月間イオニュース vol.7
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SYNODOSでしか読めない専門性の高い記事を「知のセレクトショップ」へ
芹沢一也(株式会社シノドス代表取締役)
【SYNODOS】シノドスは「アカデミック・ジャーナリズム」を謳ったインターネット・メディア。シノドスとは、ともに集う、交わるという意味があり、一人の識者や文化人が森羅万象を語る=騙るのではなく、多様な論者たちがそれぞれの専門知を提供する「知」のプラットフォームとしての意味を込め、名づけられた。そこに行けばどんな記事でもあるというような場所ではなく、ここでしか読めない記事に出会うことができる「知のセレクトショップ」のような存在を目指している。
【SYNODOSのHP】https://synodos.jp/
Q:イスラエル建国70年、パレスチナ問題の本質って?
A:軍事占領を終わらせよう!
Q1:アメリカ大使館のエルサレム移転は何が問題なの?
A1:エルサレムは「軍事占領地」なんだ。1947年の国連分割決議でパレスチナの土地をユダヤ人国家とアラブ人国家に分割すると決めたとき、エルサレムはアラブ側に位置しつつ「国際管理下」に置くとされた。しかしユダヤ人側はこれを不服としてエルサレムまで攻め込み(第一次中東戦争)、48年5月に「イスラエル」建国を宣言、「西エルサレム」まで占領し49年に休戦を迎える。
次いで1967年の第三次中東戦争で圧勝したイスラエルは、東エルサレムも含むヨルダン川西岸地区およびガザ地区を全面的に軍事占領し、東エルサレムの取り込みにかかる。1980年に東西エルサレムを「統一首都」だと宣言し、東エルサレムは完全に「併合」されたんだけど、国際社会はこれを国際法違反の暴挙として一切承認せず、大使館をテルアビブに置いてきた。それに対して米大使館移転(5月14日)は、イスラエルによるエルサレムの軍事占領を既成事実化するものだ。
Q2:「なぜガザ地区で抗議と弾圧が?
A2:ガザ地区はイスラエル建国によって切り縮められた狭い土地のなかに、イスラエル領となった周辺地域から逃げ込んだ大量のパレスチナ難民が溢れている。ガザ地区人口の7割以上が難民キャンプで暮らす難民なんだ。さらにイスラエルの軍事占領下で陸海空が閉ざされ、人・金・物の流れも遮断。電気・水の供給さえ制限されていて、ガザ地区全体が「巨大監獄」とさえ言われているんだ。
またガザ地区はイスラエルによって「流刑地」として使われていて、東エルサレムも含む西岸地区で政治犯とされた人や居住許可を剥奪された人がガザ地区へ追放されているんだ。自治政府の議会選挙で圧勝したハマスの政治家たちも西岸地区で逮捕されガザに封じられてしまった。西岸地区を従順にさせ無力にするためにガザ地区が利用されているんだ。捨て身の抗議が起こるのも必然だ。
Q3:どうすればパレスチナ支援ができるの?
A3:日本・アメリカ・EUは、イスラエルの占領を批判せずに、パレスチナ自治政府に援助金を出している。その自治政府(ファタハ系)は占領者であるイスラエルと「協力」して西岸地区を暫定統治していて、その間も西岸地区へのユダヤ人の入植活動は推進され、その入植地をイスラエル側へ併合する隔離壁も建設された。湯水のごとく投じられる援助金は自治政府周辺を見た目では潤すけど、金権政治と腐敗を生み、自立(独立)はむしろ遠ざかっているんだよ。
必要なのは「占領」をきっぱりとやめさせるようイスラエルと交渉することだ。軍事占領の現実を容認して援助漬けにするのではなく、西岸・ガザの占領を否定する原則と、パレスチナ人の民族自決権とを守ることが大事なんだよ。それで欧米日が歩調を揃えればイスラエルを変えることは可能だ。