学びが自尊心を育む
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今回も愛媛出張で聞いた印象的な言葉について紹介したい。取材したのは、女性同盟愛媛県本部の専従活動家を35年以上務めている金さん。県内の同胞女性を対象に、どのような取り組みをしているか訊ねた。
愛媛県では、文化セミナーや学習会、世代別の交流会、体操サークル、四国朝鮮初中級学校への支援を目的としたキムチ販売など、たくさんの活動を長年にわたって続けている。
中でも特徴的だったのは、女性たちの教養を高める学びを積極的に行ってきたという点だ。金さんが女性同盟専従の仕事をする上で、常に根底で意識していたのは「女性たちの地位向上と、そのためのレベルアップをすること」だったという。
「女性同盟は総聯の下請けやお使い係ではない。自分の値打ち、地位は自分たちで高めていかないと。いつも誰かに言われたまま動いていると、必死に働いてもしんどさだけが残る。女性たち自身がそのようにさせていたという面もある。軸がないといけない。女性たちも意識、意思を持って生きる、その手助けをするのが女性同盟の活動の一つだと感じて、一貫して大事にしてきました」
その背景には、自身の母親世代への思いがある。金さんは1950年生まれなので、50~60年代に現役世代だった同胞女性たちだ。「オモニも含め、上の世代はあらゆる面で分からないことが多く、学びたくてもその手がかりがない。もどかしそうな姿を見ていた」。
金さんが専従になってからは、フランス料理の食べ方講座、アナウンサーを呼んでの話し方教室など、同胞女性たちにさまざまな学びの機会を用意した。また、旅行へもたくさん出かけた。女性だけで旅行に行くことも難しい頃だったが、女性同盟という組織が企画することで各家庭から許可が下り、のびのびと楽むことができたそうだ。
同時に、そのようにして自主性、自尊心を育んだ女性たちが中心人物となって女性同盟の各活動の責任者となり、活性化させてきたと説明してくれた。
一方で、それから時代が流れ、現在の活動についての新たな難しさも語る。「今は簡単に旅行も行けるし知識だってついたし、昔に比べると財力もあるし、満たされている分、組織がなくてもやりたいことができてしまうんですね。どうやったら人を集められるか考えているけど難しい」。
そして「今の若い世代の課題はその世代が解決しなきゃいけません。その世代が方法論を探して、“核”となる人を捕まえないといけない。若い世代に任せてこそ新陳代謝が起こる」と結んだ。
女性の地位は女性たち自身が作っていくこと、学びによって意思を育んでいくこと、そして今の世代の方法論は今の世代が見つけるしかないという言葉…。常に考え、学び、動きながら自身の軸を鍛えてきた金さんだから言えることだと感じた。一つひとつに目を開かされるような、気づきに満ちた話だった。(理)