アスナロ農園での「縁農」体験
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帰りに持たせてくれたたくさんの野菜たち
先日、連載の取材で千葉県野田市にあるアスナロ農園を訪ねた。
「縁農」をコンセプトに、農を通じて人と人がつながり合うことを大事にする同農園では、近年、東京都内や関東地方の朝鮮学校へお米や野菜を寄贈している。その交流のはじまりについては、26年2月号のイオに掲載される連載「ハムケ」を読んでいただければと思う。
今日のブログでは、取材当日に体験した「温かい話」を紹介したい。
農園は、東武野田線「愛宕」駅から車で10分ほどの距離にあるのだが、取材当日は、その往復の道のりを八木澤孝子所長が車で送り迎えしてくれた。
青森県のリンゴ農家の生まれで、村には6軒しか家がない田舎で育ったという八木澤所長。農園までの車中で、どんな家庭だったのかと尋ねると「両親と4姉妹、それに牛も育てていて。乳牛ももちろん雌だし、猫もわんちゃんも雌、そんな家庭ですよ!」といってお茶目な表情で笑った。

この時期はコメなどは収穫を終えており、味噌作り用の大豆などが園内のあちらこちらにあった。
八木澤所長たちが野田市内に拠点を置いて活動しはじめたのが2018年のこと。以降、とある出会いをきっかけに、同農園には、都内の朝鮮学校が収穫体験にやってきたり、その逆で、農園関係者らが、学校へ出向き出張味噌作りを行ったりしているという。
また米粉やてんさい糖を使用した無添加のお菓子や蒸しパン、狩ったブルーベリーでつくったブルーベリーソースやジャムなども販売しており、取材中にも、茶菓子として「さつまいもの菓子」を出してくれた。ほんのりとした甘みで優しい味だった。
このご時世、お米が貴重な時期だ。けれども「友好と連帯」の意を込めて、もとよりも田植えの面積を増やし、朝鮮学校へ寄贈する分を念頭において、米や野菜をつくっているというアスナロ農園の関係者たち。
「歴史を知らなかった私が、つながることができた大事な縁だから」。帰りの車中で、語った八木澤所長の言葉に、「縁農」の真の意味をみた気がした。

収穫体験をした朝鮮学校からのお礼の色紙を、八木澤さんら関係者たちが嬉しそうに紹介してくれた
そして冒頭に話した「温かい話」だが、取材の帰りに、農園の人たちが、はるばる取材にきてくれたからと、たくさんの野菜とブルーベリージャムを持たせてくれたのだ。また車に乗る直前には、「今日は冬至だから」と農園で育てていている「花ゆず」をその場で木から獲って手渡してくれた。まさに「縁農」を体感した心あたたまる出会いだった。
(賢)








