夫婦同姓義務付けは日本だけ
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10年前、くも膜下出血で倒れ長く入院した。
リハビリ中、理学療法士の女性の先生が次のように話していたことが忘れられない。
「結婚して姓を夫のものに変えなければならなかったことが嫌で悲しかった」
現在の日本では、結婚に際して男性または女性のいずれか一方が、必ず姓を改めなければならない。民法で決められている。女性が男性の姓に変えるのが圧倒的に多い。姓を変えることで女性の職業生活上や日常生活上の不便・不利益、また前述の理学療法士のようにアイデンティティの喪失を感じるなど不利益が生じている。
私の周辺にも、姓をそのままにしておきたいからと婚姻届けを出さず「事実婚」という形をとる夫婦もいる。
そのため選択的夫婦別姓制度の導入を求める声が昔から上がっていて、政治的な論争のひとつとなっている。積極的に進めようという政治家がいる一方、かたくなに反対する政治家も多い。
昨年の石破首相の誕生のころからまたこの問題が積極的に論じられているようなので取り上げてみた。夫婦別姓に反対する人たちはなにを恐れているのだろうか(だいたいわかっているけれど)。
いろいろとネットで調べてみると、夫婦同姓を法律で義務付けているのは日本だけだという。
昨年3月7日の毎日新聞の「日本社会と夫婦の姓 女性の人権を守る制度に」という記事を一部紹介する。
「結婚に伴う改姓の不利益が女性に集中する現状は、憲法が保障する婚姻の自由や男女の平等と相いれない。人権に関わる問題だ。
……
夫婦同姓を法律で義務づけている国は日本だけである。カップルのどちらかが姓を変えなければ、婚姻届が受理されない。
95%が夫の姓を選んでいる。差別的な制度だとして、国連の女性差別撤廃委員会から繰り返し、是正を勧告されている。」
法務省のホームページに選択的夫婦別姓制度の導入に反対する意見として次のことが挙げられている。
「例えば(1)夫婦同氏が日本社会に定着した制度であること、(2)氏は個人の自由の問題ではなく、公的制度の問題であること、(3)家族が同氏となることで夫婦・家族の一体感が生まれ、子の利益にも資することなどを理由とするものがあります」
日本以外の国が夫婦別姓なら、(1)以外の理由はほとんど意味がない。(1)に関しても、同じホームページで「夫婦が同じ氏を名乗るという慣行が定着したのは、明治時代からだといわれています」とし、「明治時代より前は、そもそも庶民には氏を名乗ることは許されていませんでした」と明記している。定着していると言っても百数十年ほど。
在日朝鮮人が結婚しても夫婦は別姓だ。私の場合もそうである。これまで別姓で不都合が生じたことは何もない。
選択的夫婦別姓制度は同姓にしようが別姓にしようがどちらでも構わないということ。個々人の判断で選べるのだから反対する理由がわからない(だいたいわかっているけれど)。(k)