名古屋・栄で56回目の路上ライブ/朝鮮高校無償化行動・あいち
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「高校の授業料無償化は、日本の教員たちの戦後から一貫した目標でした。
しかし、残念ながら朝鮮高校だけがこの無償化から除外されました。
日本政府と文部科学省は、差別行政を10年も続けている。
差別はどんどん広がっています。私たちは怒っている。懸念している。
『子どもたちにいじめはいけないよ』、と言いながら、文科省は朝鮮高校だけを無償化制度から除外しています。
この差別を放っておくのは日本の恥、日本人として恥ずかしく思います。
これでオリンピックを東京で開けますか?」
元教員で社民党愛知県連合副代表を務める平山良平さん(72)の第一声で、56回目の路上ライブは始まった。
「こどもにえがおを 朝鮮高校無償化行動・あいち」が、2017年9月から名古屋市栄駅近くの駅ビル前で続けてきた路上ライブ。毎月第2、第4金曜日の18時半から行われている。
人業劇団ひらき座の団員たちが、チンドン屋に扮した衣装に身を包み、エレクトーン、サックス、アコーディオンなどを奏でながら、無償化制度から朝高生がはじかれていることを道行く人たちにアピールする。
東京・虎ノ門の文科省前の金曜行動で歌われている「声よ集まれ歌となれ」、韓国で生まれた「ウリハッキョは私たちのふるさと」、「イマジン」「聖者の行進」など流れる歌はバラエティーに富み楽しい。
飲食店や商業施設が集まる栄。笹島日雇労働組合に連なるメンバーが、行きかう若者や帰路を急ぐ勤め人たちに、チラシを根気強く配り、ひらき座の歌声とアピールが続くこと1時間。
最後は「アリラン」と「ふるさと」の輪唱で締めくくられた。
路上ライブが始まったきっかけは、2013年2月に始まった愛知無償化裁判だった。
朝高生が学ぶ権利を奪われる「痛み」が日本社会の問題として伝わらないもどかしさを感じていたある原告保護者が、東京の金曜行動や大阪の火曜行動のように、日本社会にアピールできる「何か」ができないかと発案したところ、「あなたを一人で立たせられない」と手を挙げたのが、人業劇団ひらき座代表の川瀬まゆみさん(61)だった。
「戦前生まれの両親は、あからさまにアジアの人を差別していました。私も学校で歴史を習うことがなかったから、在日の人たちについては何も知らなくて、演劇を作る過程で学びながら知りました。ただ知識だけではダメね。友だちとして、その人の暮らしを知らないと。一緒にその国の食べ物を食べたりね」
沖縄の辺野古新基地建設の街頭アピールに立つこともあるという川瀬さん。
「沖縄の問題は関心が広がっているのに比べ、在日朝鮮人の権利問題に、この社会の関心がなかなか向かないのは、根深い差別意識があると思う」
保育士の母親と3年間、路上ライブに参加し続けてきたMさんは、中学3年生。トランペットの演奏で路上ライブに花を添えていた。自宅から30分電車に乗って、毎回ライブに参加している。
この日も、「通っている公立中学校では韓国、中国の友だちと仲良くしている。大人の社会も仲良くしてほしい」と素朴な思いを伝えていた。
Mさんに、「路上ライブを続けてきて思うことは?」と聞くと、「チラシを受け取ってくれる人がだいぶ増えました。外国人に多いですが、足を止めて話を聞いてくれる人もいる。反応がいいときもあります」
「日本人の中でも、人によって違うところがあるし、自分と違うところを見られるようになれば差別がなくなっていくと思います」と優しい笑顔を見せてくれたMさん。
好きな楽器を演奏しながら暮らしの一部としてライブが溶け込んでいる―自然な姿がすがすがしかった。(瑛)