いま共生を考える
広告
イオ2月号では「共生」をテーマに特集が組まれた。
昨年の秋ごろに、筆者が発案した当時はまだ粗削りな状態だったが、編集部メンバーたちのおかげで、時期的にもタイムリーで、内容の詰まった特集へとアップデートされた。読者の皆様には、ぜひ手に取って読んでいただきたいと思う。
雑誌が刷り上がったいま、改めて当初の企画書を確認してみた。
◎共生を考える~共生の取り組み紹介をメインに~
趣旨:日本人ファーストの思想に潜む外国人排斥。外国人優遇デマに踊らされ、人々の間では根拠のない漠然とした不安や不信感が増幅され、敵視の風潮さえ高まっている。7月のJNN世論調査では、外国人の入国管理や不動産取得に対し「規制を強化すべき」との回答が78%という結果も出た。
しかし一方で、参院選に際し「差別に投票しない」というタグが登場するなど、この社会には排外思想にNOを突きつける人々がいる。今こそ、そうした人たちが日常的に取り組んできた多様な共生のかたちに密着したい。

ニコニコ主催で行われた【衆院選2026】ネット党首討論の配信画面をキャプチャ
参院選当時、論戦の名を借りた排外主義の喧伝のみならず、SNS上でも分断を煽るワードが散見され、意図的に「問題化」された根拠不明の「外国人問題」が独り歩きした。そしてそれは、まるで流行語のように社会を飲み込んだ。酷かったのは、なんら検証もされていない、ネットのショートムービーなどを根拠に、外国人犯罪が本当に増えていると信じる層が一定数いたこと。これもまた、すぐそばにいる隣人を「問題化」した論者たちにとっては好都合なものだった。こうした目に余る現状そのものを取り上げるのもメディアの役割としては大事だが(しかし発信の際はヘイトの流布や当事者への加害になりうることへの自覚と責任が必要だと思う)、そうではなく、今こそ、その対極にある日常的な「共生」を可視化させる必要性に駆られ企画を出した。
企画の価値は、2月8日の衆院選を約1週間後に控えた今、色あせるどころか、さらに増しているように感じる。
参院選では、排外主義を唱えた政党が当選者を増やす結果が出たが、昨今の党首討論(ネット党首討論衆院選2026=ニコニコ)でもそれを狙ったかのような論戦が繰り広げられた。その場で語られる外国人は労働力としてのニューカマーであり、オールドカマーは言及さえされない見えない存在だ。そしてこの社会の住人はまるで「日本人」しかいないような主張が放たれた。
オレンジ色に象徴される某党代表は、「5年後、10年後の日本の未来をどう描くか?」という討論テーマに対し、「日本の国を日本人が中心で運営できる体制を構築していくことが大事」だとした。同氏はまた、国防のためには「国民一人ひとりが国を守っていく気概が必要」で、「教育によって本当に日本を愛する国民を育てていかなくてはならない」とも強調した。
生活困窮など、日本社会の矛盾を外国人に向けたとて、その行く先には、さらなる分断しかないだろう。外国人を規制すれば本気で生活が改善されるとでも思っているなら、とんだ世間知らずではなかろうか。
情報の真偽はSNSだけでは決して確認できない。仮に最初の入り口がSNSだったとして、もう一歩踏み込んで、すぐそばに暮らす多様な他者と言葉を交わしてみてほしい。それがネット上に蔓延するデマや、何が事実かを検証するための第一歩になるのだから。
(賢)
※これと関連し1月26日、移住連・外国人人権法連絡会など11団体が呼びかけ団体となり、「衆議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対する緊急共同声明」を発表した。
最後にその声明全文を紹介する。
「衆議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対する緊急共同声明」
私たちは、外国⼈、難⺠、⺠族的マイノリティ等の⼈権問題に取り組む団体です。
私たちは、昨年 7 ⽉の参議院選挙の際に、政府も多くの政党も排外主義煽動を競い合っている状況を批判し、政府等に対し、ヘイトスピーチが許されないことを広報することなどを強く求める声明を出しました。しかし、各地の選挙演説で外国⼈を排斥するヘイトスピーチが多数⾏われ、それを批判する⼈々に対し、「お前⽇本⼈じゃないだろう」等の差別的な脅迫や排除が⾏われました。また、排外主義を唱えた政党が当選者を増やす結果となりました。
昨年 10 ⽉に発⾜した⾼市政権は、外国⼈への根拠のない不安を煽り、在留審査や⽇本国籍取得の厳格化、教育の無償化制度からの外国籍者の排除などの外国⼈規制策を急速に進めています。同年 5 ⽉に出⼊国管理庁が発表した「国⺠の安全・安⼼のための不法滞在者ゼロプラン」を強⾏に推進し、強制送還を前年⽐でほぼ倍増させています。その結果、⽇本で⽣まれ育った⾮正規滞在の⼦どもたちやその家族、他国であれば難⺠認定されたであろう⼈々等が、突如⽇本での⽣活を根こそぎ奪われる理不尽に苦しめられています。
政府の差別的政策に後押しされ、昨年 10 ⽉以降、外国⼈やイスラム教徒の⼈たちを排斥するデモや街頭宣伝が急増し、インターネット上にヘイトスピーチが氾濫しています。住居や駐⾞場を貸してくれなくなった、クレジット契約更新を断られた、クラスメートから「⽇本⼈ファースト」と⾔われたなど、⽇常的な差別も悪化しています。
しかし、「外国⼈が優遇されている」「外国⼈による犯罪が多い」というのは根拠のないデマです。⽇本には外国⼈に基本的⼈権を保障する法律すらなく、選挙権もなく、公務員になること、⽣活保護を受けること等も法的権利としては認められていません。医療、年⾦、国⺠健康保険、奨学⾦制度などで外国⼈が優遇されているという主張も事実ではありません。それどころか、住居移転の届け出義務違反の罰則は、⽇本⼈は 5 万円以下の過料、外国⼈は 20 万以下の罰⾦とされているなど法的な差別もあります。
ヘイトスピーチ、とりわけ排外主義の煽動は、外国⼈・外国ルーツの⼈々を苦しめ、異なる国籍・⺠族間の対⽴を煽り、共⽣社会を破壊し、さらには戦争への地ならしとなる極めて危険なものです。
だからこそ、⼈種差別撤廃条約は、締約国に対し⼈種主義的ヘイトスピーチを禁⽌し終了させ、様々なルーツの⼈々が共⽣する政策を⾏うことを求めています。
しかし、先の参議院選挙の際、政府や多くの政党は、逆に差別を煽る側に⽴ちました。他⽅、多くの報道機関は、各候補者の主張のファクトチェックを実施しました。また、神奈川新聞は、昨年 10 ⽉の川崎市⻑選挙において、⼤量の部落差別を繰り返してきた候補者を別扱いし、その差別的⾔動を批判しました。
私たちは、今回の選挙において、さらに排外主義煽動が⾏われ、外国にルーツのある⼈々が恐怖の下に置かれ、差別に反対する声を封じる暴⼒的攻撃が⾏われることを危惧します。選挙運動におけるヘイトスピーチは放置すれば⺠主主義⾃体が破壊されます。
そこで、総選挙にあたり、私たちは下記のことを求めます。
1. 各政党・候補者は、外国⼈に対する偏⾒を煽るキャンペーンを⾏わず、差別を批判すること
2. 政府・⾃治体は、選挙運動におけるヘイトスピーチが許されないことを徹底して広報すること
3. 報道機関は、選挙運動についてファクトチェックを徹底するのみならず、デマやヘイトスピーチもあたかも⼀つの意⾒のように並列的に扱わず、明確に批判すること
国籍、⺠族によって差別されず、誰もが⼈間としての尊厳が保障され、未来に希望を持ち、平和に⽣きる共⽣社会を作っていきたい。そのために、私たち⼀⼈⼀⼈が、選挙における差別の煽動を放置せず、声をあげることを訴えます。
2026 年 1 ⽉ 26 ⽇








