東京無償化裁判、12月13日に証人尋問
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東京朝鮮高級学校生が無償化への適用を求めた東京無償化裁判第11回口頭弁論が8月31日、東京地裁で行われ、12月の証人尋問が決まった。
東京地裁には、219人が大法廷の傍聴券を求めて列をなしていた。仕事を休み裁判所に足を運ぶ保護者や元朝高生、同胞たちのなかには、残暑厳しいなか群馬や栃木から訪れた人もおり、高校生たちを全力で支援しようという熱気に包まれていた。
数日前に2学期が始まったなか、東京朝高の各学年から10人、合計30人が参加し、裁判を傍聴した。この日の弁論では、原告側が求めていた証人尋問の請求が認められ、次回期日が12月13日に決まり、来年初めにも結審を迎える流れが見えてきた。原告弁護団の李春熙弁護士は、裁判所によって証人尋問が認められ、期日も決まったことを報告、「かなり進展がありました」と喜びを語っていた。
今回、原告弁護団は準備書面5、6を提出。この準備書面は、裁判を通じて開示された国の内部文書を元に、弁護団が国の違法性を証明するため、「最後の主張」として出したものだ。
前回の第10回口頭弁論で原告側は、安達和志・神奈川大学法務大学院教授の意見書を提出するとともに、再度、国の内部文書の開示を求めていた。
おさらいをすると、被告・日本国は、審査会の途中で審査を打ち切り、朝鮮高校を外すために「規定ハ削除」の省令改悪を断行した(13年2月)。閉廷後の報告集会で李弁護士は、12年12月26~28日、13年1月11日~2月20日までの首相の動静や文部科学大臣の動き、省令改悪に向けた政府、文科省内部の動きに言及しながら、安倍政権が12年12月末の総選挙に勝った後、直ちに朝鮮学校排除に着手し、法律の手順を無視して規定ハを削り、朝高を就学支援金の対象からはずしたことは事実であると準備書面5の要旨を説明した。
この裁判で国側は、朝鮮高校の申請を受け、きちんと審査してきたと主張しているが、前述の通り、審査会の途中で審査を打ち切り、結論ありきで朝鮮高校をはずした。これは法律を無視した明らかな差別だが、それを言うと違法性が明らかになるので、①規定ハを削除したことと、②東京中高が規程13条に認めるに至らなかったことを、朝高不指定の理由にしている。
李弁護士は「国の内部資料や動きを具体的に見ていけば、明らかにその主張が事実を隠しており、おかしいことがわかる」と国側の詭弁についてのべた。
その詭弁を証明する内部書類が、第9回口頭弁論で国側から任意開示された、①省令改正に関する決済原義と②各地の朝鮮高校の不指定に関する決済原義だろう。
文科省が作成した①には、「規定ハ」を削除する理由が記され、2012年12月28日の閣僚懇談会の資料が添付されている。この懇談会とは、総理大臣、拉致問題担当大臣、文部科学大臣の3人が朝鮮高校を排除する方向性を確認したもので、法律を遵守すべき首相や文科大臣が差別を意図的にリードしたことをうかがえるものだ。
次回の証人尋問で、原告側は元朝高生、保護者とともに、規定ハの削除に関わった文科省職員、計5人の尋問を求めている。
弁護団は、裁判所が証人尋問を認めたことが「実態を見ようという姿勢ではないか」と評価する。
続けて東京朝高生3人が裁判にかける思いを語った。
金龍秀さん(高1)は、「兄と姉が高校に通っていたが、当事者となって初めて『同じ高校生なのになぜ国が差別するのか』と思い、自分のすべてが否定されるているように思えてきた。今の自分に根深い差別と闘う力はまだない。同じ志でみんなと闘えば差別がなくなる世界は来る」と語った。
また、夏休み中に文部科学省前で朝鮮大学校生の意志を引き継ぎ、金曜行動を続けた佐野通夫・こども教育宝仙大学教授、無償化連絡会の長谷川和夫さんらが発言した後、東京中高の慎吉雄校長がクライマックスを迎える裁判の勝訴に向け、進んでいく決意をのべた。8月23日に同校オモニ会と弁護団による焼肉交流が行われたことも報告され、勝訴を勝ち取り、また焼肉を食べましょうという話が出ると、会場には笑いがあふれた。裁判を闘うとは当事者や保護者が本当に大変な思いをしていることが、取材現場で感じ取れる。弁護団や関係者が一堂に介したときのこの一体感が、前に進む原動力になっている。
今後の裁判日程は下記の通り。皆さん、朝鮮高校生たちに熱いエールを!(瑛)
※無償化、補助金裁判の日程
●愛知無償化裁判第19回口頭弁論
9月12日(月)14:00~ 名古屋地裁
●広島無償化裁判第13回口頭弁論
9月14日(水)13:30~ 広島地裁
●九州無償化裁判第10回口頭弁論
9月29日(木)14:00~ 福岡地裁小倉支部
●大阪無償化裁判第15回口頭弁論
10月14日(金)10:30~ 大阪地裁
●愛知無償化裁判第20回口頭弁論
11月7日(月)14:00~ 名古屋地裁
●広島無償化裁判第14回口頭弁論
11月16日(水)10:00~ 広島地裁
●東京無償化裁判第12回口頭弁論
12月13日(火)13:30~ 東京地裁
●大阪補助金裁判 判決言い渡し
2017年1月26日(木)13:30~ 大阪地裁