久しぶりの取材で
広告
東京朝鮮中高級学校の生徒が地域の消防署から感謝状を受け取ったというニュースが、6月頭、同校のFacebookで紹介された(後日、朝鮮新報ネット版にも掲載)。
簡潔な内容だったため、「本人にもう少し詳しく聞きにいったらどうか」「加えて、その他の朝鮮学校生徒が感謝状を受け取った例があるか調べ、合わせて紹介したらどうか」と提案したところ、自分が取材を担当することになった。
以前このブログでも書いたが、私は現在イオの専任記者ではなく、業務委託という形で編集部から月ごとに仕事をいただいている。月2回のブログ「日刊イオ」、そして毎号の書評執筆が基本の業務だ。単発の行事などの取材は何度かしたが、あちこちに問い合わせて進める形の取材はかなり久しぶりだった。
ざっくりと「その他の朝鮮学校が感謝状を受け取った例」と書いたものの日本各地すべての学校を調べるとなると大変なので、今回は高級部に絞ってリサーチ。北海道、茨城、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、神戸、広島、九州…。現在10校となった朝高を並べながら思い出すのも懐かしい作業だった。
1校ずつ電話をかけて類似の出来事がないか聞く。かつてお世話になったソンセンニム(先生)が窓口だった場合は、合間合間に「イオの仕事は引き続きしているんでしたっけ?」「ブログいつも読んでいますよ」など近況を訪ねてくださることもあって、うっすらとした照れや申し訳なさ(数年前、現場にはきちんと説明や挨拶をしないまま専任を退いたという負い目があったので)と同時に、ありがたさも感じた。
そしてメインとなる東京中高高級部生徒の取材。事前に何度か学校と連絡を取り合い、日程を調整し、先週末に行ってきた。手元にある情報は、SNSと朝鮮新報に掲載された5~10行ほどのニュースのみ。日時、状況、心境、行為、経緯などを一つひとつ、本人から具体的に聞くことで、出来事の全体像が見えてくる。その感覚が久しぶりで、楽しかった。

取材ノートの文字の汚さは変わっていない
その生徒はボクシング部に所属しており、消防署から贈られた感謝状は部室にあるというので、写真は移動して撮ることに。写真を撮っていると、横で見ていたボクシング部のコーチ兼OB会会長が「ぜひボクシング部をうまく絡めて宣伝してください。写真も撮っていってください」と半ば有無を言わせない様子で部室の中に案内してくれたので中に入った。
一瞬、「うまく絡められるか?」という不安がよぎったが、こういう場合は面白がって流れに身を任せた方が思わぬ収穫があったりする。結果的に、該当生徒の姿が立体的に伝わってくるようなコメントと写真がとれた。どんな短いニュースも、周辺を掘り進めていけば必ず興味深いエピソードが出てくる。そのことを改めて実感した取材だった。
記事は月刊イオ8月号に掲載されます。(理)