vol.9 外国人排斥機運高まる日本でのレイシャルプロファイリング
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第1回口頭弁論後、会見に臨む原告と弁護団のメンバー(24年4月15日)
Q1 何が問題なの?
レイシャルプロファイリングとは、警察が、人種や皮膚の色、民族的出自などを理由に個人を犯罪捜査の対象とすることです。警察官が、「合理的な理由」がないのにもかかわらず、ある人を「外国人」であるということを理由に職務質問を行うことは典型的なレイシャルプロファイリングに当たります。昔から存在していたにもかかわらず、可視化されてこなかったこの問題は、2021年頃から認知されるようになりました。同年1月には、東京駅構内で「ドレッドヘアーは薬物を持つ人が多い」という理由でミックスの男性への職務質問がなされたという内容の動画が投稿され、同動画はメディアでも大きく取り上げられました。また、同年12月には、アメリカ大使館が「レイシャルプロファイリング事案が発生している」とツイッター(現X)で警告を出しました。
レイシャルプロファイリングは、国際的にも問題となっている警察官という公権力による悪質な差別です。
Q2 訴訟が行われているの?
このようななか、レイシャルプロファイリングの違法性を真正面から問う「人種差別的な職務質問をやめさせよう!訴訟」が2024年1月に提起されました。本訴訟では、警察による職務質問についてのレイシャルプロファイリングの運用が違憲・違法であると考え、国や都道府県に対して、①差別的な職務質問についての国家賠償請求、②その運用についての違法確認請求、③同運用の是正について国の指揮監督義務があることの確認請求を行っています。
現在までに、6回の口頭弁論期日が開かれました。これまで東京弁護士会が行った調査以外にも、日本国籍者と外国籍者の比較調査の結果など新たな証拠も提出しました。この調査では、「職務質問の経験が1回以上ある」と答えた日本国籍者の割合は12.8%であったのに対し、外国籍者の割合は71.1%と、大きな差が見られました。
勇気を持って声をあげた原告を支え、日本に住む外国ルーツの人たちが安心して暮らせる社会を実現するためにも、ぜひ多くの方々にこの裁判の動向を見守っていただきたいです。
Q3 「日本人ファースト」など外国人を排斥する風潮が強まるなか、国や警察などの公権力が成すべき対応は?
公権力によるいわゆる「上からの差別」は、一般市民による差別を助長する効果を持ちます。国や警察が堂々と差別を行うのであれば、一般市民の間でも「差別をしても良いのだ」「差別は正当化されるのだ」と差別を容認する風潮が醸成されます。他方、国や警察といった公権力が「差別は、してはいけないことである」という態度を示せば、私人による差別の防止に繋がります。
人種差別を禁止する法律がない日本では、残念ながら差別それ自体が「違法」とはされていません。国には、一刻も早い人種差別の禁止を含んだ包括的差別禁止法の制定が求められます。また、実効性のある救済機関として国内人権機関を作ることも必要です。
警察は、自身らの態度によって差別を助長することになるという自覚を持つべきです。そして、効果的な継続性のある差別防止に関する研修の実施やレイシャルプロファイリングを防止するためのガイドラインの策定、実態調査の実施など、差別をなくすための取り組みが求められます。