原作との対比でみる『TOKYOタクシー』
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先日、山田洋次監督の最新作『TOKYOタクシー』を劇場で鑑賞した。
監督へのインタビュー取材に先立って、11月21日の公開初日に鑑賞した。本作は2023年日本公開のフランス映画『パリタクシー』を原作としているので、こちらはのほうは『TOKYOタクシー』鑑賞後に某定額制動画配信サービスで観た。
本作のレビューはさまざまな媒体で数多く出ているので、ここでは公式サイトに掲載されているあらすじを引用するのにとどめたい。
毎日休みなく働いているタクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)。
娘の入学金や車検代、家の更新料など次々とのしかかる現実に、頭を悩ませていた。
そんなある日、浩二のもとに85歳のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)を東京・柴又から神奈川・葉山にある高齢者施設まで送るという依頼が舞い込む。
最初は互いに無愛想だった二人だが、次第に心を許し始めたすみれは『東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがあるの』と浩二に寄り道を依頼する。
東京のさまざまな場所を巡りながら、すみれは自らの壮絶な過去を語り始める。
たった1日の旅が、やがて二人の心を、そして人生を大きく動かしていくことになる――
このエントリでは、作品の内容についてではなく、原作のリメイクという観点から感じたことをいくつか書き記したい。
『TOKYOタクシー』は原作の骨格をそのまま維持している。ストーリー上の大きな改変はなく、人物設定も時代設定もほぼ同じ。しかし、原作と『TOKYOタクシー』を比べると、作品から受ける印象の違いは小さくない。
これは、多方面ですでに指摘されていることだが、ストーリーはタクシー運転手と客の一日の交流を描いた作品(偶然一日をともにしただけの他人同士が、深く交流するうちにやがて互いの人生が大きく変わっていく)というある種の普遍性を持つ物語であり、作品の舞台を違う都市や国(文化圏)に置き換えても成立する物語の構造になっている。であるのでかえって原作をリメイクする側の手腕が問われることになる。
山田監督は『パリタクシー』という作品を東京(日本)の文脈にどのように落とし込んだのか。原作の足りない部分をリメイクではどう補ったのか、また、逆に原作と比べて物足りない部分があるとすればどこなのか。原作との対比の中で『TOKYOタクシー』という作品を深く味わいたいなら、原作を鑑賞してから劇場へ足を運ぶことをお勧めする。
山田洋次監督のインタビュー記事は17日に発行予定の本誌2026年1月号に掲載される。『TOKYOタクシー』には、ヒロインの初恋の相手として在日朝鮮人の青年も登場するということで筆者の周囲でも話題になっているが、なぜこのような設定にしたのかについてもインタビューで明らかになっている。
1月号は新年号ということで誌面も大幅リニューアル。新連載も盛りだくさんで、表紙デザインも変わる。お楽しみに。(相)








