退屈な時代かもしれないけど
広告
元長野県知事の田中康夫氏が今回の衆議院総選挙に兵庫8区より出馬し、当選した。直後、インタビューに答える彼をテレビで見ながら、そういえば、彼は小説家だったことを思い出した。
「なんとなく、クリスタル」
筆者が生まれる3年前の1980年に発表されたこの作品。大学生のとき、古本屋で見かけ、そのタイトルに惹かれほとんど迷うことなく購入した。
読んだ方はわかるが、この作品はほとんどが(語り手の視点での)ブランドの註・分析で成り立っている。まったく斬新かつ異色な構成、文体だったのだろう、発表した年に文藝賞を受賞しており、翌年には芥川賞の候補となった。
読後感想としては、自分はすごくつまらない時代に生きているのかもしれない、とまっさきに思った。島田雅彦という作家がどこかの本で「ポストモダンはつまり退屈な時代なのだ」的なことを書いていて、それを目にした直後に「なんとなく、クリスタル」を読んだから、なおさらそんな感じがしたのかもしれない。
戦後の生活風景を題材にした「三丁目の夕日」という映画を見たとき、当時は、家庭電化製品が一つ家にやってくれば、それだけで町中の人が集まり、みんなで喜び、感動を共有した、ように私には思えた。ここで私が思った「感動」というのは、たとえばアメリカ人プロレスラーを倒す力道山の姿をテレビで見ながら敗戦コンプレックスを解消したような共犯的なものではなくて、旅人が船に乗って旅しているうちに、新しい大陸を発見したときのような具体的で偉大な感動だ。それを隣人たちと共有できたのだから、単純に素敵である。
日本はやがて高度成長を迎え、よく識者が指摘するように、物質的に満たされても精神的には満たされなくなった。そして、当時の経済状況を考えると、きわめて平均的な生活を送る女子大生が、クリスタルに、なんとなく、惹かれていくような、そんな、退屈な時代となっていく。「なんとなく」だから、ゆえに惹かれる理由さえも自分でわからないという悲劇が喜劇化されているという悲劇。
発表当時、文壇からは批判があったというが、今ももちろんあると思うが、さらに彼の政治的な理念や経歴にも問題があると指摘する人もいると思うが、私はこの「なんとなく、クリスタル」という作品を好む。
しかしながら私は、「なんとなく」という言葉は好きではない。そこには曖昧があり、躊躇があり、保留があるように思えるからだ。何よりも「なんとなく」やり過ごしていたら、「ばかもの」になっていくような気がしてならない。
「なんとなく」ならないために、たとえば、自分の感受性くらい自分で守れ、と故茨木のり子さんはうたったけど、その通りかもしれない。物質的に満たされている一方では貧困が拡大しているというてんやわんやで矛盾さえ抱くのも空しい時代ではあるが、そしてそういう時代のなかで人間形成され、そういう時代しか知らない20代半ばの筆者ではあるが、退屈なことを人のせいや時代のせいしていたら、ダサい。
だから私は、普段の生活のだいたいの局面において、「なんとなく」しないように全感受性をフルに高めているこの頃である。全感受性を普段の生活でフルに高められるがゆえに、また、こういう時代に救われ、慰められているのかもしれない。
ここまできて読み返してみると、学生のときに書いた総括書みたいになってしまった感じもするが、そして収拾がつかなくなってきたので、最後に、自分を戒めるという意味で、茨木のり子さんの詩を引用して終わりたい。(蒼)
「自分の感受性くらい」
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
Unknown
カニが食べたくなり、「ワケアリ、送料無料」をキーワードに検索するうちに「よし!」というサイトも目当てのカニもないのであきらめ、知り合いのブログに遊びに行き、ついでにイオのブログも寄ってみました。
サラーっと流していましたが、この詩がスクロールするマウスの指を止めました。
いい詩ですね。
詩を読み、「退屈な時代かもしれないけど」を読みました。そして15本のブログを一気読みしました。
(蒼)さんは面白いですね。あととてもいい。何が?といわれると「間」みたいなものがいいんですかね。私も未熟なので人のことをとやかく言うのもおこがましいんですが。すみません。
とにかく、在日の人では珍しい「人種」だと思います。もちろんいい意味で。
正直、疲れたものもありましたが、読めば読むほど他の(蒼)を読みたくなりました。で、こんな夜中に一気読み。明日は普通に仕事もあるのに...。
また、イオがなかなか面白いわけだとも思いました。定期購読はしていません。知人宅に遊びに行った時にたまに見ます。(たまに見る回全て面白かったという記憶があります)
これからも、読み手に「読んで良かった」と思わせる内容に本家のイオもこのブログも精進してください。
教えてください。
①ジムの宇宙人たちとはどこでバーベキューをしましたか?これからは秋の行楽ですから参考までに。
②最近の一番の待ち遠しい日はなんですか?私はシルバーウィークが終わった週の金曜日。
③携帯の話す、以外で一番重宝している機能は?私は電卓。
④ホームパイ100個食べましたか?
あと結核検査したほうがいいのでは?と思いました。CM見ましたか?ベルトがないときは紐とかでもイケんじゃないかと思いました。
とりあえず今から寝るので、「おやすみなさい。」と書きましたが、明朝見ると思ったので「おはようございます。今日もがんばってください」と書いたほうがいいのか。
Bumさんへ。
Bumさん、コメントありがとうございます!
まず、何よりもイオを楽しいと言って読んでくれている方とこうして出会えて、僕も嬉しいです。
これからも、その知人宅に行って、毎月読んでくださいね!!!
ブログですが、僕は自分で書いた文章はあんまり読み返しません。理由は単純に恥ずかしいからで、それはたとえば夜書いた作文が朝になると恥ずかしくて読めない、みたない感じで、アップしたあとはいつもため息ばかりついてますよ。
ただ、Bumさんがそうおっしゃってくれたから、今日はため息をつかずに済みそうです!
Bumさんの質問に一つずつ答えると、
①場所は奥多摩です。ジムが多摩地区に所在しているので、必然的にそうなりました。
②最近の一番の待ち遠しい日は、月末に予定している取材です。ある方をインタビューするんですが、以前からその方の言動に惹かれているところがあって、その言動に対していくつか聞きたいことを直接聞けるからです。もちろん、連休も待ち遠しいです(笑)。
③アラームです。毎朝、携帯のアラームで目覚めます。でも、自分のそのアラームよりも、ギリギリの時間に鳴る弟のアラームで起きるのが毎日ですが。
④残念ながら食べてません。昔は、「プリン・ヨーグルトをバケツ一杯食べたい」とか、いろいろ思っていましたが、達成できずにいます。っていうか、チャレンジしていません。理由は、「もう大人になったから」的理由たちと、かつてマシュマロを10袋食べて体調を崩し、3年くらいマシュマロが食べられなくなったのですが、そのときに「免疫力」よりも「抑制力」が高まったからだと思います。確かそんな理由で寿司もしばらく食べられませんでした。
周りの編集部員からも病院に行けとすすめられましたが、咳はやっと止まりました。とはいえ、一度時間をみつけて検査しようと思っています。
……長くなりました。これでも、不必要かなと思った箇所は削ったのですが……。
ではBumさん、これからもイオ(月刊、日刊ともに)をよろしくお願いします!