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大阪朝鮮学園逆転敗訴の不当判決―大阪無償化裁判控訴審

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 大阪朝鮮高級学校を高校授業料無償化・就学支援金支給制度の対象としないのは違法だとして、同校を運営する大阪朝鮮学園が国を相手に不指定処分の取り消しおよび指定の義務づけを求めた訴訟の控訴審判決が9月27日、大阪高裁で言い渡された。
 結果は、昨日速報で伝えたように、原告である朝鮮学園側の逆転敗訴。大阪高裁は、原告全面勝訴となった昨年7月28日の地裁判決を取り消し、原告の訴えを退けた。

 判決の主文の内容は、
 ①原判決を取り消す
 ②本件訴えのうち、規定ハに基づく指定の義務付けを求める部分を却下する
 ③被控訴人(朝鮮学園側)のその余の請求(不指定処分の取り消し)は棄却する
 ④訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする、というもの。
 高橋譲裁判長は、大阪朝鮮高級学校は在日本朝鮮人総聯合会(総聯)から「教育の自主性をゆがめる不当な支配を受けている疑いがある」として、国の不指定処分を違法として同校を就学支援金支給の対象に指定するよう命じた1審判決を取り消した。判決は、▼総聯傘下の出版社が発行する教科書が使われている、▼総聯が学校に財政的支援をしている、▼幹部レベルでの人事交流がある、ことなどを挙げて、「教育の目的を達するために必要な限度を超えて朝鮮総連の介入を受けている」と指摘。朝鮮学校で就学支援金の管理が適正になされない恐れがあることにも言及した。
 また、就学支援金支給の対象に指定するかどうかは「教育行政に精通する文科大臣の裁量」だとし、教育基本法が禁じる「不当な支配」を受けている疑いがある以上、朝鮮学校を対象から除外した国の判断は不合理ではなく、裁量権の逸脱・乱用もないと結論づけた。
 1審判決が「教育の機会均等とは無関係な政治的判断に基づくもので、違法・無効」と断じた規定ハ削除については判断を回避した。

 判決が言い渡された202号法廷では、判決の主文を読み上げて退出しようとする裁判官に、傍聴席に陣取っていた朝鮮学校の保護者や支援者らから悲鳴にも似た抗議の声が投げつけられた。裁判所の外でも、朝鮮学園側の逆転敗訴の報が伝えられると、生徒や保護者、教職員、支援者から憤りの声が上がった。

 

 日本全国の5つの地裁(東京、愛知、大阪、広島、福岡)で起こされた朝鮮高級学校無償化裁判で控訴審判決が出たのは今回の大阪が初。これまで東京、愛知、広島では1審で原告敗訴、福岡(九州)では1審が継続中だ。ここまで唯一、朝鮮学校側が勝訴した大阪の1審判決がこれで覆された。
 判決後の記者会見で原告の朝鮮学園側は、高裁判決について「著しく不当」として上告する意向を表明した。

 と、ここまでは各種報道ですでに伝えられている通りだ。
 昨日の控訴審判決について詳細に検討することは現時点で難しいが、本エントリでは、昨夕の報告集会であった弁護団からの説明も参考に、今回の判決の概要を記して本判決の不当性を理解するうえでの一助としたい。
 まずは、昨年7月28日の1審判決を振り返る。
 本件訴訟における請求の趣旨は、
 ①文科大臣が原告に対して2013年2月20日付でなした本件規則第1条第1項第2号ハ(規定ハ)に基づく指定をしない旨の処分を取り消す(取り消し訴訟)
 ②文科大臣は原告に対して、大阪朝鮮高級学校について規定ハに基づく指定をせよ(義務付け訴訟)
 ③訴訟費用は被告の負担とする、の3つ。
 昨年7月28日の一審判決では、この3つがすべて認められ、原告・朝鮮学園側の全面勝訴が言い渡された。国を相手取った行政訴訟で原告側の全面勝訴判決が出るのは異例のことだ。
 主な争点は、①不指定処分の違法性(朝鮮高校を就学支援金の支給対象に指定する根拠規定であるハを削除したことの違法性)、②指定の要件を満たすか(規程13条適合性)の2つ。争点①に関して判決は、文科大臣は高校無償化法の趣旨である「後期中等教育段階の教育の機会均等」とは無関係な外交的、政治的判断に基づいて規定ハを削除した、これは法による委任の趣旨を逸脱するものとして違法、無効であると判断した。
 争点②は、朝鮮高校が「法令に基づく適正な学校運営」について定めた「本件規程13条に適合すると認めるに至らなかった」とする国側の主張が妥当かどうかというもの。これについても判決は、大阪朝鮮学園は▼私立学校法に基づいて財産目録、財務諸表が作成されている、▼理事会も開催されている、▼大阪朝高は大阪府の立ち入り検査でも法令違反の処分はなし、という3点をもって13条適合性は立証されているので、ほかに「疑念を生じさせる特段の事情がない限り、13条適合性が認められる」とした。そして、「特段の事情」に関する国側の主張を退け、朝高は規程13条の要件を満たしていると認めた。
 その後、昨年12月から始まった控訴審において、国側は、教育基本法の抽象的規定を数多く持ち出して行政裁量(行政が自由に判断できる余地)を広げつつ、朝鮮学校に影響力を行使する総聯が反社会的な活動を行っているかのような印象を与える主張・立証をしてきた。一方の朝鮮学園側は、国側の主張に反論しながら、高校無償化法や教育関係法令を指摘し、これらの法は文部科学大臣に学校選別における裁量を与えていないので、団体との関係を理由にした本件不指定処分は違法であり、原判決を維持すべきと主張してきた。

 そして今回の控訴審判決。1審判決を覆すために動員された理屈は、やはりというべきか、国側が不指定の理由としてこじつけで持ち出してきた「規程13条適合性」(「不当な支配」)の問題だった。
 1審判決では争点①(規定ハ削除の違法性)から順に判決理由がのべられたが、控訴審判決では争点②(規程13条適合性)→争点①の順番で理由がのべられている。規程13条適合性から理由が書かれているというのは、広島裁判や愛知裁判での判決とも共通する点だ。
 控訴審判決は、規程13条適合性の判断にあたっては教育内容が教育基本法の理念に沿ったものであるかどうかも考慮すべきと判断した。また、地裁判決の争点②にあった「『特段の事情』のない限り、規程13条適合性が認められる」という部分について、「特段の事情」という高度な立証責任を国に課すべきではなく、「相当な根拠」で足りるとした。
 規程13条適合性の判断における文科大臣の裁量についても、「不当な支配」に該当するか否かの判断を文科大臣が下してもいい(ただし、広大な裁量はない)とした。一審判決は、不当な支配をする可能性のある文科大臣にはこのような裁量はないと言っている。
 総聯と朝鮮学校との関係については、教育内容や人事面で「不当な支配」があったと判断。その理由としてのべられているのは、▼総聯が組織的に朝鮮学校を指導するという関係が成立している、▼総連と学校との間で幹部レベルの人事交流があり、人事面における関係性が強い、▼朝鮮学校の教員や生徒が総聯の傘下団体に加盟している、▼傘下の事業体が発行する、朝鮮の指導者を賛美する教科書を使用させるなど総聯が学校の教育内容に対しても強い影響力を行使している、▼学校に対して財政的な支援をしてきている、などだ。
 控訴審判決は、上記の事情に照らして考えれば、大阪朝高は総聯から「教育の目的を達するための必要性、合理性の限度を超えて介入を受け、教育の自主性をゆがめるような支配を受けている合理的な疑いがあるというべきである」と結論づけた。「学校に対して総聯の一定の関与は認められるが、それは協力関係ともいうべきものであり、学校は運営の自主性を失っていない」と歴史的経緯も含めて判断した1審判決とは対照的な判断が下された形になった。
 そのうえで判決は、大阪朝高が総聯から「不当な支配」を受けていること、財政面で就学支援金の管理が適正に行われないことを疑わせるに足りる相当な根拠があったものと認められるので、法令に基づく適正な学校運営という観点からして規程13条適合性があるということはできない→大阪朝高が規程13条に適合すると認めるに至らないことを理由とした不指定処分が不合理なものということはできず、これについて文科大臣の裁量権の逸脱・濫用があるということもできない、本件不指定処分は違法とは言えない、とした。
 今回の訴訟の最大の争点といえる①(規定ハ削除の違法性)は、広島や東京、愛知での判決と同じように、争点②の妥当性が認められたので判断をする必要がないという理由で判断が回避されてしまった。
 報告集会で弁護団の金英哲弁護士が指摘したように、今回の判決は「行政訴訟において国を勝たせる典型的な結論ありきの判決」といえるだろう。(相)

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