日本の大手メディアの「国際報道」を憂う
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日本にいながら今、世界で何が起きていることを理解するには、新聞にプリントされた活字と活字の行間を読むこと。あとは海外メディアに触れることだろう。
ここ数日間における日本の大手商業新聞の朝刊を見ると、米大統領選関連の報道が続いた。11月に迫る米大統領選。現職のバイデン大統領は7月21日、選挙からの撤退を表明。後継としてカマラ・ハリス副大統領を推薦した。その前には大統領選を控えるトランプ前大統領が銃撃から「生還」するというセンセーショナルなニュースに多くのメディアは食いついた。
一方、ガザ保健省によると13日、パレスチナ自治区のガザ地区・ハンユニスではイスラエルによる空爆で少なくとも90人が命を落とし、300人が負傷した。イスラエル軍は「ハマス幹部を標的にした」などと主張しているが定かではない。ここで特筆すべきは、空爆されたのは昨年10月以降、イスラエル軍によって家を追われたガザの人びとが多数いた所であり、イスラエル軍が「安全地帯」と指定していた所である。
筆者が購読している新聞を見ても、上記に関するガザの報道は、朝刊の誌面の「国際」面に小さく掲載されるのみ。もちろん国のトップやそれに準ずる人物の生命に関わる事柄であったことを考慮したとしても、ここ数日の日本の主要メディアにおける報道には、米大統領選関連報道のあまりの過剰さと、2つの報道の間の圧倒的な落差、パレスチナに対する不可視化を感じる。そしてそれが「当たり前じゃない」ガザ地区での虐殺行為、民族浄化といえる状況が現在も止まらない遠因でもあると感じる。
またこれは日本において「国際社会」=米国となっている証左ではないか。
今朝の新聞では、「バイデン撤退」報道と同時に、バイデン政権時代の評価もなされていた。冷戦構造が明確になっていった時代のトルーマン元大統領の演説よろしく、バイデン大統領の就任演説では、「民主主義国家と専制主義国家の闘い」と東西冷戦に回帰するようなフレーズが出た。そのイデオロギーに基づき、対外政策が推進され、米国はイスラエルに武器を供与し、米軍は韓日と合同軍事演習を行うことでアジアでの緊張を高めている。米国を筆頭とするG7がイスラエルに「全面的な連帯と支持を表明」したことも記憶に新しい。
話を戻すと、米大統領選が注目を集めるべきなのは、そのゆくえが少なからず世界にもたらす影響があるからである。筆者の関心事で言うと、朝米関係のゆくえはどうなるのか、現在米欧が支援・支持を表明しているウクライナやイスラエルに対する政策はどうなるのか…と気になる。それでも、「もしトラ」(もしもトランプ氏が再び大統領になった場合)に過度に期待しているわけではないが。(哲)