”私たちのことを私たち抜きで決めないで”―第4回都議会勉強会
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都議会の大会議室は、都内から集まった約150人で埋まった
2010年から続く補助金差別、
13人の都議会議員が参加
第4回都議会勉強会「若者の声を聞く 東京都こども基本条例に基づき朝鮮学校に対する補助金の凍結解除を」が6月5日、東京都庁内で行われ、約150人が会場の第一会議室を埋めた。13人の都議会議員(共産党、立憲民主党、グリーンな東京、生活者ネット)、都内から6人の市議が参加。2024年10月に発足した「東京の外国人学校を考える勉強会」座長の大松あきら都議(公明党)からはメッセージが寄せられた。
権貞恩・東京朝鮮中高級学校オモニ会会長の司会で進められた勉強会では、「都議会勉強会」実行委員会事務局の猪俣京子さんが会の趣旨を伝えた。
猪俣さんは、都が15年前の2010年から外国人学校向けの補助金から朝鮮学校だけを除外していることへの怒りを示しながら、「日本政府は、31年前に国連・子ども権利条約を批准したが、制度を変えることはしなかった。子どもの権利は大きな節目を迎えている。権利の主体として、子どもの声をしっかり受けとめなければならない」と発言。補助金の不支給は、21年に都議会の全会派で制定した、「東京都こども基本条例に抵触する」と指摘し、補助金の適用を求め、都への要望を重ねているものの、「返答がない」と現状を伝えた。
勉強会では、朝鮮大学校の学生3人と、東京朝鮮中高級学校の生徒2人が、自身が受けた差別体験を語った。
池夢路さん(朝大3年)は、1990年に大阪朝鮮高級学校(当時)バレーボール部が高体連主催の大会の予選に出場するも、途中で当時高体連への加盟資格がなかった朝高に出場を認めてしまった「事務的なミス」だと出場を拒否されたことに言及しながら、「95年に高体連への加盟が認められたが、本来なら誰もが経験できる青春、人生の宝になる経験も奪われていた。私自身、都の補助金差別を外国人差別のひとつだと認識していたが、排除は日本政府による意図的な同化政策で、日本の教育を受けさせることで朝鮮人をなくしていこうという歴史修正主義だと気付いた。日本政府の巧妙なやり方に怒りを感じる」と思いを吐露した。

朝鮮大学校(東京都小平市)の学生たちが自身が受けた差別体験と日本社会への期待を語った
金載舜さん(朝大3年)は、高校時代にJR赤羽駅で「朝鮮人をコロス会」という差別的落書きを目にした衝撃を語った。「第一発見者は僕でした。赤い文字を見たとき、恐怖に駆られ、誰かが自分の命を狙っているかもしれないと思った。ヘイトスピーチ解消法は制定されたが、理念法に留まっているし、都のこども条例には人権救済機関がなく、差別を助長していると思う」。
東京中高の生徒(高3)は、「私たちはお金が欲しいのでなく権利が欲しい。だから高校無償化の適用を求めている。在日朝鮮人の存在すら知らない人が増えている。朝鮮という言葉が不潔、諸悪の根源の代名詞かのようになっている。十条駅でヘイトスピーチをこの目で見たし、この耳で聞きました」と辛い体験を伝えた。
▼日本人学生たち “マジョリティの自覚こそ”
日本の大学院生たちは、朝鮮学校生の差別体験の悲しみに真摯に応答していた。
小山留佳さん(神奈川大学大学院)は、自身がマジョリティとして「無自覚」であったことを吐露した。
…大学に通っていた頃、留学先のスペインで「チーナ、チーナ」とバカにされ、なぜモヤっとするのかわからなかったが、改めて考えると、自分の中に日本以外のアジアの国に差別意識が潜在していたことに気づき、その経験から日本の差別の問題をなんとかしないといけないと思った。
無自覚な差別意識は、日本が過去に行った植民地支配と根続きだ。差別は続いているのに日本人はそれを忘れ、なかったことにしている。私は東京の公立高校に通っていたが、朝鮮学校と比較するとありえないくらい恵まれていた。給食も毎日出たし、学校の先生が学校の運営について悩んでいることもなかった。日本人の無自覚な差別があり、そこには植民地主義があると思う。
都のこども基本条例は、国連・子どもの権利条約を反映しているとアピールしているが、子どもの権利条約は前文で世界人権宣言について触れている。世界人権宣言は植民地主義を反省して二度と同じことをしないことが大前提。また、条約は国が守ると決めて批准するものだ。マジョリティはマイノリティの権利を保障するうえで、自分の力の強さを自覚する必要がある。都は、国際条約を反映した条例の運用をしてほしい…。(以上、小山さん発言)
熊野功英さん(一橋大学大学院、朝鮮近現代史)は、「朝鮮学校が朝鮮とつながっているという論理があるが、祖国とつながり、紐帯を持つことを批判するのは、朝鮮人の自決権が否決されている問題だと思う。朝鮮人の祖国とのつながりを、日本人側が自分たちの都合で左右しうると考えることが植民地主義だ」差別の根っこを見つめた。
日本人学生の発言を受け、朝大の姜進一さん(3年)は、
「今年は、朝鮮が日本に外交権を奪われた乙巳保護条約から120年を迎える年です。日本に根強く続く植民地主義が今の排外主義を起こしている。在日朝鮮人に対する差別を是正する問題はすなわち、日本の差別問題を克服する道になると思う」と語りながら、朝大が日本の大学生との草の根交流を続けていること、都議会での運動が広がりを見せていることに、「大きな意義を感じている」と希望を伝えた。
▼都のこども基本条例に民族教育の権利を
2部は、都議を交えたパネルディスカッション。
福手ゆう子都議(日本共産党)は、「皆さんの話には重いものがあり、本当にそうだと思った。自分たちがこの日本で、自分たちの将来を希望して生きていくことがままならない不条理を感じた。こども基本条例に民族教育への言及がないとの指摘を受け、すべての子どもを誰ひとり取り残さないように条例を発展させなくてはならないと感じた」と決意を語った。
他の都議たちも、「都議で勉強会を重ねているが、小さいころから差別に直面している状況を早く何とかしていかないといけない」(中村ひろし議員・立憲民主党)、「都内のフランス、台湾の学校を見てきたが、どの学校でも民族の自決権を教えている。皆さんの活動を支えていきたい」(須山たかし議員)などと応答した。

都内の市議会議員たちも参加した。発言する稲津憲護・府中市議会議員(左)

尹太吉・東京朝鮮中高級学校校長
3部のリレーメッセージで発言した尹太吉・東京朝鮮中高級学校校長は、2025年4月に国会で「朝鮮学校に対する公的助成の実現を求める会」が生まれ、5月19日に同会の国会議員が来校したことに触れ、「初めて本校に来た議員の皆さんは、感じることが多かったとおっしゃっていた。今日このようにたくさんの方々が集まっているのを見ても、本校が多くの人に認められていると感じる」と喜びを語っていた。
勉強会を主催した上村和子・国立市議会議員は、「若い人たちがしっかり言った意見を心に深く留めたい。日本の政治が、過去の植民地主義から抜け出さないまま来ているという問題が指摘されたが、選挙で人権がわかる本物の政治家を選ばなきゃいけないということだ。票を持っている人たちは、本物の人権感覚を持っている政治家をみんなの力で押し出しましょう。あたり前の権利が侵害されたままになっているという、重大な告発をしっかり胸に刻んでいただきたい」と呼びかけた。
「都議会勉強会」実行委員会は、1万9000筆の都知事あてに届け、都知事に1400通のはがきを送るなどの要請を重ねてきた。6月22日には都議会議員選挙が行われる。(文:張慧純/写真提供:「都議会勉強会」実行委員会)