ウェサムチョンの昔話
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先日、都内でオモニと会った。私のウェハラボジ(オモニの父)とウェサムチョン(オモニの弟)の命日が近かったため、お墓参りに行ってきたのだ。オモニはふだん北海道で暮らしているが地元は東京なので、ときどきこうしてお墓参りがてら帰省している。
この日、ウェサムチョンのパートナーさんは仕事のため来られなかったが、息子が一人でやって来た。私とはいとこ関係になる。かれは来年、成人式を迎えるという。私はこの子のことを幼い頃から見ているので、改めてもうそんな年齢になったのかと驚いた。
お酒好きだったウェハラボジ、甘いもの好きだったウェサムチョン。それぞれの好物をお供えし、お焼香をあげたあと、三人で遅めの昼食をとろうという話になった。何が食べたい?と話しながら歩いていると、某ステーキチェーン店が。いとこが「ここ、アボジとよく来てました」と言ったので、ならばここにしようと入店。私とオモニは初めてだった。
注文した料理を待つあいだ、いとこの近況を聞く。ウェサムチョンが亡くなったとき、かれは高校生だった。目指していた道もあったが、色々と考えた結果、違う道に進むことになった。それでもすでに就職先の内定をもらい、かれ曰く「すごくかわいい彼女」もおり、バイトにも精を出すなど頑張って日々を過ごしているようだ。
心残りなのはやはり、もっとアボジと話せたらということだった。せめてアボジのことを知っている人から昔話を聞きたいという。「なにか子どもの頃のエピソードとかないの?」、私からオモニに話を振ってみる。すると思いがけず面白い話が聞けた。
何度反対されているにもかかわらず、捨てられた犬を見ると毎回拾ってきてしまうほど、幼い頃から動物が大好きだったウェサムチョン。ある日、縁日で頼み込んでどうにかヒヨコを買ってもらった。こうした場所で売られているヒヨコは衰弱しており、少し経つと死んでしまうものがほとんどなのに、ウェサムチョンは甲斐甲斐しく世話をして少しずつ大きくし、しまいには立派なニワトリにまで育てあげたという。
家の中では飼えないためベランダに放し飼いしていたが、ニワトリなので当然、毎朝けたたましく鳴く。近所迷惑になることを恐れた両親が半ば押し付けるようにしてペットショップへ持ち込んだがもちろん売り物にはならず、「ご自由にどうぞ」という貼り紙とともにしばらく店頭に置かれていたという。
一つひとつのイメージが鮮明に頭に浮かび、面白すぎて吹き出してしまった。いとこも楽しそうだった。自分の知らないアボジの顔、どんなことを考えていたか、どんな行動をしていたか、きっともっとたくさん知りたいだろう。かれが今後、いつかウェサムチョンの友人たちとも出会い、思い出の数々を集める機会があることを願う。(理)








