都会人の嘘とか
広告
取材でこれまでいくつかの地方都市に訪れました。
そのどの地も共通していえることを、いくつかならべてみます。
まずは、(主要都市と言われる地の)駅前の商店街が「シャッター通り」になっていること。郊外に大型モールや複合施設ができるようになったことが、その大きな原因だと言われています。訪れたときは時間を探して商店街を歩きます。すると必ずといっていいほど、閉館した映画館があります。そのだいたいが閉館直前に上映されていたであろう作品のポスターが貼られていて、それはなんとなく悲しい気持ちにさせます。
どこの地方でもそうですが、駅を背にすると、最初に見えるのはレンタカーと消費者金融の看板です。そして、チエーン店の居酒屋。この3つは必ずあるので、駅前に限っていうならば、一度しか訪れたことのない人たちからしてみれば、どの地方も視覚的には差を感じられないことでしょう(甲府駅は別。ロータリーの右手に武田信玄の銅像がどーんとそびえているので)。
駅前にはコンビニも3、4店はあります。そのすべてに煙草が売っているとは限らないので、タスポをもっていない喫煙者は、あるいは大変な思いをするでしょう。実際、私はタクシーに乗って買いに行きました。
飲み屋街は駅から15分ほど歩いた場所にあります。夜になるとにぎわいますが、昼間はうってかわって廃墟のように人気がありません。これまで行った地方都市で一番に飲み屋街が栄えていたのは(基準は独断と偏見ですが)、岐阜の柳ヶ瀬です。しかし、以前に比べると人通りは少なくなったと、タクシーの運転手は話していました。
そんな地方都市に暮らす、ある朝鮮学校の児童が私にこう質問しました。
「新宿とか池袋に行きたいです。芸能人にいっぱい会えそうな気がするから」
あまりに目を輝かせて言うものだから、少し切なくなった私は、悩んだ末にこう答えました。
「うん。きっといっぱい会えるよ」
私の場合、中学生の頃の夢が農民でしたので、田舎で暮らしたいとかねてから思っていました。豊作ほど具体的で現実的な喜びはないと思っていたからです。
都会は町の風景がいちいちカラフルです。
でも都会に住む私の心は、だんだん白黒になっていくようです。
……さて、お盆休みは絵の具でも買いにいきますか。(蒼)