いのちの歌が響く
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先週の土曜日、多摩教育センターで行われた「サム・トゥッ・ソリ JAPAN TOUR2016」の立川公演を観覧してきました。韓国で活躍する歌手たちが来日し、平和と人権を歌で呼びかけるコンサートです。「日本のうたごえ」という音楽運動と連帯して1998年に初めて実現して以降、日韓の市民たちによる音楽交流の歴史の中で少なくない役割を果たしてきました。
近年、日本軍「慰安婦」に代表される歴史の問題によって日韓を取り巻く情勢は良いとは言えません。しかし、そんな時だからこそ離れてしまった距離を市民の力で再び近づけようと、今回のツアー開催に至りました。「サム・トゥッ・ソリ」としての来日は10年ぶりで、一昨年から準備を進めてきたといいます。
舞台では、韓国の代表的な抵抗歌と出演者が作詞作曲した楽曲を中心に、アンコール含めて20曲以上の演目が披露されました。人間が人間らしく生きることの大切さ、他の誰にも命を蹂躙されてはいけないということ、平和のために自分たちが立ち上がろうという呼びかけ―そのような思いが込められたとても熱いコンサートでした。
出演者たちの表情と声には、大げさではなくて本当に魂が宿っているように思えました。特に「임을 위한 행진곡(彼のための行進曲)」を聞きながら、(この人たちは生きるために歌っている)とも感じました。1980年の光州民主化運動時のような軍事独裁政権による大虐殺はないにしても、この歌でうたわれている精神は現代の韓国でも通ずるものがあるのだろう、だから歌っているのだと。
上に描いたような重みのある歌だけではなく、朝鮮学校に通う子どもたちの気持ちを歌った「우리학교는 우리고향이다(ウリハッキョは私のふるさと)」や、さまざまな国の言語で「愛してる」というフレーズを繰り返す「34回のプロポーズ」など、あたたかな気持ちになる歌もありました。
また、歓迎演奏として地域の市民合唱団が「アリラン赤とんぼ」と「すてきな握手」を、西東京朝鮮第1初中級学校の民族器楽部が「森の音楽会」を披露しました。
このコンサートは「JAPAN TOUR」というだけあって、最終日の4月19日まで日本各地で残り9公演が予定されています。昨日は長野の松代でも行われ、大好評だったようです。チケットの予約や問合せは特設サイトをご参照ください。公演情報のほか、コンサートの趣旨や出演者の紹介も掲載されています。
●サムトゥッソリ(http://www.centerpro.co.jp/sts2016/salm2016.html)
立川公演の内容はイオ5月号の文化ページでも紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。(理)