個人的、最近の映画事情③ずるいよ、ハリウッド
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コロナ禍で公開が滞っていた海外映画が、昨年の6,7月あたりから一気に公開されだした。
昨年まで記者が持ち回りで映画評を書いていたこともあり、昨年は仕事とプライベート合わせ75作の映画を観た。そのうち3作は何度もリピートしていたので、新旧、再鑑賞合わせると、100回近く映画を観たことになる。
これまで観た映画の中からいくつか紹介しよう…と思ったが、昨年から今年にかけて、ハリウッドのシリーズものがバンバン出てき、シリーズの幕開けや終幕に立ちあったので、個人的な感想を書きたい。多少マニアックな部分はスルーしていただいてもかまわない。笑
●『DUNE/デューン 砂の惑星』(オススメ度★★★★★)
舞台は西暦10191年。人工知能反乱後、人類は宇宙に帝国を築き、惑星や恒星を公家が統治していた。長年に渡り惑星アラキス(別名デューン)を統治支配していたハルコンネン家は、宇宙の皇帝から、デューンからの退居を命じられる。
同時に、宿敵のアトレイデス家がデューンを統率することになったが、それは皇帝の巨大な陰謀の一部だった。アトレイデス家の公爵の息子・ポールが、超能力を持った、いわゆる“選ばれし者”で、宇宙のために立ちあがる―という話。
正直なところ、見る前の期待値は低く、ティモシー・シャラメが主演という理由で見たが、想像以上におもしろかったし、人生初のIMAX体験だったのでとても興奮した。
原作は1960年代に出たSF小説のシリーズで、『スターウォーズ』や『マトリックス』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』にも影響を与えた、いわばSF映画の原点的な作品だ。
原住民や「スパイス」、女性の秘密結社、超能力などいろいろな設定があるが、『スターウォーズ』を知っていれば、それなりに理解できるはずだ。序章である本作、とにかく風呂敷を広げていたので、次回作が『DUNE』の成功の鍵を握っていると思う。
原作は1965~85年まで、6作にも及ぶ大作。全シリーズのトリロジーが作られていくのかはわからないが、幕が上がったばかりなので、見始めるなら今!ということで、オススメ度5。
●『マトリックス レザレクションズ』(オススメ度★)
1999年に公開し、「映像革命」を起こし一世を風靡したマトリックスシリーズ。流行りぶりは覚えているが、当時5歳の私がこの映画を観るはずもなく…。本作の公開に乗じ、一から観てみた。
仮想現実と真実の選択―…と、よくもこんな脚本が思いつくなぁと脱帽。「エグザイル」「ウイルス」など、コンピューターの“エラー”を擬人化するという発想がすごい。そして、2種類のピルを選ばせる際、サングラスの左右にそれぞれのピルを反射させて映すなど、表現のしかたがとてもおもしろい!そして、今見ても古さを感じさせない映像技術。世界が熱狂したのも納得だ!
と、好スタートを切ったが、本作は「…オール焼き直し?」というぐらい、過去作のストーリーを踏襲しまくっていた。面白味を感じなかったのでオススメ度1。
一応フォローをするなら、シリーズに一貫しているテーマは「選択」だ。そして、ミソジニスト(女性蔑視者)が女性にコテンパンに仕返しされる。監督のウォシャウスキー姉妹は、シリーズの1作目発表当初、兄弟だったので、女性になることを「選択」し、性別適合手術を経た姉妹の葛藤や哲学が、台詞やストーリーに散りばめられているのでは―と浅はかな考察をしてみた。
●『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(オススメ度★★★★)
これはネタバレ厳禁なので、口が滑らないように、指が滑らないように慎重にタイピングしている。
そもそもスパイダーマンは、元祖のサム・ライミ版、マーク・ウェブ版のアメイジングシリーズ、そして現在公開中のジョン・ワッツ版のホームシリーズがある。
公開中の映画では、過去作のヴィランが総出するという情報があった。アメイジンシリーズは見ていなかったし、サム・ライミ版も相当昔の記憶なので、一から観て、本作に臨んだ。
ホームシリーズは、アベンジャーズというヒーロー集団の物語の一部なので、なぜ主人公がスパイダーマンになったのかというオリジンは描かれていない。
筆者は、ハリウッドのSFやアクション映画が次々とリブートされるたびに「またか…」という気持ちになっていたし、特にアメコミのヒーローものはシリーズが多すぎて、「その手には乗らないぞ」と高を括っていた(と言いつつ、マーベルシリーズもアイアンマンやバットマンなど、ところどころかじっている)。
アメイジングシリーズは、制作中にソニーとマーベルが権利争いをめぐって喧嘩別れしているので、3部作中2部作目で終わっている。この流れもあり、どう収集をつけるのか見てみようじゃないかという偉そうな心構えで鑑賞したのだが、かなりおもしろく、起承転結の「転結」部分は、ニヤニヤが止まらなかった。笑
●ここがずるいよ、ハリウッド
正直、スパイダーマン含めマーベルシリーズは、子供だましともとれる内容だ。
今回のスパイダーマンも俯瞰して内容を見ると、ヒーローとしてどうかと思うし、ファンサービスムービーだったとも思う。しかし、大金がつぎ込まれたキャスティングと映像技術に、子どものみならず大人までのめり込んでしまう。
そして、スパイダーマンのホームシリーズの主人公は、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』という作品でMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に参戦している。トム・ホランド演じるスパイディーの誕生がそこで描かれている(らしい)し、公開中の映画では魔術師が大きなカギを握っており、この魔術師・ドクターストレンジの新作も製作されている(しかも監督は、元祖スパイダーマンのサム・ライミ!)…となると、魔術師シリーズも前作から観なくてはいけない―そう、数珠つなぎのように、どの作品にもファンを連れて行くのだ!
今回のマトリックスも然り、リブート、リメイクを繰り返してハリウッドは潤っていく。映像技術とキャスティング、そしてシリーズの随所にファン心をくすぐる演出や台詞が入っている。MCUをかじっている筆者の、「観なくては精神」がことごとく刺激されている。ずるい…本当にずるい!
これまでマーベルシリーズをスルーしていた筆者だが、もうすっかりハマってしまった。
そんなハリウッドに言いたいことは…これからもシリーズ化するのであれば、安易なメタフィクションやパロディに走らず(そして、喧嘩別れで途中で作品を終わらせず)、しっかりストーリーを作ってください、必ず観に行きます。(蘭)