創立75周年! 神戸朝高で公開授業
広告
神戸朝鮮高級学校(1949年創立、許敬校長)75周年を記念した対外公開授業が5月18日に神戸市垂水区の同校で行われ、尼崎市、神戸市などの市議会議員、県内の朝鮮学校を支える会、大学生たち84人が生徒たちの授業や芸術公演を観覧した。来校者の半分が日本市民だった。
神戸朝高は民族教育の理解を広げるため2022年、23年度にも学校を一般公開してきた。
1時限目は、国語(朝鮮語)、日本語、生物基礎、物理、音楽、美術、体育などの授業が、
2時限目は同校が独自に取り組む「BECAUSE塾」(4コース9講座)が公開され、中国語、簿記、演劇、英語などの授業が関心を呼んでいた。
教育講演に杉山精一さん
続けて体育館では、「日本社会と民族教育~ソーシャルキャピタルと朝鮮学校」と題して「神戸朝高生とともに歩む会」会長の杉山精一さん(関西学院大学非常勤講師、教育学)が講演を行った。
杉山さんは、「日本社会では、在日朝鮮人の民族教育の意義が伝わっていない。外交、政治、ナショナルアイデンティティに吸い込まれてしまっているからだ」と伝えながら、「民族教育を守ってきた朝鮮学校の歴史と、朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちが学ぶ姿をいかに社会に発信していくのかが課題。皆さんの知恵をお借りしたい」と呼びかけた。
杉山さんは、「朝鮮学校とは、受け継がれるソウル、チャレンジするスピリット、人と人とをつなぐマインド―この3つを実践するハートを育てる学校です」と持論を展開。
大阪の高校無償化裁判で敗訴したとき、涙ながらに権利を訴える朝鮮高校生の姿、神戸朝高に3人の子どもを通わせた日本人の母親の思い、また自身のゼミ生を連れてきたときの学生の感想を伝えながら、「朝鮮学校には先生との関係、友達の関係を含めて、しっかりとした社会関係資本がある。この環境のなかで子どもたちが志を持ち、社会の評価もしっかり受けている」として、「近年の10年間で、卒業生の11人が弁護士資格を取得」「指定校推薦で大学に入学した子の大多数が、入学後の成績が上位30位以内」などと神戸朝高の「教育力」を紹介した。
講演後には同校の吹奏楽部、舞踊部によるミニコンサートが上演され、瑞々しい演奏や踊りに大きな拍手が送られた。
丹波篠山市で教員をしたのち、現在は兵庫県教職員組合の書記長を務める松浦明日香さん(49)は、「もっと知人を連れてくればよかった」と話しながら、「前のめりになりながら授業に参加している生徒たちの姿が印象的だった。今、教育現場では『教える』から『学びあう』ことが大事だと感じていただけに、隣の生徒とグループを組んだり、映像や写真などを駆使した視覚支援をしながら、学びやすい環境を作っている先生方の努力に感服しました」と語っていた。
また、真鍋修司・尼崎市議会議員(公明党)は、「日本は国籍が違う子どもたちに向けたインクルージブ教育が遅れている。日本は世界に向けて視野を広げていかなければならない。だからこそ、朝鮮学校の生徒さんたちがどんな思いでがんばっているのかを見なければならない。自治体としての責任を考えていきたい」と感想を話していた。
民族教育への理解、どう広げる?
公開授業であいさつに立った許敬校長は、「あるがままの朝鮮学校の姿を見て感じて、正しく理解してほしい」と来校者に切願しながら、「在日コリアンは日本社会の排外的な風潮によって生きづらさ、生き苦しさを感じています。高校無償化からの排除の問題、助成金の支給半減・停止は生徒数減少の要因のひとつであり、存続にも関わる問題になっています」と積年の悩みを吐露していた。
「本校は今年3月まで1万人を超える卒業生を輩出し、子どもたちのアイデンティティを育み、朝鮮半島と日本の架け橋になる人材を育てています。決して反日教育をしているわけではありません。こういったことを言わなくてはならないことに、もどかしい思いがあります」とも語った。
「朝鮮学校」「民族教育」への理解を広げるためには、地域の仲間が必要だ。
この日の授業参観には、「尼崎の朝鮮学校をささえる会」「朝鮮学校を支える宝塚市民の会」など各地で朝鮮学校を支える日本市民や県下の大学に通う日本の学生たちが同胞学生とともに訪れていた。
また、同校オモニ会のメンバーは、来校した日本市民のガイドを務め、「こども基本法」に則り外国人学校の子どもの学ぶ権利を求める署名を懸命に呼びかけていた。
今年4月18日に、創立75周年を迎えた神戸朝高では、6月5日にはチャリティゴルフコンペ、11月30日にはイオフェスティバルなど一連の75周年行事を企画している。卒業生たちが神戸朝高のテラスで焼肉を楽しめる企画もある。(瑛)