米国の暴挙、抑えるべきポイント
広告
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。イオ編集部は本日から業務再開です。
さて、ここからは正月早々起きたことについて。
1月3日、X(旧Twitter)のポストを眺めていると「米国がベネズエラを空爆」の文字と映像が流れてきて目を見開いた。
米軍はベネズエラの首都カラカスなど数ヵ所を空爆し、地上攻撃も展開。米国のトランプ大統領はSNS上で「マドゥロ大統領と妻は捕らえられ、ベネズエラ国外に空路で移送された」と公表した。「麻薬流入の阻止」を名目にしているが十分な証拠を示していない。米政権はマドゥロ大統領を米国内の法廷で裁く意向を表明している。
刻々と動く現状を前に、本日のブログでは背景知識と情報整理に努めたい。第1に、押さえるべき視点について、第2に、米国の内政干渉について、第3に、国際社会への影響についてのべる。
ベネズエラ情勢を読み解く視点
1.主権と自決権の侵害
何よりもまず、今回の米国の行動は、ベネズエラの主権とベネズエラ人民の自決権を侵害している。主権の尊重は、国連憲章(1945年)をはじめとする国際法の最も原則的な要項だ。いかなる「理由」があろうとも米国の行為は容認できず、国際社会への冒涜的行為である。

「Al Jazeera」の速報映像をキャプチャ
2.“戦争が始まったのは2001年”
ベネズエラへの米国の関与は昨年に始まったことではない。インドの歴史学者のヴィジャイ・プラシャドは2001年には米国のベネズエラに対する戦争は始まっていたと指摘する(※)。
世界最大の石油埋蔵量を誇り、その他の埋蔵資源も豊富なベネズエラ。「米国の裏庭」と呼ばれるラテンアメリカを米国が支配するうえで同国は欠かせない存在だ。
ベネズエラでは1980年代に新自由主義的な改革が本格化し貧富の格差が拡大。1999年に民主主義的な選挙で当選し大統領に就任したのがウーゴ・チャベスだった。かれは反米自主を掲げ、国営石油会社への統制強化と富の公平な分配、無償医療制度・農地改革などを実施する「ボリーバル革命」(「21世紀の社会主義」建設)を推進する。1999年に制定したベネズエラ・ボリバル共和国憲法の主権条項に基づき、2001年に炭化水素法を制定。そこから米国の「圧力キャンペーン」が始まったとプラシャドは話す。
01年には米国は全米民主主義基金(NED)などを通じて反政府勢力に資金を提供。02年には米国が裏で糸を引き、クーデター未遂事件が起こった。13年にはチャベスが亡くなり、マドゥロが同年の大統領選で初当選。チャベスの路線を継承するマドゥロ大統領に対しても圧力が続く。15年にオバマ米大統領は「人権侵害」を理由にベネズエラ当局者らの米国内資産を凍結するといった制裁措置を科す大統領令を発表した。19年は米国国務省筋の首謀のもとにクーデターが計画されるも失敗。同年、ベネズエラの海外の石油資産を押収している。
昨年7月頃から米国はマドゥロ政権が「麻薬テロ組織」を率いていると主張して圧力を加え、ベネズエラ沖で「麻薬運搬船」と見なした船を無差別に攻撃・乗組員を殺害した。また、12月にベネズエラからの石油タンカーの拿捕なども行っている。
野党指導者マリア・マチャドは米国による内政干渉を公然と支持する極右政治家だが、かのじょのノーベル平和賞受賞もまた、米国のベネズエラ攻撃に対する正当性を与えた。かくして、1月3日の蛮行は行われたのである。
「経済破綻や圧政」により、多くのベネズエラ人が国を離れたと説明されることが多い。事実、2013年にマドゥロ大統領が就任した直後に原油価格が暴落し、ハイパーインフレに見舞われたのは経済失政にも一因がある。しかし、米国による経済封鎖がベネズエラの供給力の著しい低下をもたらした要因であることも強調しておきたい。
米国の内政干渉
米国はこれまでも国際法無視の内政干渉を繰り返してきた。1962年のキューバ危機、1989年のパナマ侵攻、2001年のアフガニスタン侵攻、2003年のイラク侵攻など枚挙にいとまがない。「テロ」との戦いや「麻薬」との戦い、「人道」や「民主主義」など理由を掲げて介入し、親米政権の樹立をもくろむ。米国による政権転覆がなされた国が「民主化」するという幻想はすぐに捨てた方がいい。アフガニスタン、シリア…歴史は繰り返す。
3日の会見でトランプ米大統領は、「(ベネズエラで)安全で適切な政権移行が完了するまで、われわれが国を運営する」とし、同国の石油資源を利用していく旨を公然と語った。
先ほどの2日に公開されたプラシャドの記事から引用したい。「ベネズエラ問題は『民主主義』(使い古された空虚な言葉)についてではない。真の争点は、ベネズエラ国民が自国の石油・天然ガスを自ら管理する権利を持つのか、それとも米国の石油企業がベネズエラの資源を牛耳るのか、という国際的な階級闘争なのだ」。
米国がベネズエラの石油利権を得ることは、中南米における反米自主革命の柱に打撃を与えることを意味している。
国際社会への影響
米国がカラカスほか数ヵ所を爆撃し、マドゥロ大統領を誘拐する数時間前まで、中国の外交団はカラカスで大統領と会談していた。タイミングについても注視したい。米軍が2021年にアフガニスタンから撤退(敗走)して以降、米国は米中対立に注力してきた。昨年12月に発表した国家安全保障戦略では、「西半球での優位性を回復する」と謳っていた。
第三世界諸国への植民地主義戦争をこれ以上許容してはならない。
凋落する米国の「断末魔」はなおも続き、人類社会を巻き込んでいくだろう。米国や西側諸国の支持を受けたイスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイドも止まない。国際法の擁護と反帝国主義が今一度求められている。
本誌26年2月号の「気になるニュースQ&A」では、ベネズエラ情勢の背景知識を専門家に解説してもらう予定だ。24年10月号では「ベネズエラへの内政干渉、揺れるラテンアメリカ」と題して、朝鮮大学校外国語学部の林裕哲准教授に執筆いただいている。こちらもぜひ読み返していただきたい。(哲)
(※)“The US War on Venezuela began in 2001” Jan. 2, 2026 Vijay Prashad
https://peoplesdispatch.org/2026/01/02/the-us-war-on-venezuela-began-in-2001/
―参考資料
・“The United States attacks Venezuela and kidnaps its president in an illegal operation” Jan. 3, 2026 Taroa Zúñiga Silva I, Vijay Prashad
・ジャーナリストのフランク・バラトによるプラシャドへのインタビュー動画
(US bombs CARACAS and kidnaps MADURO ! What’s happening? With VIJAY PRASHAD.)
https://m.youtube.com/watch?v=YMuW1wDfG2g
・林裕哲(朝鮮大学校外国語学部准教授)「ベネズエラへの内政干渉、揺れるラテンアメリカ」、『月刊イオ』2024年10月号
・新藤通弘(ラテンアメリカ研究者)「緊迫するベネズエラ――トランプ政権による軍事挑発の背景」、『地平』2025年11月号
・新藤通弘(ラテンアメリカ研究者)「第4章 ベネズエラ、何が真実か?」、『混迷するベネズエラ 21世紀ラテンアメリカの政治・社会状況』(明石書店、2021年)








