人の壁、声の壁をより厚く
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6月2日、神奈川県庁前で月曜行動が行われた。この日は久しぶりの晴天。開始時間である15時の時点で朝鮮学校の保護者オモニたち、同胞、日本市民ら約30人が集まっていた。参加者たちは次々とマイクを手渡しながらスピーチをつないでいく。
「もとはと言えば、日本が朝鮮を侵略した歴史の延長線上に在日朝鮮人たちがいる。そうした人たちに、なぜ差別をするのですか? とても恥ずかしいことだとは思いませんか」
「朝鮮学校に補助金を支給しない理由に『県民の理解が得られない』というものがある。そのような言い方をするのであれば、私たちは朝鮮学校のことを理解してくれる人たちを増やしていくのみ。この声がどこまで聞こえているかは分かりませんが、道行く人たちも含めて『何かやってるな』と思ってもらえるよう、一人の卒業生として声を上げ続けます」
差別的処遇の是正のため、権利獲得のため、そして朝鮮学校と在日朝鮮人について多くの人に知らせるため。月曜行動の役割はさまざまだが、もう一つには“参加者ら自身が学ぶ場”でもあるのだなとこの日知った。
現在たずさわっているコミュニティの活動、朝鮮学校とかかわってきた中で見聞きしたこと、ほかの運動における連帯の経験、勉強会や集会の情報。参加者たちは自身の知識を交えながらスピーチする。それが他の人にとっては新鮮だったり、初めて知る内容だったりする場合が少なくない。
「自分たちには本来どんな権利があるのか、具体的にどんな権利を享受できていないのか。そうしたことを知る場でもあります。ぜひ、もっと多くの保護者にも来てほしい。たくさん呼びかけてほしいです」。引き続きこの輪を広げていこうとの呼びかけがなされた。
スピーチが始まって30分ほどが過ぎた頃、神奈川朝鮮中高級学校の高級部生徒たちが駆けつけた。自分たちの言葉で差別反対を訴え、力強くシュプレヒコールを叫ぶ。
「補助金の支給対象から排除されて10年以上が経ちます」という言葉に改めて重い気持ちになった。これまで、無数の人々があらゆる語り方で、ただ「差別をしないでほしい」と伝えてきた。10年間も対話の扉を固く閉ざしてきた神奈川県庁に、それでもあきらめず、代を継いで声を飛ばし続ける朝高生たち。その姿だけを切り取って美談にしてはいけないと痛切に思った。
「私は感情だけで言っているのではありません。制度が不合理だから声を上げているのです」
「後輩たちが経済的な理由で自分のアイデンティティをあきらめることがないように、最後まで闘い続けます」
これまでここに立ってきた人たちの存在、発されてきた思いをなかったことにしないためには、行動を続けることで人の壁、声の壁をより厚くしていくしかない。
遠方はるばるやって来られた長谷川和男さん(朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会 共同代表)は文科省前で毎週行われている「金曜行動」に言及しながら、とにかく続けることの大切さを強調し、参加者たちを激励した。金曜行動はこれまでに572回持たれているという。
「金曜行動には毎回新しい人が入ってきている。あの場で朝鮮学校や在日朝鮮人について学んでいる人がたくさんいます。全国の運動がしっかりと手を結び、日本の行政に対して差別反対を訴える闘いをみんなで作っていきましょう」
参加者たちの声は単発で消えていっているのではなく、確実に上塗りされ、重なり、少しずつ周囲に届いている。そのことを忘れてはいけないだろう。
次回の月曜行動は7月7日(月)15:00から。残念ながら私は抜けられない仕事があり次回は参加できない。これまで参加したことはないけれど気になっていたというような方がいらしたら、ぜひ私の代わりに足を運んでみてください。(理)