しんどくなってもいいんだね
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中学生のとき、国語(日本の学校に通っていたので「日本語」)の授業で担当の先生がちょっとした心理テストを出してくれた。設問内容は覚えていないが、結果を聞いて軽くショックを受けたことを記憶している。そのテストで明らかになったのは回答者のストレス耐性。私は、“特にストレスを感じやすいタイプ”に該当していた。
それまでにも「ストレス」という言葉を耳にしたことはあり、だからなんとなく意味も知っていた。一方、これは大人たちの言葉なのであって自分には関係ないとどこかで思っていた。
しかし上記の結果を聞いて、初めて自分の中にもその概念が入ってきてしまったような気持ちになった。案の定、ストレス耐性がそんなに強くない人間として成長してきたように思う。クラスの中には“まったくストレスを感じないタイプ”だと診断された同級生もいて、うらやましく感じたものだ。
先日、YouTubeを開いたら興味深い動画が表示された。
絵本作家のヨシタケシンスケさんが、自殺予防に取り組むNPOとともに開設したプラットフォームについて紹介するニュースだ。プラットフォームの名前は「生きるのがしんどい あなたのための Web空間 かくれてしまえばいいのです」。
アバターで空間の中を行き来し、おばあちゃんのキャラクターに話を聞いてもらったり、つらい気持ちを不思議な生き物に食べてもらったり、電話やSNSで専門家に直接相談したりと、計9つのコンテンツを利用できるそう。
驚いたのは、ヨシタケさん自身が昔から“生きづらさ”を抱える当事者だったことだ。
自分がだめになる理由がなにもないんだけれども、なぜかすごく気持ちが沈んでしまう時がある。助けてほしいけど助けてくださいって言えないタイプなんです僕が…中略…人に助けを求めるのって怖いよね、難しいよねということを共有できるだけでも随分違うんじゃないかなって(動画より)
ヨシタケさんの本はイオの書評欄で何度も紹介されている。私も数作読んだことがあり、頭のやわらかさやクスっと笑えるような小さなユーモアに癒されてきた。肩の力が抜けていて、自由な人。そんなイメージしか持っていなかった。
動画には他のバージョンもある。ヨシタケさんが抱えるしんどさについて、より掘り下げた内容だ。幼い頃からすぐそばに大きく深いつらさがあったこと、その中で得た生きていくための自分なりの考え方などが話されており、すべてじっくりと視聴した。
冒頭で書いた心理テストのように、世の中にはストレスを感じやすい人と感じにくい人がいる。ヨシタケさんの話に強く共感する人もいれば、「そんな大げさな」と思う人もいるかもしれない。私はここまでのしんどさと共に生きてきたわけではないが、「分かる分かるその感覚」と頷く部分は少なくなかった。
ストレスやつらさ、生きづらさ、しんどさの濃度は人それぞれ。感じにくい人は感じにくい人の、感じやすい人は感じやすい人なりのコツや処世術が多様に言語化されれば、少し楽になったり、助かる人も増えるかもしれないなと動画を見ながら思った。似たような感覚を持っている人がいることを知るだけでも安心できる。(理)
●関連動画はこちら
●「かくれてしまえばいいのです」
https://kakurega.lifelink.or.jp/