東京無償化裁判第9回口頭弁論
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62人の東京朝鮮高級学校生が無償化制度への適用を求めた東京無償化裁判第9回口頭弁論が3月2日、東京地裁で行われ、281人が列をなした。6日に同校を卒業する高級部3年生たちがほぼ全員参加、かれらに傍聴席を譲るオモニたち、日本市民の姿が印象的だった。
この日、被告・国側から第5準備書面が提出された。 前回の第8回で原告側は「規定ハ」の削除という政策決定を示した文書の開示を国側に求めていたが、国側からいくつかの書面が任意開示された。
なかでも注目されるのが、◇省令改正に関する決済原義と◇各地の朝鮮高校の不指定に関する決済原義。文科省が作成した「省令改正に関する決済原義」には、規定ハを削除する理由が記され、2012年12月28日の閣僚懇談会の資料が添付されていた。この懇談会とは、総理大臣、拉致問題担当大臣、文部科学大臣の3人が朝鮮高校を排除する方向性を確認したもので、法律を遵守すべき首相や文科大臣が、差別を意図的にリードしたことがうかがえるものだった。早い話、時の権力者が、「朝鮮学校が気に食わないから就学支援金は出さないぞ。面倒だから、その法律をなくしてしまえ」と考え、部下に命令し、法律をなくしてしまった―。こんな人をバカにした話があるだろうか。
今裁判で原告の朝高生たちが訴えていることは、朝鮮高校生に就学支援金を支給するための根拠規定となっていた「規定ハ」を削除した国の違法性だ。
規定ハの削除は、2012年12月末に第2次安倍政権が発足した後、朝鮮高校を外すために政治的に行った違法なものだ。「政治的」というのは、法律にのっとることなく、国際情勢や法律を無視した独断によって決めることをいう。もちろん、国はこの裁判で「政治的であること」を隠すために、「朝鮮高校が規定ハに認めるに至らなかった」「朝鮮学校が総聯の不当な支配を受けている」などと、朝鮮高校側に責任があったように議論を誘導している。しかし、化けの皮がどんどん剥がれてきたことが証明されつつある。
閉廷後、参議院議員会館で報告集会が行われた。国の準備書面について解説した李春熙弁護士は、「国は朝鮮高校の申請を受けきちんと審査してきた、朝鮮高校は無償化法の要件を満たしていないというが、これは明らかなウソだ。大本を辿ると、国は審査会の途中で審査を打ち切り、結論ありきで朝鮮学校をはずした。12月末の総選挙後に直ちに朝鮮学校排除に着手し、規定ハ削りを提議したことは誰も争うことができない事実だ」と断じた。
次回期日は、5月25日の11時から東京地裁の103号法廷。原告側弁護団が国の第5準備書面に対して反論する。弁護団は次回弁論で「証拠を出し切る」というほどの意気込みを見せており、専門家の意見書、証人尋問と押し進め、国を徹底的に攻めていく。
報告集会では3人の東京朝鮮高校生と保護者の金順愛さん、無償化連絡会の長谷川和男さんが発言した。
無償化差別が始まって丸6年。東京朝高は無償化差別が始まり6度目の卒業式。卒業生たちは無念の思いで、母校を後にする。
高3のHくんは、「本来はやらなくてもいい裁判だと思う。学ぶ権利は平等にもっているはず。日本の生徒とはルーツも国籍も違うが、権利を訴えるため、高3みんなで闘ってきた。日本政府は差別を強めているように感じる。長い闘いになると思うが必ず勝ちましょう」としっかりと語った。
また、日本での人種差別撤廃推進法の制定に取り組む師岡康子弁護士が講演に立ち、2007年以降、深刻さを増すヘイトスピーチ、ヘイトクライムの動きを止めるためにも、今国会で法律を制定する必要があると主張した(瑛)。