高校無償化は当然の権利/大阪地裁勝訴の意義見つめる弁護士フォーラム
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大阪無償化裁判を闘った丹羽雅雄弁護団長(右)と李承現弁護士(左)

フォーラムの前には大阪中高の公開授業と生徒たちによる芸術公演が行われた
「朝鮮学校を支援する全国弁護士フォーラム2025大阪~大阪地裁勝訴判決を振り返り、朝鮮学校への無償化制度適用を実現する~」(主催:同実行委員会、協賛:朝鮮高級学校無償化支援を求める連絡会・大阪)が11月22日に大阪朝鮮中高級学校(大阪市)で行われ、日本各地で無償化裁判を闘った弁護士や同胞や日本市民、大阪府議会議員ら約500人が集まった。
当時、裁判に関わった弁護士が発案し、今年で4回目を迎えるフォーラムでは、無償化裁判のなかで唯一の勝訴となった大阪地裁判決の意義を見つめるとともに、「敗訴」を強いた官製ヘイトや司法の問題点を構造的に振り返りながら、朝鮮学校に通う子どもたちがあたりまえに「普通教育=民族教育」を享受できる日をたぐり寄せるための方途を探った。
フォーラムでは、2013年から始まった高校無償化裁判(5ヵ所)で初めて勝訴判決を勝ちとった大阪地裁判決日(2017年7月28日)の映像が流れる場面があった。
…20人の大阪朝鮮高級学校(当時)の女生徒さんが傍聴されていましてね。歓喜の涙ですよね。我々は拍手したり立ち上がってね。傍聴席との垣根がないんですね。共通の思いを全体で表した空間だった。一瞬ですけどね。一生忘れられない、そういう空間でした…(丹羽雅雄弁護団長)
地裁前で涙を流しながら抱き合う同胞と日本市民の映像がスクリーンいっぱいに広がる。
「今までたたかってよかった」と笑顔で涙する朝高生の姿が「あの日の感動」をよみがえらせ、参加者の涙を誘った。
全国5ヵ所で戦われた無償化裁判は、大阪地裁判決以外はすべて敗訴。大阪無償化裁判も敗訴に終わり、5ヵ所すべてで司法が国の差別を容認する不当判決が下された。

丹羽雅雄大阪無償化裁判弁護団長
丹羽弁護団長は大阪地裁判決の意義について、下村文科大臣による「規定ハ削除」が、教育の機会均等の確保と無関係な外交的、政治的判断に基づいており、違法であると明確に判断し、朝鮮学校の意義について母国語と母国の歴史及び文化についての教育が民族的自覚及び民族的自尊心を醸成する上で基本的な教育であると判断した点にあると指摘。また無償化除外が差別であるとする国際人権委員会の日本政府に対する勧告、21世紀の脱植民地主義の国際的潮流に適合する判決だったと意義づけた。
続けて差別排外主義を先導する極右ポピュリズム政党が台頭している現在の日本の政治、社会状況の中で、「朝鮮学校を守り、発展させ、民族教育権の保障を確立することは、日本の加害の歴史の清算であり、さらには脱植民地主義、脱冷戦と平和を確立すること、すべての子どもたちの尊厳と平等を築き合える重要な基盤となるものと考えている」とのべ、さらなる繋がり、連帯を作り出そうと呼びかけた。

金英哲弁護士
フォーラムでは、金英哲弁護士が「大阪での無償化裁判の経緯について」、申惠丰・青山学院大学教授が「無償化法と国際人権法について」、前川喜平・元文部科学省事務次官が「無償化法成立の経費について」講演した。
大阪は子どもを矢面に立たせない、大人が全面に立つべきだとの思いから国賠訴訟を選択。李弁護士は弁護士、支援者、学園の三者が勉強会を始め、国側が教育基本法16条の「不当な支配」論を持ちだしては産経新聞や公安調査庁の資料をもって朝鮮学校のイメージダウンをはかったことに対抗し、朝鮮学校の実情を伝える映像や当事者の悲痛な思いを伝える陳述書やアンケートなどを準備し、闘ってきたと当時を振り返った。

2部はパネルディスカッション。大阪高裁や東京高裁で判事を歴任した岡口基一さん、前川元事務次官、申教授が登壇した。元判事、元行政官、国際法の専門家に、司会者の李承現弁護士(大阪無償化弁護団)がストレートに疑問をぶつけ、大阪地裁判決の意義と国の根深い朝鮮学校差別を浮き彫りにしていった。

李弁護士「前川さんにお伺いします。国はどうして規定ハ(朝鮮高校を認定するために根拠規定)を削除したんでしょうか?
前川元事務次官「朝鮮学校を狙いうちするために削除しました」
李弁護士「拉致問題がなかったら規定ハは削除されず、朝鮮学校は無償化に適用されていたのでしょうか」
前川元事務次官「拉致問題がなくても他のミサイル開発や核開発など他の問題を持ちだしてヘイト行為をすることは十分にありえたと思います」
岡口元判事は、「国が朝鮮学校を無償化から排除した理由が2つあったが、これはこじつけのようなありえない理由づけで、無償化から朝鮮学校を強引に排除している。まさに多数派である行政が少数派を差別するものだ。大阪地裁判決を担当した裁判官は、司法の存在意義をわかっていた」と証言。裁判官の任命権が内閣府にあり、司法への国家予算の配分が少ない日本で、司法は三権分立の役割を果たせていないと、その欠点を喝破した。岡口元判事によると、無償化裁判の15の判例は判例タイムズに載っていないという。

3時半に及ぶフォーラムの最後に発言したのは、無償化連絡会・大阪の藤永壮さん。
「外国人差別、排除を正当化するようなレイシズムが横行するような風潮のなかで、外国人学校を高校無償化制度から排除するという情報があります。
高校無償化制度は、国際人権規約や社会権規約に基づいて、やっと日本政府が実施するようになったものであって、恩恵などというものではない。日本政府が外国人に与えてやるんだという、そういう傲慢な、上から目線の態度こそが、私は差別の根源であると考えています。
私たちは、外国人に対する差別、排除の根底にある植民地主義を正すべく闘っていかなければならない。ぜひ、法律家の皆さんは、民族教育を守り発展させるための法的な措置、法的な枠組み、制度をお考え、提案いただければ本当に幸いです」

「無償化連絡会・大阪」が取り組む大阪府庁前の火曜日行動は639回を重ね、幼保無償化を求める働きかけも続いている。
フォーラムでは日本司法書士連合会の朝鮮学校差別についても報告があり、朝鮮学校差別をなくしていく法律家の情熱に満ちた報告、発言が続いた。来年の弁護士フォーラムは福岡で開催される。(文・写真:張慧純)








