大人になって気付くこと
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スタジオジブリの長編アニメーション映画『海がきこえる』が全国でリバイバル上映されると知り、劇場で鑑賞した。上映は7月4日(金)から3週間限定。
本作は作家・氷室冴子先生の小説を原作に、スタジオジブリの若手スタッフが中心になって1993年に長編アニメーション化した。監督は数々の青春劇を手がけた望月智充氏、作画監督は『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』の原画やキャラクターデザイン、そして原作小説の挿画も担当していた近藤勝也氏。
幼い頃にロードショーでやっていたのを一度だけ見たことがある。
想像していたジブリのファンタジックな展開とはかけ離れた恋愛映画だったので当時の自分は何一つ内容を理解できずにいた。しかし大人になった今、改めて観てみると、感じるものが全然違った。
あらすじ
土佐と東京を舞台に、高校生の杜崎拓と東京から転校してきた美少女・武藤里伽子のすれ違いと再会を描く青春物語。拓が、わがままでミステリアスな彼女に振り回されながら物語は進んでいく―。
映画の時代設定は1990年代初頭、ファッションも当時の流行りを反映していて、今の自分が見ても、オシャレで真似したいファッションだ。そしてジブリといったらやはり背景美術、ノスタルジックな雰囲気は高知に行ったことがない自分でも何か懐かしさを感じる。画面の余白で時間経過を表す演出など、ところどころでこだわりが見える。
特に心に残ったのが、同窓会でのワンシーン。かつて里伽子と対立しながらも、卒業後に和解した清水明子というキャラクターのセリフが印象的だった。
―里伽子のことは嫌いだった、でも、あの時は私もかのじょも世界が狭かった
と明子は振り返るのだ。
このセリフに、思わずハッとした。子どもにとってはいまいる学校や環境が世界のすべてで、少ない居場所の中で自分を守るために必死だったのだ。そんな中で、慣れない土地に投げ出されながらも気丈に振舞っていた里伽子の気持ちや態度に納得する部分があった。
あの頃はわからなかった感情に、何か名前をつけてもらったような気分になり、学生の頃のあれこれを思い出しながら、狭い世界での楽しくも苦い思い出を大切にしようと思った。(仙)