vol.39 ウトロで死ぬまで暮らす― 最後の一世・姜景南さんを想う
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1925年、慶尚南道に生れた。既に宗主国に吸収されていた父や兄、姉を追い、母と大阪市に辿り着いたのは34年である。年齢を詐称して堺市の金物工場で働いた。激化する空襲で奈良に避難した13日後、堺の家に焼夷弾が落ちたという。
数え18で結婚、軍事飛行場建設現場で働く兄を頼り夫婦でウトロへ。国策事業に就けば徴用に取られないと聞いたからだ。憤りと共に想起したのは飯場の酷さだった。「屋根はトタンどころやない。杉の皮剥いできて載せてるねん。壁もボロボロで、セメント袋を貼るけど、隙間から隣が丸見えや。小屋ですらないっちゅうねん!」。
一カ月後に解放を迎えた…。(続きは月刊イオ2021年3月号に掲載)
写真:中山和成
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。