「実態もきちんと調査せず否認」と原告、被告国の矛盾突く/レイシャルプロファイリング訴訟第9回口頭弁論
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報告会のようす
見た目や国籍など民族的ルーツと関連し、個人を犯罪捜査の対象とする警察のレイシャルプロファイリング。その違法性を問う訴訟の第9回口頭弁論が3月12日、東京地裁で開かれた。東京地裁最大の法廷の傍聴席には大勢の人が詰めかけ、関心の高さがうかがえた。裁判とその後の原告側の報告会をレポートする。
この訴訟は、外国ルーツの男性3人が国と東京都、愛知県を相手に、差別的な職務質問の違法確認と運用の是正などを求めて2024年1月に提訴したものだ。
法廷では、原告代理人から提出された3つの準備書面に基づいて、弁護団長の谷口太槻弁護士が意見陳述を行った。
焦点の一つは、国際法上の調査義務だ。原告側は、人種差別撤廃条約の委員会が一般的勧告で国に調査義務があると明示していると主張してきたが、国は「一般的勧告に法的拘束力はない」と退けている。谷口弁護士はこれを、たとえ話で批判した。猛スピードのトラックに苦情が寄せられても、運送会社は「講習をしているから問題ない」と答え、ドライブレコーダーも確認しない―国の主張はまさにそれと同じではないか、と。
調査の不当性についても踏み込んだ。国は社会的批判の高まりを受けて2022年に一度だけ「調査」を実施したが、形ばかりの杜撰なものだった。インターネット上で問題になったものや国会で声が上がった事案のみを対象とし、1年で6件。いずれも「大きな問題はなく差別的な意図はなかった」と結論づけている。谷口弁護士は、それ自体が国に調査する気がないことを示していると話した。
さらに、立教大学の河合優子教授による意見書をもとに、レイシャルプロファイリングが個人や社会に与える影響も論じた。意見書では、差別的な職務質問は当事者を傷つけるだけでなく、目撃した周囲の人々に外国ルーツの人への固定的イメージを植えつけ、社会的周縁化を進める。深刻な健康被害も生じうると指摘している。
裁判後は報告会が行われた。
谷口弁護士は裁判の目的について、「原告が受けた職務質問が違法であるということ、それが偶然ではなく警察の差別的な慣行の一部だと認めさせることだ」と説明した。
また、準備書面の内容について弁護士が解説した。法廷でたとえ話として語られた話ついて、千葉飛鳥弁護士は「人種差別撤廃条約の目的は人種差別の撤廃そのもの。差別を除去するための具体的措置を講じることは当然に求められている」と説明。一般的勧告を参照しない国の姿勢には「国際的な裁判で当たり前に行われている解釈手法で、国内の裁判でも取られている。法的拘束力がないからと条約を参照しないのは、到底受け入れられない」と批判した。
宮下萌弁護士は、原告側が実施した「職務質問の経験に関する大規模アンケート調査」をめぐる論点を紹介した。職質を受けた際に「不審事由(警察官が職務質問をできる法的な根拠となる事情)がまったく思い当たらない」と答えた割合が外国籍者9%に対し日本国籍者は43%。国はこれをもって、「外国人が警察官から止められてもしょうがないようなことをやっているのではないか」と主張しているが、宮下弁護士は「マイノリティとマジョリティの非対称性」だと反論。マイノリティである外国籍者は、警察から職質を受けたときに「もしかしたら自分に何かいけないことがあったのではないか」と考えてしまう傾向がある一方、マジョリティ集団である日本国籍者は「警察が声をかけるなんておかしい」と感じる。回答の差は実際の不審行動の差ではなく、この非対称な受け止め方に起因するものだと主張した。
原告のゼインさんは「この裁判は戦うものではなく、お互いをよりよく理解するためにやっている。信用することで協力もでき、最終的には治安がよくなる」と語った。シェルトンさんは会場に「皆さんがよりよくしようとしているのは、誰のためで、なぜなのか」と問いかけ、「正義と平等を実現するために一緒に闘っていきたい」と呼びかけた。

次回期日は、6月8日14時から。
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在日コリアンもまた、日本で歴史的に「調査」の対象とされてきた。関東大震災時には、日本人との身体的差異を見分けるのが難しいからと、「十円五十銭」と言わせるなどして、官民一体となった朝鮮人虐殺が行われた。排除の認識は、レイシャルプロファイリングと地続きである。
また、国連の人権機関の勧告に対して「法的拘束力がない」と退ける姿勢は、朝鮮学校の高校無償化除外の問題とも通じる。国際社会からの是正要求を退け、特定のマイノリティを排除する構造は、今回の訴訟で問われているものと重なるからだ。今後も注目していきたい。(哲)








