のランドセルを買いに行くと、店員さんから『どの学校に通うんですか?』と訊かれた。学校名は伏せて、『町田の学校で同級生が4人なんです、そのうちの2人はいとこで…』と答えると、『え! よっぽどいい学校なんでしょうね』と言われた(笑)。
私は、朝鮮学校に子どもを送ろうかどうか悩んでいる保護者と絶対に直接話すようにしているのだが、送るのをしぶる理由は月謝とかではない。本質は『通って良いことあるの?』。マイノリティとして生きること、社会で差別を受けている状態に慣れきっていて自己肯定感がない。この状況を打破していかないといけない。ぜひそのための力をお借りしたい。去年、竹中麻美さん(県議スタッフ)が催してくださった、キムチを食べて交流する会がとても良かった。今年もぜひできたら」
コンさんも言葉を継いだ。
「オモニ会には運動や活動をマニュアル化したものがなく、その都度、自分たちで経験しながら活動を作り上げるしかなかった。そこから一歩出て何かをすることが難しい。けれど今あるつながり、顔の見える相手のことを考えて、次はこういうアクションや催しをすればいいんだなということを、私たちも少しずつ学んでいるところ」
以降、キムチ販売についていくつか意見が交わされた。
青木さん「昨年末も大阪からトラックで仕入れて、あれだけの量を、すごい熱量でオモニたちが仕分けている、それを信念としてやっているのがすごい」
女盟神奈川県本部・任芳玉委員長「それを宣伝してくれているのが青木さんと竹中さんはじめ、神奈川ローカルネットワークの方々。去年ものべ188人が買ってくれた」
アンさん「キムチじゃなかったらここまで広がっていないかもしれない」
青木さん「確かにキムチが好きで買っている人もいる。キムチをお渡しするとき、最初は『朝鮮学校のキムチです』と言っているけど、一人ひとりに丁寧に話す時間がないこともあって、このキムチがどういう意味を持っているか知らずに買っている人もいると思う。朝鮮学校支援につながっていることを示すラベルを貼ったらどうかなと思う」
アンさん「専用の袋を作ってもいいかもしれない。袋に印刷しておく」
青木さん「話しているとこうやってアイデアが出てくるので、やはり会うことは大切。あとはトブロツアー(正式名称:かながわの朝鮮学校交流ツアー)のチラシを議員たちに送ったり、それを持ってロビイングするとか」
任さん「これまでお付き合いのある議員さん方には送っている」
青木さん「朝鮮学校への処遇改善についていうと、議会でそれがネタになるのは最後の最後かなという感じがする。機を熟させないと簡単に流されてしまう。大きな会派から発議が出るようにするか、行政を動かすか」
コンさん「私も、議員が議会での発議まで持っていくのはある意味頂上だと思っている。今日がその一歩目。20年くらい前、私が中高オモニ会の会長をしていたとき、陳情を受けた市職員が『どうしてあなたたちは最初から大きな壁に臨もうとするんだ、見ているこっちが涙出るよ』と言われたことがある。『もっと小さな山からチャレンジしていったら』と助言されて、学校のバザーのお知らせを近隣の日本の方々にもしてみた。すると関心を持ってくれる方が思いのほか多くて、それまでは無駄だなと思っていたことが、そうではなかったのだと気づかされた」
さらに月曜行動の進め方にも言及。なかには気持ちが溢れるあまりシュプレヒコールが激しくなる支援者もおり、この不当な状況をまったく知らない歩行者や職員の人々には強く聞こえてしまわないか、耳を傾ける姿勢を遠ざけてしまわないかという危惧があることについても共有された。
青木さん「対立構造を生むのはよくない。自分もマイクを持ったとき、誰に向かって何を言ったらいいか分からず戸惑った経験がある」
最後に、日本社会に蔓延する排外主義的な空気をどうしていくべきか意見交換も行われた。
青木さん「昨年、藤沢市の市民らから、モスク建設に反対する請願が議会に提出された際、市議会でことごとく否決されたことにホッとした。議会が差別に加担しなかったと思っている」
コンさん「近年、朝鮮人への差別が矛先を変えてさまざまな外国の方々に向かっている。けれど根底にあるものは一緒。私たちに向いていない矛先が、いまはどこに向いているんだろうと考えるときがある」
竹中さん「少し前に横浜市が意識調査をしたのだが、『差別はいけないと思うか』という設問に対する答えが、3年前に比べて『絶対にいけない』の数字が下がり、『いけないことだが理解はできる』の数字が上がっているという現状がある」
コンさん「『外国人は怖い、悪い』というイメージが植えつけられている。差別している意識というより、怖いからなんとかしてほしいという気持ちの方が強いのだと思うが、その恐怖というのはとても漠然としたもので、全くのデマや一部の悪質なSNSの書き込みをそのまま真に受けてしまっているのが本質ではないか」
青木さんは最後に、同じ会派の議員にもトブロツアーのチラシを渡し、朝鮮学校訪問のお誘いをしてみると話した。さらに次回はその議員とも面会できる機会をつくるとの前向きな発言を受けた参加者たちは、「今回の面談は最初の一歩。今後につながる貴重な前進になるよう引き続き努力していこう」とお互いを労った。
面談の中で言及されたトブロツアー、今年は2月14日(土)に開催される。希望者は、【こちら】から事前申し込みにて参加が可能だ。(理)









