大阪中高高級部2年に密着~本編で伝えきれなかったこと~
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先週19日に発売された弊誌10月号では、連載「アオハル~朝鮮高校青春記」の最終回として大阪朝鮮中高級学校に通う高級部2年生たちへの密着取材記事を公開した。
今回のブログでは、誌幅の関係で紹介しきれなかった生徒や教員、同時期に教育実習で訪れていた朝鮮大学校の実習生の声を紹介しようと思う。(本編はぜひ10月号をご覧いただきたい)

1班の副班長を務める韓瑞芽さん。密着期間、写真撮影を同じクラスの金志優さんがサポートしてくれた。(写真は志優さん撮影)
同校に通う生徒の多くを占める自転車通学組。校門に入ってすぐの場所に駐輪場があるのだが、密着期間、まずはじめに感心したのは、この場を自発的に整理する1班の生徒たちと、それに向けるかれらの思いだ。というのも、密着初日、1班の教室へ向かうと、副班長の韓瑞芽さんが、あることを教えてくれた。
掲示板の一角に貼られた生徒たち一人ひとりの決意が書かれたポスター。現在、この決意を「一つひとつ実践している」最中で、駐輪場の整理もその一環なのだという。ポスターは「同胞たちの愛情で築かれた新校舎で一生懸命勉強します!」など新校舎を築いてくれた関係者たちへの感謝の言葉にあふれている。話ついでに仮校舎や新校舎での生活について聞くと、瑞芽さんはこう語った。

生徒たち一人ひとりの決意が書かれたポスター
「仮校舎での生活は、不便はあっても心の不便さはなかった」。新校舎へ拠点を移して以降、ずっと課題だった駐輪場の整理問題を「誰かに言われてやるのではなく、自分たちでやるから、皆が自然と続けられる」とかのじょはいう。その言葉通り、朝8時過ぎから学校に集まってきて黙々と整理する生徒たちは、日々のルーティンを当然事としてこなすようだった。

編入生の朴敬洙さんはムードメーカーだ
一方、クラスの全員が学級委員を担うという斬新な形を導入している2班。その理由について、「誰か一部の子がやるよりも皆が主体になれるから。ただ新しいやり方だから、意見の食い違いも生まれて…それでも本音で話し合いはじめている」と副班長の韓亜伶さんはいう。
「クラスのために」という思いが人一倍大きい亜伶さん。かのじょの最近の悩みは「部活動も、勉強も、朝青活動も全部100%でやりたいのに、身体がついていかない」こと。「完璧主義な自分が嫌になることもあるけど、まずは自分が何を一番に頑張りたいか答えをみつけたい」。そう語る亜伶さんの瞳には、迷いながらも成長しようとする決意が映っていた。

密着期間、ほとんどの授業でグループワークが導入されていた
初日に印象深かったことがもう一つ。放課後、2班の教室では、実習中の朝大生がホームルームを実施していた。すると、どこからか聞こえてくる「今日は悠世の誕生日~!!」の声。皆が手拍子をとりながら、バースデーソングを歌うなか、その中心には満面の笑みを浮かべる崔悠世さんがいる。取材を通じて生徒たちは「ハッキョが楽しい」と口をそろえていたのだが、かれらの言う楽しさを垣間見た瞬間だった。

授業中のようす
密着期間は、部活動にも帯同した。今年、悲願の花園出場を目指す朝高ラグビー部。部活後、先生方が気遣ってくださり、学校まで生徒たちと一緒にバスに同乗させてもらった。生徒たちは、自宅からの交通の便に応じて、練習場まで自転車で来る子、教員が運転する大型バスで来る子とさまざま。そのため部活後も学校に戻った方が自宅から近い生徒は、バスに乗り学校へ向かうのだという。

今年、悲願の花園出場を目指すラグビー部。2年生たちの活躍にも注目してほしい。(写真右は1班の班長を務める金志洪さん)
バスでの移動中、生徒たちは練習後だというのに大盛り上がり。話題は、7月に控えていた合宿前日の待ち合わせについてだ。
「集合時間に間に合う電車がない」「始発でも間に合わん」「●●ソンベ、家泊めてや」「おれんち来るか」。特別な話でもないのに、車内はこれだけで大爆笑の渦に度々包まれる。記者の左横に座った高3のマネージャーが「本当アホですよね」と笑い、右横に座った同じくマネージャーの全彗鮮さん(1班)も「いつもこんな感じなんです」とまた笑う。何気ない会話が温かい空気に包まれている。

大阪初級のグラウンドで行われたラグビー部の練習のようす
一方、体育館を使用するバスケ部やバレー部、舞踊部などに所属する生徒たちも、普段とは違った一面をのぞかせる。空手部の練習に真剣なまなざしで励んでいた金優見さんは、デザイン系の職業に就くことを夢見る。そんなかのじょは週1で通う塾の友人から、名前を珍しがられた経験を語ってくれた。
「自分という存在が珍しいから『韓国人なん?』って聞かれて、毎回どこから説明しようか悩む。その点でハッキョは自分が珍しい存在ではないから気持ちが楽」。「反抗期のピークは終わったと思う」とほほ笑む優見さん。中級部時代は悩みも多かったとのことだが、「いまは学校生活がすごく楽しい」。現在は空手と吹奏楽を兼部している。昨年の中央体育大会で惜しくも2位だった優見さんだが「今年は必ず優勝したい」と意気込んでいる。

体育の選択授業では、生徒たちの笑顔がはじける
朝大体育学部4年の金剛志さんは、約2週間にわたり高級部2年の生徒たちを担当した。筆者が同校を訪ねた頃は、既に実習期間の終わりが近づいていた。
剛志さんは今回の実習を通じて、南大阪初級で教員生活を送る母・高民愛さんが「この仕事のやりがいは生徒の存在であり、かれらが教員生活を長く続けられる理由」だと語っていた意味を肌身で感じたという。
「こんなにいい環境で現場の教員たちと働けたことが嬉しく、学びが多かった。クラスのために情熱を傾ける学級委員たちの姿に『民族教育の意義』もまた感じた」(剛志さん)。
一方、4年にわたり朝大で学生委員会の指導員を務めたのち、昨年、大阪中高に赴任した金宏城教員、そして金教員とともに高2の担任を担う朴昇鵬教員は、生徒たちが1年の頃から担任教員としてかれらの成長を見守ってきた。

模範紹介に立つ高晃徳さん
「皆で何かをやることに対し、その意味をたくさん考えるようになったと思う」と入学後の生徒たちの成長について朴教員は語る。また金教員は「生徒たちは自分たちの存在について、同胞社会とどのように関わっていくのかについて、いい意味で悩んでいるはずだ」としながら、今後も誠心誠意、かれらが成長できるようサポートしていきたいと話す。
そんな教員たちの清々しい言葉と表情を目の当たりにし、現場に足を運ぶことの大切さを改めて教えてもらった気がした。
密着最終日の朝は、高3から高1までが廊下に集まり、朝の集会が行われた。高晃徳さん(1班)が模範紹介に立つ。一斉に沸く2年生たちと、ラグビー部の先輩・後輩たち。少し照れくさそうにしながらも晃徳さんは、高級部の全校生徒に呼びかけた。
「校舎に入り一番最初に目が行くのが駐輪場。駐輪場の姿がまさに新校舎の姿です。だから皆で整理をちゃんとしていきましょう」
話し終えた晃徳さんに拍手が注がれる。

カメラを向けると笑顔とポーズでこたえてくれた2班の高成孝さん
そして学生委員長は最後にこう言って、集会を締めくくった。
「新校舎で学ぶ朝高生へたくさんの期待や関心が注がれている。大阪朝高生たちの頼もしい姿を広く見せていこう」
ポスターに記した感謝や決意、廊下に響く笑い声、部活後のバスで聴いたにぎやかな会話、そして個々に語ってくれた将来への悩みや葛藤。どれも生徒たちの日常だ。
そして、その瞬間瞬間に、かれらは、自分らしく輝き、未来へ歩むための力を蓄えているようだった。(賢)