高麗博物館での伊藤孝司写真展に合計約540人来場
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高麗博物館(東京都新宿区)でのフォトジャーナリストの伊藤孝司さんによる写真展「平壌の人びと」が7月2日、最終日を迎えた。
これまで伊藤さんは写真展「平壌の人びと」を三重、東京、京都、愛知、大阪、埼玉、新潟、鳥取、岡山、愛知、奈良、北海道、神奈川、福岡、そして今回の高麗博物館(東京開催は2度目)での展示も含めて合計15回開催してきた。
5月3日から7月2日までの間行われた高麗博物館での展示は、総計約540人が足を運び、写真を通して朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)で暮らす人びとの姿、表情などを見て回るとともに、現在進行形で続く朝・日の課題、朝米の関係について、歴史的背景とともに考えるきっかけとなった。
前期の展示は『大きく変わった人びとの暮らし』と題し、特に人びとの暮らしに重きを置いて展示を行った。前期のギャラリートークについては、こちらで報じている。そして、後期のテーマは、『朝鮮で見た米国・日本との関係』。
伊藤さんは「朝鮮がなぜ核やミサイル開発を行わざるをえなかったのか。こういったところを歴史的に読み解く必要がある」という問題意識の下で写真を厳選し、後期の展示を行った。
この日行われたギャラリートークで伊藤さんは、現在の朝米関係を物語る写真を70年前の朝鮮戦争にさかのぼり説明。米国が朝鮮に対して跡形も残らないほどの空爆を行ったことに言及し、「朝鮮の若い人たちにも身内で亡くなった人が必ずいる。それによって、若い人たちの中にも米国に対して抱いている敵愾心、もう一度戦争が起こるのではないかという警戒感がある」と説明した。
2017年の朝鮮の軍事パレードと2018年のパレードの様相の変化を写真で解説した伊藤さんは「2017年は米国との軍事的緊張状態が高まりがあり、それまで未公表だったミサイルを公開するなど非常に軍事色の強いパレードになった」とのべた。一方、「2018年のはじめは平昌オリンピックの参加を決定し、南北関係も改善するのではないか、朝米関係も進展していくのではないかという期待があり、内容の変化があった」と話した。
伊藤さんは、朝・日の課題として朝鮮に残る日本人の遺骨、残留日本人、日本人妻のことについて説明した後、「日本政府は拉致問題を優先し、それまで課題となっていたことを何も言わなくなった」と話した。
大学院生の秋圭史さん(26)は朝鮮の政治について研究しており、友人からの紹介で今回ギャラリートークに参加した。秋さんは、「2019年に観光で一度朝鮮にも行ったことがあるが、パレードなどは観れなかったし、そういったところでの一人ひとりの表情を、写真を通じて見て取れて興味深かった」と率直にのべた。
写真展「平壌の人びと」は、日本のマスメディアでは見ることのできない朝鮮の人びとを映し出し、今なお残る課題について明かしている。伊藤さんは今後、写真展を広島や長野で行う予定だ。(哲)