トランプ氏銃撃事件で何が変わるのか
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米国のドナルド・トランプ前大統領が7月13日(現地時間)に米ペンシルベニア州バトラーで選挙演説中に銃撃を受け、右耳を負傷した。
このニュースは、トランプ前大統領は警護要員に囲まれて演壇を下りる際に星条旗を背景に支持者に向かって拳を突き上げる場面の写真とともに全世界をかけめぐった。この写真は、「暴力に屈しない強い指導者」としてのトランプ氏を印象づけ、支持者の間で結集の効果を生む象徴的写真となっている。このたび正式に共和党の大統領候補に指名されたトランプ氏にとって、今回の銃撃事件は図らずも2回目の当選への「追い風」になると見る向きもある。
今回の銃撃事件は既視感はあったが、とくに驚きはなかった。
銃撃されたトランプ氏が警備の不備を批判することはあっても、銃の規制へと向かう可能性はほとんどないだろう。トランプ氏は、11月の米大統領選をめぐって、バイデン政権が導入した銃関連の規制を撤廃すると公約し、全米最大の銃ロビー団体・全米ライフル協会(NRA)から支持を獲得している。銃による死者が年間4万人に達し、子どもの死因トップが銃というアメリカにおいて、トランプ氏は銃規制の撤廃を公約に掲げ、支持者による連邦議会襲撃を扇動した人物だ。今回の事件は、暴力を自らの権力基盤にすえた人物に、対外的にも対内的にも「暴力の総本山」たるアメリカの元大統領で再びその座につこうとする人物に、その暴力がブーメランのように返ってきただけ、という見方もできる。
もちろん、今回の銃撃事件を正当化したりほめたたえるわけではないが、今回の銃撃事件もこれまでの悲惨な事件と同様、暴力をより強い暴力によって押さえつけようとする勢力に利用されるだけで終わるのではないかと思っている。(相)